小倉唯|“新しい私”と出会った挑戦作

小倉唯が2月20日に3rdアルバム「ホップ・ステップ・アップル」をリリースする。

アルバムには「白く咲く花」「永遠少年」といったシングル曲や、小倉が2度目の作詞を手がけた新曲「ピーナッツ!」など全13曲を収録。彼女がこれまでアーティスト、そして声優として培ってきた表現が詰まった、集大成的な作品となっている。音楽ナタリーでは小倉本人に全曲解説してもらい、アルバムに見える彼女のさまざまな挑戦を紐解いた。

取材・文 / 中川麻梨花 撮影 / tAiki

次は“アップル”しかない

──アルバムを制作していくうえで、小倉さんの中にはどういったコンセプトがあったのでしょうか?

3枚目のアルバムということで、まずは「さらなるステップアップを目指したい」という思いがありました。かつ、アルバムタイトルの“アップル”はかわいらしい果実でありつつ、そこにはちょっと色っぽい“禁断の果実”というイメージもあって。今まで私があまり出したことのないような艶っぽさも、このアルバムで表現できたらいいなと思っていました。

小倉唯

──「ホップ・ステップ・アップル」というタイトルは、アルバム制作の初期段階で決まっていたんですか?

そうです。最初にアルバムタイトルを決めて、そこから作品全体の方向性や楽曲を決めていきました。このタイトル、自分で考案したんですよ。

──“アップル”がいいと。

今まで「Strawberry JAM」(2015年3月発売の1stアルバム)、「Cherry Passport」(2017年7月発売の2ndアルバム)とリリースしてきたので、次は“アップル”しかないかなと思って(笑)。3枚目だし、“三段跳び”というイメージで「『ホップ・ステップ・アップル』はどうですか?」と提案させていただきました。

──“三段跳び”という言葉の通り、小倉さんはこのアルバムで幅広い楽曲にチャレンジしています。人間のさまざまな感情を描いた全13曲を通して、小倉さんの1曲1曲の歌表現がさらに洗練されているのを強く感じました。

ありがとうございます。今回は特に楽曲によって世界観が大きく違うので、それをどうやって表現していくのか、自分の中で曲ごとに課題を設定しながら歌っていきました。

──スキルアップした感覚はご自身の中にもありますか?

今回は自分でもそう感じました。楽曲のチョイスも今までとは違うので、その中で自分の新しい表現の仕方に出会えましたね。このアルバムの制作を通して、また表現の幅がすごく広がったような気がしています。

「ホップ・ステップ・アップル」全曲解説

アップル・ガール

──ここからは1曲ずつお話を伺っていければと思います。まずは「アップル・ガール」ですが、小倉さんのいろんな表情が詰まっているこのアルバムの中でも、ポップでキュートな楽曲がリード曲になりましたね。

小倉唯

何曲かリード曲の候補になっていた楽曲があったんですけど、最終的に一番耳になじむなと思ったのが「アップル・ガール」でした。何度でも聴きたくなるような曲だなって。あと、今回アルバムを制作するうえで、昭和っぽさや懐かしい雰囲気を取り入れてみようというのもコンセプトとしてあって。「アップル・ガール」は現代らしいポップな曲でありながら、懐かしさを感じるようなメロディもあるので、この1曲でアルバム全体の世界観をつかんでもらえるんじゃないかなと思いました。

──これまで小倉さんは女の子の恋心を数多く歌ってきましたが、「アップル・ガール」は主人公の恋心をどう解釈しましたか?

この曲の主人公は、気持ちに少し余裕があるのかなと思ったんですよ。自分の気持ちを客観視できているというか。これまで私の曲は「もっと私だけを見て!」って一生懸命がむしゃらに恋をしている女の子が多かったですが、この曲では「いつか君にあげるから」と少し余裕を感じさせる言葉が出てきたり。小悪魔的な要素がまさに禁断の果実のようで、女の子の艶っぽさも表現されていると思います。

──「今はおあずけよ」「全部めしあがれ」といったフレーズは、まさに艶やかですね。

はい。自分に自信を持っているからこそのリラックスした柔らかさも歌詞から感じたので、優しい気持ちで歌うことを心がけました。

──この曲はすでにファンクラブのイベントで披露されています。

初めて歌ったとは思えないくらい、皆さんの一体感が素晴らしかったです。掛け声も入れていただいて、「もう何回か歌ったことあるのかな?」と思うような景色を見せてくださいました。ファンの皆さんは本当に頼もしいです。

──ミュージックビデオは現代の小倉さんと昭和アイドルに扮した小倉さんがコラボレーションするという内容になっています。昭和アイドルの小倉さんは新鮮な出で立ちですね。

いつもこだわっている前髪を思いっきりアレンジして、撮影に挑みました(笑)。ときどきクスッとするようなカメラアングルもあって、すごく面白いMVに仕上がったんじゃないかなと思います。ファンの皆さんの反応が楽しみですね。

Hop Step Jump!

──「Hop Step Jump!」は小倉さんのライブ空間がそのまま楽曲になっているような印象を受けました。

そうなんです。私も大森祥子さんから歌詞があがってきたときは、すごくびっくりしました。最初からライブをコンセプトにした曲を作ろうと決めていたんですけど、いざ歌詞を見たらまさに私のライブ空間そのままだなと。お客さんにこういう気持ちでライブを楽しんでもらいたいという思いが凝縮されている歌詞なので、ライブに向けて気分を盛り上げたいときにこの曲を聴いてほしいです。この曲をみんなで一緒に歌って、ジャンプしたいですね。

──小倉さんのライブは、まず何よりも“みんなで一緒に楽しい時間を作る”というところに特化していますよね。

私のライブは自分が何かを届けるだけじゃなくて、お客さんと心を通わせ合うことで、それで初めて成立するものというイメージです。この曲の「会場中 信じて大丈夫!!」「笑い合える仲間って最高」という歌詞の通り、お客さん同士で一体感を感じてもらったり、その場だけは普段の日常生活から切り離してライブの世界観に酔いしれて、「あー、楽しかった」と思ってもらえるような……そんなハッピーな空間を作れたらいいなと思っています。

──ライブがない期間も、皆さんこの曲を聴くたびにそんな空間を思い出せるんじゃないでしょうか。

この曲を聴いてそのときの気持ちに浸っていただいて、また私のライブに行きたいなと思ってもらえたらうれしいですね。