これを想像してたんだよ俺は!
──この曲は歌詞がもうホントに素晴らしいですよね。
大原 天才ですよね! まあ、それも水野さんだから当たり前だとは思うんですけど(笑)。私は普段、曲の世界観に入ろうと意識して歌うことが多いんですけど、この曲は歌っていると自然とその世界にどんどん入っていく不思議な感覚があって。歌詞で描かれていることは私の実体験ではないから想像力に委ねるところはもちろんあるんですけど、この主人公に共感しまくっちゃったというか。「わかるわー!」って思えるところが異常に多かったんですよね(笑)。そういう歌詞を書けるのがホントにすごいなって思いました。ちなみにこの主人公に未練は残っているんですかね?
水野 ふふふ(笑)。未練はたぶんずっと残っていくんじゃないかなって気がしますけどね。ただ、この曲の主人公はそこにはもう執着してないと言うか。その未練さえも抱えながら前に進んで行こうとしているっていう。そんなイメージで書きましたけど、いかがでしょう?(笑)
大原 わかります! まだ好きだけど「さよなら」を言う、そういう微妙なニュアンスが随所に感じられますよね。言葉の裏側にある感情までもしっかり伝えてくれる歌詞だから、それをしっかり歌でも表現したいなって思いました。
──1曲の中で時間が進んでいき、それに伴って主人公の感情も変化していく。そんな大きなストーリーが見える歌詞でもありますよね。
水野 全体を聴くことでストーリーが完成する曲にしたかったんですよ。ワンコーラス目である程度、物語の全体像をわかってもらうっていう作詞のセオリーもあったりはするんだけど、この曲はそうじゃないかなって。あと僕として一番こだわったのは冒頭。大原さんの歌う姿が印象的になるような、その声の魅力を一番生かせるような言葉を最初に持ってこようと思ったんです。だからこそ、この曲の物語の本質とも言える感情を1行目に持ってきて。
──結論から始まっていますからね。だからこそ、その後に描かれる、その結論に行き着くまでのストーリーへの興味がより高まるという。
水野 そうですね、うん。その冒頭の歌詞を書いているとき、僕は大原さんが実際に歌っているところを映像として想像していたんです。そうしたらね、この曲のミュージックビデオの冒頭にはアカペラで歌うシーンがあって、それがイメージのまんまだったんですよ。見た瞬間、「これを想像してたんだよ俺は!」ってすごく思いましたね(笑)。
大原 あははは(笑)。
デモテープ、皆さんにも聴いてもらいたい!
──歌に関しては、密にやりとりしながら表現の方向性を固めていったそうですね。
大原 はい。水野さんはアーティストの先輩だから、あんまり細かくいろいろ相談するのは失礼かなって最初は思っていたんですけど、やっぱりいい作品にしたいという思いが強かったので図々しくも密に連絡してしまって。
水野 「めっちゃメール来てるー!」って思いました(笑)。でもいろいろ相談してくれるのは純粋にうれしかったですよ。練習段階の歌のデモをスタッフさんが送ってくださったりもして。ホントに細かくやり取りできてよかったですね。それが結果的にいい仕上がりにつながったんだと思います。
──最終的に大原さんはどんな感情を歌に乗せましたか?
大原 水野さんに「ほほえんで歌ってほしい」というアドバイスをいただいたんですよ。なので、切なくて悲しい気持ちはもちろんあるんだけど、その裏にある相手に対しての「ありがとう」の気持ちを込めて歌うことを心がけました。結果的に終わってしまった恋だけど、「いい恋愛だったな」って思っている主人公の気持ちを私なりに思い描きながら。
水野 基本は自由に歌ってもらったんですけど、ところどころ迷っているポイントがあったようで、そこについて正直に打ち明けてくださったのでそういうアドバイスをしたんですよね。イメージとしては太田裕美さんの「木綿のハンカチーフ」。あれはすごく切なくて悲しい曲なんだけど、太田さんが笑顔で明るく、素直に歌っているからすごく魅力的なんですよね。そういった表現をすることがより切なさを伝えてくれる部分もあるし。ニュアンスとしては決して簡単ではないんだけど、大原さんはそれができるシンガーだと思っていたし、実際仕上がったものを聴いたら予想以上の歌になっていたのでさすがだなって思いましたね。
大原 今回、ピアノと水野さんの歌だけで構成されたデモテープを最初にいただいたんですよ。それがもう本当に素晴らしくて感動したし、それによってこの曲に求められている感情のニュアンスが理解できたところもあったんですよね。あのデモテープ、皆さんにも聴いてもらいたい!
