Novelbrightが4thフルアルバム「PYRAMID」をリリース。2024年発表のアルバム「CIRCUS」以来、2年ぶりに音楽ナタリーに登場した。
2年前は自分たちが思い描いている理想と現状とのギャップに葛藤し、明確に数字を求めて“ヒット曲を作る”ことに意欲を見せていたNovelbright。あれから2年を経て、Novelbrightから届いたのは、どこまでも開放感に満ちたアルバムだった。全13曲入りの本作にはこれまで以上にリラックスした空気感の中で、今の彼らにしか鳴らせない豊潤なサウンドが詰め込まれている。アルバムタイトル「PYRAMID」は「誰もが予想できない、いつの時代も世界中で愛されているもの」「“誰がこんなものを作ったんだ”という驚き」をイメージして名付けられたそうだが、まさに多くのリスナーに長く愛されるために生まれてきたような1作だ。
迷いを抜けた先にたどり着いたアルバム「PYRAMID」の全貌とは? バンドの現在地にインタビューで迫る。
取材・文 / 蜂須賀ちなみ撮影 / 堅田ひとみ
“バズる”よりも大切なこと
──ナタリーではメジャー3rdフルアルバム「CIRCUS」リリース時の2024年4月以来のインタビューです。前回「確変を起こしたい」とおっしゃっていましたが(参照:Novelbright「CIRCUS」インタビュー)、その後の2年間はいかがでしたか?
竹中雄大(Vo) 確変はまだちょっと起こせてないかな。途中だと思います。でも後退はせず、確実に、1段ずつ階段を上れている実感はあって。
圭吾(B) 2年前に言っていた“確変”は「売れたい」「バズりたい」という意味合いだったけど、それとはまた別の、バンド内の意識の確変は確実に起きました。バズる、バズらないよりも、まずは自分たち自身が1曲1曲をちゃんと愛して、リリースすることが大事。バンドを改めて見つめ直す機会があって、そう気付きました。Novelbrightの世界観を大事に育てていけば、バズはあとから付いてくるんじゃないかと。なので今は、メンバー同士でグルーヴを感じ合って、バンドをしっかり育てることにフォーカスしています。
ねぎ(Dr) 振り返れば、この2年間は漠然とした焦燥がメンバー全員にあったんだと思います。
雄大 「ドカンと売れたい」という気持ちがずっとあったけど、今はそういうものばかりにとらわれていないですね。この2年で自分たちがやっていきたいことがかなり明確になったし、今、バンドが一番いい状態なんじゃないかと。叶えていない夢もまだ多いけど、俺たちなら売れることだけを考えて急ぎ足でやらなくても、いずれ帳尻が合うだろうと思ってます。2年前は漠然と言っていた「ドームやりたいな」という夢も、今はもっと具体的に見えてきているし、「もうちょっとでできそうだな」という感覚もあります。
──何か意識が変わったきっかけがあったんでしょうか?
圭吾 「カノープス」(2025年4月配信リリースの楽曲)が生まれたときだと俺は思ってます。この曲ができたとき、全員が「圧倒的な曲だ」という確信を持っていて。もちろんヒットしたらうれしいけど、ヒットしなくても心からずっと愛せる曲だなと思えたんです。そんな思いで去年配信リリースしたら、ファンからも愛される曲になった。そういった道のりを経て、「あっ、これでいいんだ」と改めて思いました。
ねぎ 僕も「カノープス」がきっかけだと思う。今回のアルバムと同日に発売される、去年のツアーファイナルの映像作品もぜひ観てほしいです。「カノープス」を演奏したときの雄大のMCが、僕の中にずっと残っているんですよね。「一歩一歩、確実に進歩していることに気付いた」と言っていて。
山田海斗(G) バンドをやっていれば、メンバーそれぞれにしんどい時期もあるじゃないですか。Novelbrightの場合、1人が落ち込むとみんなが崩れちゃうんですよ。そしてほかの4人が落ち込んだ人を立ち直らせようとするがあまり、空回りしちゃったり、余計なことをしちゃったりする。「一緒にがんばろう」という気持ちはみんな同じでも、方向がちょっとズレていてうまくいかないことがありました。「カノープス」を作っていた時期は雄大が落ち込んでいたけど、歌詞を持ってきた瞬間、顔つきが変わったのが見てわかって。それはほかのメンバーも感じていたと思うんですけど。
圭吾・ねぎ うん。
沖聡次郎(G) トラックを渡したときも、「書きたい歌詞がある」「“こういうことを歌いたい”というものが明確にあるんだ」って。すごく短いスパンで仕上げてくれたよな?
雄大 ほとんどその日のうちにできた。衝動で書いたって感じです。僕は今まで「ファンの人たちにポジティブな気持ちになってもらえたらうれしいな」と思いながら曲を書いてきました。だけど「カノープス」は、自分に向けて書いた曲で。人生で一番落ち込んでいた時期に「このままだったら自分が終わってしまいそうだな」と奮起して書きました。カノープスというのは、日本では南のほうでしか見られない星で。宮古島で星を眺めている時間に癒されたことや、しんどかったときに助けてくれた人たちへの思いを歌詞にしています。「この曲がなかったら今も俺はさまよっていたかもしれない」と思うし、自分にとっては殻を破れた曲ですね。
海斗 その瞬間に、みんな一緒に明るい方向を向けたんですよね。この5人でもう何年もやっているから、行くべき方向さえ見えてくれば、話し合いとかしなくても自然と進めるというか。
聡次郎 もともとみんなの中にあった「長く愛せる曲を作りたい」「作っていこう」という気持ちを、曲と言葉でちゃんと提示できたのが「カノープス」だったのかなと思います。
Novelbrightを新しい世界に連れていってくれるアルバム
──そんな「カノープス」も収録された、メジャー4thフルアルバム「PYRAMID」が完成しました。
ねぎ 今回、1年くらい温めていたデモから形にしていった曲がほとんどで。本当に、世に出すのを待たれていた楽曲ばかりというか……。
雄大 待ってたのは自分らだけやろ(笑)。みんなまだ聴く前で、どんな曲があるのか知らないんだから。
ねぎ そうやった(笑)。とにかく皆さんに早く届けたいし、僕たち自身、届けられる日をずっと待っていたんです。デモから完成に向かっていく過程で、それぞれのパートをブラッシュアップさせるための話し合いをたくさんしました。特に、海斗くんが作った「Live, Laugh, Love」は今までにないアプローチの曲なので、勉強になりましたね。確認のラリーを何回もしたんですよ。
海斗 この曲ではドラムとのラリーが一番多かったかもしれない。でもソロのところは何も言ってないよね?
