小倉唯|ときめきを胸に、澄んだ空を見上げて

今だからこそ書ける気持ち

──カップリング曲「pyu♥a purely」では小倉さんが作詞を手がけています。ファンの人への気持ちがつづられていますね。

はい。昨年から新型コロナウイルスの影響で、なかなかファンの皆さんにお会いすることができなくて。ただ、そんな状況においても配信ライブやSNSのコメントを通して皆さんとのコミュニケーションは取れていました。私としては、こんなときだからこそファンの方々とのつながりを感じる瞬間がたくさんあったんです。それから、今まで当たり前だったライブでの光景や、皆さんと直接お会いできる機会があるのはすごくありがたいことだったんだなと思って。今だからこそ書ける気持ちやメッセージを届けたくて、今回作詞をさせてもらいました。

──「pyu♥a purely」は小倉さんとファンの方々がお互いに気持ちを伝え合っていくような楽曲になっています。もともと小倉さんの作品にはファンの方々への思いを描いた楽曲が多いですが、今回、心をつなぎ合うようなテーマになったのはなぜでしょう?

今までは、どちらかと言うとステージ上やライブ空間を意識した曲が多かったと思うんです。例えば自分で作詞した「ピーナッツ!」(3rdアルバム「ホップ・ステップ・アップル」収録)は、ステージに向かうまでの心境や、ステージ上で感じている思いを書いた曲でした。でも、今回はどちらかというとプライベートに近い気持ちなのかなって。

──日常生活に視点を置いたということですかね?

そうですね。この曲には「日常においてファンの方々とのつながりを感じているよ」というメッセージを込めています。ファンの方々の応援が私の日々の活動の支えになっているし、皆さんが日々の生活で何か踏み止まってしまったり、不安なことがあったりしたときには、私もそっと背中を押してあげたい。今回はあえて明確なシーンや場所は書かずに、離れている場所にいても気持ちを重ねられるようにしてみました。

小倉唯

こだわりの“かわいい成分”

──「pyu♥a purely」というワードはどういうふうに生まれたんですか? 「pure purely」ではなく、「pyu」にして間にハートを入れているところが小倉さんらしいですね。

お互いに応援し合う気持ちそのものが、すごく純粋で素敵な関係性だなと思ったんです。それで「purely」という単語を思いついたんですが、それだけだとかわいい成分が足りないなと思って(笑)。「purely」の「ピュ」という響きがかわいかったので、「pyu」のつづりにして、せっかくなのでハートも付けちゃいました。そうすることで、視覚的にもキャッチーになるんじゃないかなと。そこはこだわりですね。

──視覚的といえば、この曲の歌詞には「絶対ゼッタイ」のような漢字とカタカナの使い方、「コ・コ・ロ」の中黒、「愛情(ラブコール)」という読み方など、歌詞カードを見て初めてわかるような細かな表記のこだわりがたくさんちりばめられています。こういうところに小倉さんの歌詞の独自性を感じますが、意識的にやっていますか?

そうですね。せっかくなら歌詞を見ながら皆さんに聴いていただきたかったので、1つひとつの言葉の表記にはこだわっています。あとは、単に音にハメていくうえで、こっちのほうがぴったりくるなという理由のときもありますし、自分のメッセージが皆さんにより強く響いたらいいなという意味合いでやっていることも。でも、一番は考える作業が楽しいからかな。

──「愛情」と書いて「ラブコール」と歌うのは、小倉さんらしい気がして。

小倉唯

実は、ここは「愛情(あいじょう)」と、そのままの読み方で歌うつもりでいたんです。でも、レコーディングで急遽「愛情(ラブコール)」という読み方に変えました。というのも、「ラブコール」は去年コロナウイルスの影響で中止になってしまったツアーのタイトルでもあって。

──あっ、「#LOVEcall」……。

歌っているときにちょうどそのことが頭によぎって。「優しく 受けとめてくれる 愛情(ラブコール)」と歌うことによって、ツアーからのつながりも感じられますし、今後この曲を聴くときにもエモーショナルな気持ちになってもらえるんじゃないかなと思って。急遽、その場で変更させてもらいました。

──サビで「コ・コ・ロ 繋いでいて」「コ・コ・ロ そのままでいい」と歌ってきて、最後の大サビだけ「コ・コ・ヨ 繋いでいて」となるところにも、きっとこだわりがありますよね。

そこはライブを想定しました。「やっぱり私の居場所ってここだよね」という気持ちを込めて。大サビの間奏の「(コ・コ・ロ)」という部分は、ファンの皆さんにぜひ歌ってほしいなと思って。ライブでは、それを受けて私が「コ・コ・ヨ」と歌えたら楽しいのかな、なんて。そんな情景を思い浮かべながら書きましたね。

──小倉さんの歌詞は全体的に音の当てはめ方がすごく気持ちいいなと思うんですが、作詞するうえでそこは意識していますか? 昔からずっとダンスをやっているから、自然と音数を意識してるんですかね。

そこは、作曲の太田晴之さんにも褒めていただいたところなんです。作曲家さんって、曲を書きながら「この音にはこんなフレーズをハメたい」というイメージがあるらしいんです。その点、太田さんからは「この歌詞に関してはパーフェクトでした。音ハメも心地よく、最後まで何ひとつストレスなく作業できました」と言っていただけて。ダンスの経験も活かされたのかなと思いつつ、プロの方に褒めていただけたのは本当にうれしかったですし、今後のモチベーションになりました。

心を開いて書こうと思った

──「pyu♥a purely な 瞳(アイズ)で 伝わってるよ アイコンタクト」の「瞳(アイズ)」は「合図」とかかっていますよね?