水野 いやいや(笑)。僕の仮歌は非常にくどいんでね、そのイメージはどうか消し去って歌ってくださいと注意事項としてお伝えしたんです。ただ、そのくどさをうまく消してくれつつも、同時にうまく拾ってくれた部分もあったなとは思っていて。1曲の中での感情のダイナミズムと言いますか、「ここで歌がグッと強まるんだよ」みたいな全体の歌の波はちゃんととらえてくださって、それがちゃんと生かされた歌になったなって思いますね。
次のページ »
水野さんにまた曲を書いてほしい!
- 大原櫻子「さよなら」
- 2017年11月22日発売 / Victor Entertainment
-
初回限定盤A [CD+DVD]
1620円 / VIZL-1286 -
初回限定盤B [CD+DVD]
1620円 / VIZL-1287 -
通常盤 [CD]
1296円 / VICL-37344
- CD収録曲
-
- さよなら[作詞・作曲 / 水野良樹]
- everyday[作詞:大原櫻子・小名川高弘 / 作曲:小名川高弘]
- Paper Plane[作詞:leonn / 作曲:MIXAKISSA]
- さよなら(Instrumental)
- everyday(Instrumental)
- Paper Plane(Instrumental)
- 初回限定盤A DVD収録内容
-
- 「さよなら」Music Video
- 初回限定盤B DVD収録内容
-
- Making of「さよなら」
- 大原櫻子(オオハラサクラコ)
- 1996年1月生まれ、東京都出身。映画「カノジョは嘘を愛しすぎてる」に登場した3人組バンドMUSH&Co.のボーカルとして、2013年12月にシングル「明日も」でデビューする。2014年11月にソロ名義の1stシングル「サンキュー。」を発表し、2015年1月発売の2ndシングル「瞳」の表題曲は「第93回全国高校サッカー選手権大会応援歌」に採用された。同年3月に1stアルバム「HAPPY」をリリースしたのち、7月に3rdシングル「真夏の太陽」とライブDVD / Blu-ray「1st TOUR 2015 SPRING~CHERRYYYY BLOSSOOOOM!!!~」、11月にシングル「キミを忘れないよ」とリリースを重ねる。年末には「第66回NHK紅白歌合戦」に初出場した。2016年6月に2ndアルバム「V」を発表し、全18公演におよぶ3度目のツアーを実施。ツアーファイナルでは自身初となる日本武道館公演を開催した。2017年3月に映画「チア☆ダン~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~」の主題歌「ひらり」を収録したシングルをリリース。女優としての活動も活発で、ドラマや舞台にも出演している。5月より初主演舞台「Little Voice(リトル・ヴォイス)」が、東京、富山、福岡にて上演された。8月に秦基博が作詞作曲、プロデュースを手がけた「マイ フェイバリット ジュエル」を、11月に水野良樹(いきものがかり)が作詞作曲した「さよなら」をシングルとしてリリース。
- 水野良樹(ミズノヨシキ)
- 1982年生まれ、神奈川県出身。1999年2月に小・中・高校と同じ学校に通っていた山下穂尊といきものがかりを結成し、同年11月に吉岡聖恵を迎え3人編成で活動を開始する。2006年にシングル「SAKURA」でメジャーデビュー。ギタリスト兼ソングライターとして、「ありがとう」「YELL」「じょいふる」「風が吹いている」といったヒット曲を多数生み出す。2017年1月のいきものがかりの“放牧”宣言後は、さまざまなアーティストに楽曲提供したり、ラジオやテレビなどさまざまなメディアに出演したり活躍している。