音楽ナタリー Power Push - 小倉唯

今の私にできる“最高に刺激的なこと”

エンタテインメントとしての葛藤、悩み、闘争

──ただ「Honey♥Come!!」リリース時のインタビューで小倉さんは「常に“小倉唯”でいたい」と言っていた。つまり何かを表現するときはみんなを楽しませるエンターテイナーに徹したいタイプだし、個人的な弱さや葛藤みたいなものは……。

できるだけ隠しておきたいタイプです(笑)。

──ですよね。でも「Future Strike」ではそれらの心情を前景化した。それも驚きだったし、大変だったんじゃないかしら?と思ったんです。

確かになんで出せたんだろう? 普段隠してるからこそ、いざ「出していいよ」って言われた瞬間……。

──「えっ、出していいんスか?」ってことで出しちゃった?(笑)

ではないですね(笑)。その葛藤する姿や悩む姿、闘う姿を披露することが今回の楽曲を作る上でもっとも大事なことだったから、ある意味割り切れたのかもしれないですね。

──“小倉唯”が提供するに値するエンタテインメントとして機能するなら葛藤し、悩み、闘う姿をお目にかけることも辞さない?

むしろそういう姿を前面に出していきたいし、出さなきゃいけないと思ってます。

本当の意味で予想と期待を裏切れた

──これは2つ目のビックリと地続きの話なんですけど、今回小倉さんは珍しく英語詞、それも「Don't be afraid. I am with you. Come on!」という詞をカッコよく歌っています。

私、最初に歌詞を見たとき、あの英語のところで笑っちゃって。

──小倉さん、カッコいい系の詞を前にすると必ず照れますよね(笑)。ゆいかおりの「New World」の「Oh no...」「Oh, oh」っていう掛け声についても歌っている自分のことが面白くなっちゃったって言ってたし(参照:ゆいかおり「Bright Canary」インタビュー)。

なんかそういうのって照れちゃうんですよ(笑)。だから今回はすごく前置きしました。

──前置き?

小倉唯

「えーっ、これどうやって歌うんですか?」「どんと・びー・あふれいど?」「あい・あむ・うぃず・ゆー?」「かもん?」って感じで、いかにもできなさそうな空気を出しておくんです(笑)。それで実際のレコーディングのときにカッコよくキメられたら、スタッフさんに「なんだできるんじゃん」ってビックリしてもらえるし、カッコよくならなくても「しょうがないよね」って思ってもらえるじゃないですか。

──やってることが卑怯です(笑)。

予防線を張り巡らせました(笑)。

──ただこの英語詞をカッコよく歌えているあたり、まさに最初に言っていた「Raise」から進化した小倉唯って感じですよね。

予防線を張ったと言いながらも、結果英語の歌詞に真正面から取り組んだこともそうなんですけど「歌の中にきちんと入り込めたな」とは思っています。今回はアニメのテーマソングだったので、最初はもっと客観的。歌詞の世界やアニメの世界全体を俯瞰するように歌おうかな、って考えていたんですけど、さっきもお話した通り、私自身、この歌詞に描かれているものとは違うけど、日々葛藤を抱えて闘ってはいますし。「Raise」の頃はまだ経験が足りてなかったから、曲や歌詞の強さと勢いに巻き込まれながら全力で歌っていた感じがあったんですけど、この曲については、いい意味で感情的になれた。自分の意思で全力で感情的に歌うことができたなって思っています。

──感情的ではあるけど、その感情をコントロールできている、と。

そうですね。「Future Strike」ってテンポが速くて、言葉数も多いので、技術的にはすごく難しい曲だと思うんです。だから「この言葉を“立てる”にはどう歌えばいいんだろう?」みたいなプランニングは必要だったんですけど、それを踏まえた上で、でもサビなんかは気持ちでぶつかるように歌えた気はしていて。技術面だけに囚われすぎず、でもテクニックなんかどうでもいいやって歌ったわけでもない。パワフルだしリアリティはあるんだけど、それだけじゃない。ちゃんとテクニカルにも歌えたな、と思ってます。だからレコーディングのときはすごく疲れました(笑)。

