ナタリー PowerPush - OGRE YOU ASSHOLE

リアレンジアルバムで見せる進化の過程

OGRE YOU ASSHOLEがニューアルバム「confidential」をリリースする。本作は限定生産で発売されたためすでに入手困難になっている12inchアナログ「浮かれている人 TWILIGHT EDITION EP」「dope EP」の収録曲と、新たにレコーディングされた過去曲の別バージョンから構成されたもの。名曲の数々が大胆なリアレンジで生まれ変わり、原曲とは異なる感触を持った作品集に仕上がっている。

このアルバムの制作秘話、そしてアナログ盤に対するこだわりを出戸学(Vo, G)に聞いた。

取材・文 / 西廣智一 インタビュー撮影 / 佐藤類 取材協力 / JET SET

アナログ盤には無駄だからこその豊かさがある

出戸学(Vo, G)

──OGRE YOU ASSHOLEはここ数作、作品をCDで発表してしばらくしてからアナログ盤でも出すようになりましたよね。

そうですね、「浮かれている人」(2010年8月発売のミニアルバム)のときから。

──そもそもアナログ盤に惹かれたきっかけは?

以前からちょっとは興味を持ってたんです。中学生のときもカッコいいなと思って少し買っていたんですけど、それが最近急激に加速していって。そもそも音楽って、この世の中で突き詰めてみれば無駄なものじゃないですか。で、世の中がどんどんデジタルな方向に進んでいけばいくほど、効率的に音楽を楽しむことが当たり前になっていく。でもアナログ盤にはそことは違う音楽の楽しみ方が存在していて、無駄だからこその豊かさがある気がするんです。そういうところに惹かれて、去年はアナログ盤を買った枚数がCDを買った枚数を初めて上回ったんですよ。

──なるほど。それくらいハマッてしまったんですね。

はい。それとCDはケースの背や帯でタイトルが判別できるけど、アナログ盤って薄いから棚から引っ張り出さないとどれがどれだかわからない。そういうところもいいかな。あと、ジャケットは重要ですよね。CDと比べても出会いのインパクトはアナログ盤のほうが強そうですし。

レコード屋に行って最初にのぞくのはロックコーナー

──アナログ盤で聴くのは洋楽がメイン?

そうです。

──どういったジャンルが中心なんですか?

そのときの気分によりますけど……今日はフレンチものを買いましたし。だけど基本的にレコード屋に行って最初にのぞくのはロックコーナーですね。60年代、70年代、80年代の洋楽をチェックしてからワールドミュージックのコーナーに行って、ソウルコーナーも行ってみたり。ロックを軸に、いろんなジャンルにも少しずつ手を伸ばしてます。

──昨年9月からOTOTOYで「RECORD YOU ASSHOLE」というUstreamの番組が始まりました。出戸さんをはじめ、毎回メンバーの皆さんがセレクターとしてアナログ盤を10枚ほど持ち寄ってかけていくという内容ですが、これは出戸さんがアナログ盤にハマったことがきっかけなんでしょうか?

そうですね。実はほかのメンバーもここ2~3年でアナログ盤を買う量が急激に増えてるんですよ。

出戸学(Vo, G)

──あ、ほかの皆さんもアナログ盤にハマってしまっていると。

そうなんです。

──OTOTOYのサイトには各放送回ごとにプレイリストが掲載されていますが、皆さんの選曲がバラエティに富んでいてとても驚かされます。「えっ、こんなのも聴いてるんだ!」って。

懐かしい感じのやつですか?

──懐かしい曲もそうだし、すごくマニアックなアーティストの作品も多いですよね。こうやって皆さんがアナログ盤で楽しんだ音楽が、OGRE YOU ASSHOLEから生まれる新しい作品につながっていくのかなと思うと、ちょっと感慨深いものがあります。実際に放送を聴くことができなかったファンも、このプレイリストを見ただけでいろんな想像が膨らむんじゃないでしょうか。

ああ、確かに。そうかもしれないですね。

アナログ盤の雰囲気が好き

──アナログ盤の音質についてはどう思いますか?

うーん。まあCDの音質とは確かに違っていて、アナログ盤のほうがレンジが広いような気がするんですけど、僕はそれよりもアナログ盤の雰囲気が好きなので。最近はデジタルレコーディングでも容量がかなりデカイものも出てきてるじゃないですか。本当はそういうもののほうがすごいのかもしれないけど、自分はアナログ盤の持ってる雰囲気に一番グッとくるんです。

アナログ盤を物色する出戸学(Vo, G)。

──アナログ盤ってあの大きいジャケットを手にして眺めることまで含めて「聴く」という行為なんじゃないかという気がしています。それこそ優雅に音楽を楽しむ行為ですよね。

無駄が多いですからね。まあ音楽自体が生活の中では無駄なものですから。ふふふ(笑)。

──でもアナログ盤愛好家の人たちって、そういう無駄なところにこだわりを持っているのかなと。

ジャケットの紙質も昔のものと今のものとではぜんぜん違いますし。最近のアナログ盤のジャケットってちょっとツルッとした紙質なんですけど、中古で購入する古いアナログ盤のジャケットは手触りがザラッとしてるんです。そういう細かな違い……音楽とはぜんぜん関係のない無駄な部分にこだわる人も多そうですしね。

ニューアルバム「confidential」 / 2013年2月20日発売 / 2300円 / VAP / VPCC-81760
ニューアルバム「confidential」
収録曲
  1. 真ん中で(from 浮かれている人twilight edition EP)
  2. また明日(alternate version)
  3. DOPE(from dope EP)
  4. フェンスのある家(from dope EP)
  5. バックシート(alternate version)
  6. フラッグ(alternate version)
  7. 素敵な予感(alternate version)
  8. バランス(from 浮かれている人twilight edition EP)
OGRE YOU ASSHOLE 東名阪ワンマンツアー
  • 2013年5月3日(金・祝)東京都 渋谷CLUB QUATTRO
  • 2013年5月10日(金)大阪府 梅田CLUB QUATTRO
  • 2013年5月12日(日)愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
OGRE YOU ASSHOLE(おうがゆーあすほーる)

出戸学(Vo, G)、馬渕啓(G)、勝浦隆(Dr)、清水隆史(B)からなるギターロック / オルタナロックバンド。90年代末に長野で前身バンドを結成。2001年5月にアメリカのオルタナロックバンドMODEST MOUSEが松本公演を行った際に、エリック・ジュディがメンバーの腕に書いたイタズラ書きがきっかけとなり、バンド名をOGRE YOU ASSHOLEに。2005年に1stシングル「タニシ」、1stアルバム「OGRE YOU ASSHOLE」をリリースする。数々のフェス出演やライブツアーを経て、着実に知名度を高めていく。2009年にVAPへ移籍し、シングル「ピンホール」でメジャーデビュー。以後、定期的に作品のリリースとライブ活動を続けている。2013年2月にリアレンジアルバム「confidential」をリリース。