ねぎ うん。「自由にやって」と言われて。「どうですか?」って提出したら「わからん」と(笑)。
海斗 僕はドラマーじゃないから。素晴らしいソロだなと思いましたよ。
ねぎ あざす。信用して任せてくれているんだなと思えてうれしかったですね。
雄大 その「Live, Laugh, Love」も含め、新曲は全部セルフアレンジでやっているので、新たなNovelbrightを感じてもらえるアルバムになったんじゃないかと思ってます。今までのNovelbrightらしい曲もあるけど、「これはNovelbrightなのか?」みたいな曲もある。このアルバムがまた、Novelbrightを新しい世界に連れていってくれる気がしますね。
圭吾 「ライブもどうなるかわからないな」というワクワク感があります。今までは「こういう曲を作ろう」と事前に話し合っていたけど、今回は「こんなの作ってみたけど」「うわ、おもろっ!」という感じで1個ずつピースをハメていったんですよ。その結果、振り幅がかなり広くなりました。自分らのやりたい曲を詰め込んでみたので、客観的にどう見えるかはわからないし、どう見えるかもそんなに気にしていないんですけど。
──見え方を気にしなくてもいいと思えている、ということですよね。
圭吾 そうですね。特に「Chasing blood」を入れることにしたのは、けっこうすごいことで。
聡次郎 俺は「アルバムに入れよう」って言われたとき、自分の書いた曲だけど「マジか!」って思いましたよ(笑)。
雄大・海斗・圭吾・ねぎ あはははは!
聡次郎 アルバムの中で一番ハードな曲だけど、最初はもうちょっとマイルドなアレンジだったんです。「どうせやるならやりきったろう」ってラウドロックっぽいアレンジに変えて聴いてもらったら、最初はみんな笑ってましたけど(笑)、「こういうのいいよね」みたいな空気になって。
圭吾 「これ、Novelbright的にはどうなの?」みたいなことを誰も言わなかったので。「やりたいから入れようや」って思考になれたのが成長なのかなと。
ねぎ さっきの話ともつながりますよね。自分たちの信じたことをやろうぜ、っていう。
聡次郎 もともとみんなラウドロックを聴いていたし、そういうバンドを組んでいたメンバーも多いんですよ。「Chasing blood」はロックであり、歌モノであり、エモでもあり……自分たちのルーツを出せているし、Novelbrightの曲としてもちゃんと成立している。いいバランスにできたんじゃないかなと思ってます。
いい意味で気楽に作れた
──今回、セルフアレンジの曲が多くなったのは、自然とですか?
聡次郎 そうですね。前回は「この曲にはまだ可能性があるんじゃないか」と思っていろいろなアレンジャーさんにお願いしましたけど、今回はトラックを作っている段階から「こうしたい」という方向性が決まっていたから「じゃあこのままやっちゃいますか」って。前回のインタビューでは「いろいろなことをやらなきゃ」と言っていたし、今思えばコンポーザーとしていろいろなところに手を伸ばしすぎていた気がします。だけどそういう期間が終わって、ありがたいことに、この2年間でほかのアーティストへ楽曲を提供させてもらうことも多くなった。いち作家として経験を積んでいくうちに、自分の中にずっとあった音像みたいなものがよりクリアになってきたんです。そんな中で、月に何回かあるスタジオに入る日に、「おみやげ持ってきたよ」くらいの感覚で作った曲をみんなに聴いてもらって、そこからいいものが選ばれていったという感覚です。だから僕は、今回のアルバムでナチュラルな自分を出せたなと思っています。
海斗 僕も、いい意味で気楽に作れたなと思います。バンド内での会話で「バズらなきゃ」「売れなきゃ」みたいな言葉が飛び交っていた時期は、やっぱり曲を作るときにもそっちに思考が持っていかれちゃって。「自分はこうしたいけど、この曲をバズらせるためにはこうしたほうがいいのか?」とか必要のない葛藤をすることもあって、1人でモヤモヤを抱えていました。でも今回は「カノープス」がきっかけで、Novelbrightとして今後どうしていくべきかが見えた。もちろん「よりよくするためには」と考えることはあるけど、それがモヤモヤになることはなく。ほどよく力を抜いて、曲を作ったり歌詞を書いたりすることができました。
──なぜ今回、リラックスして曲を書けたのだと思いますか?
聡次郎 やっぱりバンドの空気が大きいと思います。メンバーは自分の書いた曲をしっかり受け止めてくれるし、意見もくれる。「こういうチャレンジをしてみました!」というものに対しても、ちゃんと向き合ってくれる。そういう空気感だったから、今回は制作が特に楽しかったんですよね。だからこそこういうアルバムになったんやと思うし、「こういう仲のいいバンドがずっとやりたかったんだよな」といううれしさもあります。
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「1人じゃないよ」って伝えていきたい