──持ちうる技術と感情を全開にしたわけですもんね。

すごくカロリーを使いました(笑)。でもカロリーを使った甲斐があったな、とは思っていて。というのも、最初「ViVid Strike!」のプロモーション映像の中で曲の一部が流れたんですけど、それを観たファンの方から「こんな曲を歌うとは」という驚きのコメントをもらったことに、私が逆にビックリしたんですよ。「私が葛藤したり闘かったりしている姿ってそんなに意外だったんだ」って。

──あっ、そうか。日々の葛藤や闘争を表に出したくない小倉さんにしてみたら、この曲を意外がられるということは、つまりこれまで葛藤や闘争を隠せていた証拠になるのか。

そうなんですよ。だから本当の意味で「皆さんの予想や期待をいい意味で裏切れた」1曲ができあがったし、カロリーを使ってよかったなって思ってるんです(笑)。

告白! 小倉唯はなぜ殴り、なぜ蹴ったのか

──そして今回のシングルにまつわる最大のビックリが……。

MV!(参照:小倉唯が殴る蹴る!新曲「Future Strike」MVを公開

──はい(笑)。格闘家がヒロインのアニメのオープニングテーマだから、ミュージックビデオで小倉さんが打撃系の殺陣を披露すること自体になんら不思議はないんですけど、ここまで本格的か、と。

小倉唯「Future Strike」ミュージックビデオ撮影時の様子。

驚きですよねえ(笑)。

──小倉さんは小倉さんでぶん殴った相手の背中をダメ押しとばかりに蹴っ飛ばしているし、逆に敵は敵で小倉さんのみぞおちに思いっきり膝蹴りを食らわせてるし(笑)。

とても満足のいくMVが撮れました(笑)。

──殺陣は小倉さんの発案?

いろいろ提案させてもらいました(笑)。曲もアニメも刺激的でインパクトがあったので、MVもそれに負けないものにしたくて「じゃあ今の私にできる最高に刺激的な表現はなんだろう」と考えて「アクションだな」という結論に至ったので。

ニューシングル「Future Strike」 / 2016年11月2日発売 / KING RECORDS
期間限定盤 [CD+DVD] / 1944円 / KICM-91724
通常盤 [CD] / 1296円 / KICM-1725
CD収録曲
  1. Future Strike
  2. winter tale
  3. Future Strike(off vocal ver.)
  4. winter tale(off vocal ver.)
期間限定盤DVD収録内容
  • 「Future Strike」MUSIC VIDEO
  • MAKING

テレビアニメ「ViVid Strike!」

テレビアニメ「ViVid Strike!」

TOKYO MX:
毎週土曜日 24:30~25:00

MBS:
毎週土曜日 26:28~26:58

群馬テレビ:
毎週土曜日 24:30~25:00

とちぎテレビ:
毎週土曜日 24:30~25:00

BS11:毎週土曜日 24:30~25:00

AT-X:毎週水曜日 24:30~25:00

小倉唯(オグラユイ)

1995年群馬県生まれの声優、アーティスト。2009年に14歳で声優デビューし、2011年「神様のメモ帳」のアリス役、「ロウきゅーぶ!」の袴田ひなた役で大きな注目を集め、以来、毎シーズン放映のアニメの主要キャラを演じるように。また2010年に石原夏織と結成したユニット・ゆいかおりでメジャーデビューを果たし、2011年には「ロウきゅーぶ!」の出演声優ユニット・RO-KYU-BU!で歌った楽曲の数々がスマッシュヒットを記録するなど、声優業と並行して積極的に音楽活動も展開している。2012年にはシングル「Raise」でソロデビュー。以降アニメ「変態王子と笑わない猫。」のエンディングテーマ「Baby Sweet Berry Love」や、「最近、妹のようすがちょっとおかしいんだが。」のエンディングテーマ「Charming Do!」など、話題のアニメのテーマソングを発表している。2015年3月にはソロデビュー3年目にして初のフルアルバム「Strawberry JAM」をリリースし、7月には神奈川・パシフィコ横浜 国立大ホールで初のワンマンライブを開催した。2016年5月には通算6枚目のシングル「ハイタッチ☆メモリー」をリリース。7~8月には初のワンマンツアー「小倉唯 1st LIVE TOUR『High-Touch☆Summer』」を開催した。また10月には地元・群馬のみどり市観光大使に就任し、翌11月には自身もリンネ・ベルリネッタ役で出演するアニメ「ViVid Strike!」のオープニングテーマ「Future Strike」を発表するなど、多方面で活躍している。