そうなんです。歌詞を書きながら「瞳(アイズ)」って「合図(あいず)」にも置き換えられるなと、遊び心で取り入れてみた部分ですね。

──遊び心がありながら、「ふと思うの こんな毎日(エブリデイ) うんと素敵で ちょっと儚く それが幸せ」という小倉さんの考え方やメッセージも節々から感じられます。「ピーナッツ!」もそうでしたが、小倉さんの歌詞は遊び心とメッセージ性が1曲の中でいい形で同居してますよね。

小倉唯

主張しすぎない程度に、要所要所でさりげなく自分の考え方やメッセージを入れていくのが私の作詞スタイルなのかもしれないですね。「ふと思うの こんな毎日(エブリデイ) うんと素敵で ちょっと儚く それが幸せ」という部分は、自分で普段考えていることをうまく表現できた1文かなと思っています。この言葉が浮かんできたときは、心の中で拳を握って「よし!」という感じでした(笑)。人生のテーマとして「幸せってなんだろう?」という答え探しをしたい、という気持ちがあるんです。現時点で、私は毎日ってすごく儚いものだなと思っているけど、同時に日々感じる儚さがいつしかの幸せにつながっていくのかなって。あくまで私自身の考え方ですが、そういった視点もあるんだなと、なんとなくメッセージを受け取っていただけたらうれしいです。

──「Honey♥Come!!」のときは「Pick me, Please」というような積極的なフレーズは気持ちを強く持たなきゃ歌えないということをおっしゃっていましたが(参照:小倉唯「Honey♥Come!!」インタビュー)、「pyu♥a purely」では「絶対ゼッタイkeep holding your heart♥」というフレーズも自ら書かれています。今はもうこういった言葉をナチュラルに歌えますか?

そうですね。アーティスト活動を長く続けてきたからこそ、これからは、自分がファンの方々を引っ張っていきたいという思いがどんどん湧き上がってきて。そんな部分も歌詞に反映されているのかもしれないです。

自信を持ってソロアーティストデビュー10周年へ

──自分で作詞した曲と、作詞家さんに書いてもらった曲で、レコーディングで歌うときに違いはありますか?

自分で作詞した曲は、スムーズに歌い終わることが多いですね。作詞するときに、実際に少し口ずさみながら、自分の歌い方や言葉の伸ばし方などを意識して書いているので。今回のレコーディングでは、どちらかと言うと曲の雰囲気を重視して歌声を作りましたね。楽曲的に微炭酸というか、しゅわしゅわ柔らかくかわいらしくというイメージがあって。

──それで弾むような歌声になっているんですね。

はい。完成形は打ち込みのアレンジになってるんですが、初めはバンドっぽいサウンドだったんです。ギターの音もしっかりと入っていて、今よりもロックなイメージでした。だけど、どちらかというと優しい雰囲気にしたかったので、バンドっぽさを控えめにして、打ち込みでトラックを作っていただきました。歌い方も皆さんの心に語りかけるような優しい雰囲気を意識しました。

──ダンスのフォーメーションを考えたり、作詞をしたりと、今作からもクリエイティブな姿勢がうかがえますが、今後のプランはありますか?

実はソロアーティストデビュー10周年が目前に迫っているので、そこでどんな自分の見せ方ができるのかなというのが、これからの活動の軸になっていくような気がします。10周年目前と言いながらもまだ25歳なのは、自分でも不思議な気分です。

──その若さでデビュー10周年というのはすごいですね。

そうですよね(笑)。ソロアーティストデビュー10周年、そしてその先に向けて、登り上がっていくようなイメージでこれからも活動していけたらいいなと思います。今回のシングルを通して大切だと感じたのは、守りに入りすぎないこと。ただ、ときには自分を守ることも大事だから、絶妙なバランスで、自分を信じながら進んでいきたいです。

──「日々がんばれることをがんばって、地層を積み上げていく」という小倉さんの活動スタイルは変わっていないと思いますが、今作を通しても表現方法はやはりどんどん自由になってきているように感じました。

そうですね。最近は少し自信を持って自分の考え方や表現したいものを届けられるようになったのが大きくて。昔は周りの反応とかも気にしながら探り探りで進んでいたんですが、10年近くやっているとそうも言っていられないというか(笑)。日々成長して、自信を持てるようになったからこそ、作詞や振り付けにもどんどん挑戦できるようになりました。付いてきてくださるファンの方のためにも、これからの未来を切り開いていきたいです。

小倉唯