ナタリー PowerPush - OGRE YOU ASSHOLE
リアレンジアルバムで見せる進化の過程
アナログ盤はマニアックな音楽ファンに聴かせたかった
──OGRE YOU ASSHOLEのアナログ盤には同じ曲でもCDとは異なるテイクや別バージョンが収録されるケースが多いですが、これはどこから生まれたアイデアなんですか?
最初はプロデューサーの石原(洋)さんがリミックスをやりたいって言ったところからですかね。それがきっかけになって、アナログ盤をバンドとしての実験の場にしようと考えたんです。
──その実験をCDではなく、聴ける人が限られてしまうアナログ盤であえてやろうと思ったのは?
アナログ盤を聴く人とCDを聴く人って、ちょっとだけ人種が違うんじゃないかと感じていて。アナログ盤愛好家というマニアックな音楽ファンに聴かせたいという気持ちがあったのかもしれないですね。
──そしてアナログ盤に収録されていた別テイクの楽曲を含むリアレンジアルバム「confidential」が、前作「100年後」からたった5カ月という短いスパンでリリースされます。
まあ実際新たにレコーディングしたのは4曲だけ、しかも既存曲のリアレンジなので、オリジナルアルバムの制作に比べれば作業量はぐっと少ないですから。
──そもそもどういう経緯でこのアルバムを制作することになったんですか?
これまでアナログ盤のみで発表してきた楽曲を、いずれはまとめてCDで出そうというアイデアは昔からあって。それがたまたまこのタイミングだっただけなんです。
──アナログ盤収録曲のみならず、新録のリアレンジ曲を入れるというアイデアも?
今回アナログ盤に入ってた曲を全部入れたわけじゃなくて4曲だけピックアップしたんですけど、どうせならアルバムくらいのボリュームにしたかったので新録もしました。
スタジオで聴いてると船酔いしたみたいな感じになる
──新録の4曲には1stアルバムや2ndアルバムからの曲に混じって、前作から「素敵な予感」も選ばれています。この選曲はどうやって決めたんですか?
1st、2ndの曲は最近ライブでアレンジを変えて演奏してるので、その新しいアレンジのバージョンを録音して入れようと。「素敵な予感」については、ちょっと振り切れたことがやってみたくて。バンドとしてもここまで振り切れたアレンジは初めてで、できあがって聴いたときは「ちょっと大丈夫かな……」と思いつつ……でも僕はすごく好きなんですよ、このアレンジ。
──最初に聴いたときはさすがに驚きました。前回のインタビューの際、アルバム「100年後」試聴会で募ったアンケート結果で「素敵な予感」が一番人気があったんですね。アルバムの中でもポップ色が一番強く出た楽曲でしたし。でも今回のリアレンジバージョンはそのポップさが完全に消えて、ダークでヘビーなバージョンに生まれ変わってます。
ですよね(笑)。
──「confidential」は冒頭から軽快な楽曲が続くのに、ちょっと油断してると終盤の「素敵な予感(alternate version)」でものすごい落差を感じさせられるんですよ。この曲のアレンジはどのようにして生まれたんですか?
今回の再録で「100年後」の中からも選ぶことになって。石原さんはこの曲をこのスローテンポにリアレンジしたいと言って、最初はドラムとベースだけ録音して、さらにもう1本ベースを重ねたんです。2本目のベースは1本目より1オクターブ低いんですけど、これってたぶんパソコンで聴いても再生されないくらいの音程らしくて。ちゃんとしたスピーカーで聴かないとその低音が出ないそうなんです。
──ああ、確かに自宅のスピーカーで聴いたときと仕事中にPCで聴いたときとで、聞こえてくる感触がぜんぜん違いました。
この曲、スタジオで聴いてると船酔いしたみたいな感じになって。エンジニアの中村(宗一郎)さんは調整しながら何度も繰り返して聴いてるんですけど、途中で「本気で気持ち悪くなったんで、作業をいったんやめていいですか?」って言ってました(笑)。
──細かなアレンジの違いはあるものの、テンポをちょっと落としてベースの低音を追加するとここまで雰囲気がガラッと変わるんですね。原曲が陽のイメージだとすると、今回は陰の部分が強調されてるというか。
なんか凶暴な感じが出てますし。
収録曲
- 真ん中で(from 浮かれている人twilight edition EP)
- また明日(alternate version)
- DOPE(from dope EP)
- フェンスのある家(from dope EP)
- バックシート(alternate version)
- フラッグ(alternate version)
- 素敵な予感(alternate version)
- バランス(from 浮かれている人twilight edition EP)
OGRE YOU ASSHOLE 東名阪ワンマンツアー
- 2013年5月3日(金・祝)東京都 渋谷CLUB QUATTRO
- 2013年5月10日(金)大阪府 梅田CLUB QUATTRO
- 2013年5月12日(日)愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
OGRE YOU ASSHOLE(おうがゆーあすほーる)
出戸学(Vo, G)、馬渕啓(G)、勝浦隆(Dr)、清水隆史(B)からなるギターロック / オルタナロックバンド。90年代末に長野で前身バンドを結成。2001年5月にアメリカのオルタナロックバンドMODEST MOUSEが松本公演を行った際に、エリック・ジュディがメンバーの腕に書いたイタズラ書きがきっかけとなり、バンド名をOGRE YOU ASSHOLEに。2005年に1stシングル「タニシ」、1stアルバム「OGRE YOU ASSHOLE」をリリースする。数々のフェス出演やライブツアーを経て、着実に知名度を高めていく。2009年にVAPへ移籍し、シングル「ピンホール」でメジャーデビュー。以後、定期的に作品のリリースとライブ活動を続けている。2013年2月にリアレンジアルバム「confidential」をリリース。