ユーザーが増えれば増えるほど精度が上がっていく
──gbさんが「『NORDER』にこんな機能が増えたらうれしい」と思うものは何かありますか?
gb 例えばですけど、「こういうアーティストとコラボしたら面白いんじゃないか」と提案してくれる機能があったらすごく助かるなと思います。僕の最近の活動テーマとして「もっとコラボをたくさんしていきたい」というのがあるんですけど、結局思いつくコラボ相手って、近しい知り合いか現実味のないビッグネームばかりだったりするので。
西山 マッチングプラットフォームみたいな感じですよね。現状ではアーティストとインフルエンサーのマッチングシステムのみに注力している形ではあるんですが、今後その対象を広げていけたらいいなという展望はあります。
gb 例えばアーティスト同士だけじゃなく、デザイナーさんや映像作家さんともマッチングできたらいろいろ広がりますよね。
西山 いいですね! 理想を言えば、今すぐにでも全部実装したいです(笑)。ただ運営上の現実的なお話として、アーティストとインフルエンサーのインフラを両方抱えるだけでもけっこう大変なんですよ。まずアーティストが集まらないことにはインフルエンサーへの依頼も発生しないですし、その逆もそう。
gb ああー、確かにそうですよね。
西山 なのでまずは登録アーティストの最大化から始めて、そのアーティストさんたちの抱える問題を1つひとつ解決しながら、最終的にそこへたどり着くことを目指しつつ歩んでいく感じになりますね。
──現実的にやれることを1つずつ着実に進める中で、3月に大型のアップデートがあるんですよね(※取材はアップデート前の2月に実施)。
西山 はい。今回はかなり大幅なアップデートになっていまして、中でも目玉はAIチャット機能の追加です。アーティストさんが「今こういう問題で困っています」というようなことを自由になんでも入力できる機能で、それに対する解決策を提示することももちろんなんですが、相談事がたくさん入力されればされるほどデータも蓄積していくので、よりきめ細かい対応が可能になっていきます。
gb なるほど! 僕らが相談すればするほどAI自体も進化していく。
西山 そういうことです。対話によってAIを学習させることでどんどんパーソナライズされていって、「あなたがどういうアーティストなのか」を詳細に把握したうえで解決策を導けるようになっていきます。そうなると本当にマネージャー的な存在になり得ますよね。
gb 確かに。そのチャット機能で、例えば「今この曲がこのくらい伸びているけど、こうしたらもっと理想的な伸び方に近付くよ」みたいなアドバイスももらえるようになるんですか?
西山 最終的にはそこまでいきたいのですが、けっこう難しい領域ではあって。例えば「あなたと似たような音楽性、似たような数字を持つアーティストが、このようなやり方でさらに数字を伸ばしました」というデータがたくさん集まればその正確性も向上していくので、より多くの人が入ってくれば入ってくるほどその未来には近付くと思います。
gb なるほど……。
──やはり、何はともあれまずは登録アーティスト数を増やすことが先決なんですね。アーティストの皆さんは使ってください、と(笑)。
西山 そうですね(笑)。AI学習はデータ量がものを言うので、結局はそこに尽きます。「NORDER」を使ってくださるアーティストさんが増えれば増えるほどサービスの質も精度も向上するという理屈ですので、とにかく多くのアーティストさんにアプリの存在を知っていただき、使ってみていただきたいです。
アーティストが音楽だけに集中できるように
gb そんなふうにAIに任せられることが増えていけば、アーティストはどんどん音楽だけに集中できるようになりますよね。今っていろんなSNSがあって、文章や写真、動画、いろんなものの出し方を考えて工夫しなきゃいけない時代じゃないですか。しかもそのアルゴリズムも日々変化していくので、「このSNSだったら今はこのやり方がいい」とか「動画は何秒以内で」とか、現代のアーティストは音楽以外にやるべきことや考えることがたくさんある。
西山 個人の手には負えないぐらい、たくさんのツールが出てきてしまいましたからね。でもアーティストとして成功するためにはやらなければいけないことではあって、いつの間にか「やったほうがいいもの」から「やらなければいけないもの」になってしまっている。その結果、「SNSに時間を取られて曲を作るヒマがない」みたいな本末転倒なことが起こったりもしているんですよね。
gb 実際、後輩からの相談事とかも以前は音楽についての話が多かったんですけど、最近は「TikTokのいいねが増えなくて」という話ばっかりになってきていますね。僕たちはミュージシャンであって、TikTokerではないはずなんですけど(笑)。
西山 今までだったら、そういう周辺作業をせずに音楽だけに集中するためには、誰かに頼る以外の方法がありませんでした。そのために人を雇うとなると当然お金が必要なので、まだアーティストとして売れていなくてお金のない人は全部自分でやるしかない。それで曲を作る時間がなくなって、ますます売れることから遠ざかる……というループから抜け出せなかったのを、「NORDER」が解決してくれるんじゃないかなと思っています。アーティスト自身がこだわりたいクリエイティブ以外の部分は全部お任せできるようになるのが理想ですね。
gb クリエイティブ自体にも、AIが助けてくれる場面はありますよね。例えば歌詞を書いているとき、自分の持っているボキャブラリーだけでは限界を感じることもあるんです。そういうとき、例えばAIチャットツールに「夕焼けを連想させるワードって何かない?」と入力すると、聞いたこともないような単語が出てきたりもするんですよ。その中から「この響きがいいな」と思うものがあれば歌詞に使ったりもするので、AIがどんどん進化すればクリエイティブにもいい影響がありそうな気がします。
西山 私も同じ意見ですね。AIというのは、うまく使うことでよりクリエイティビティを高めることができるものだと思っています。批判的、懐疑的な意見があるのもわかるんですけど、向き合い方次第で変わってくるのかなと。
gb それこそ「NORDER」のあり方と同じですよね。自分自身に代わるものではなくて、自分をサポートしてくれるものというか。そういう考え方をすることでAIとはうまく付き合っていけるんじゃないかな、と僕はすごくポジティブに考えています。
西山 マンガ家さんにとっての編集者さんのようなもので、AIは何かを作り出す人たちにとっては非常に強力な味方になってくれる魅力的な存在だと思います。
プロフィール
gb(ジービー)
ソウルミュージック界のレジェンドグループ・Kool &The Gangのオリジナルメンバーであるジョージ・ブラウンを父に持つシンガーソングライターで、SixTONES、超特急、WATWING、WARPs UP、Paradox Live(VISTY)、感覚ピエロ、超ときめき♡宣伝部、中山優馬といった多くのアーティストに歌詞を提供しているアーティスト。バスケットボール愛好家でもある。gbという名前は、本名のグレゴリー・ブラウンのイニシャルから付けられたもの。オーガニックかつグルーヴィなサウンドで、Z世代を中心に幅広い世代から支持されている。夏フェスなどの野外イベントにも多数出演している。2020年に発表した楽曲「STRESS」がTikTokで話題を呼び、2021年にはビッケブランカが手がけたリミックス版が配信リリースされた。同年にアルバム「24/7」、ミニアルバム「STRESS FREE」を、2022年2月に楽曲「丁寧な暮らし」を配信リリース。「丁寧な暮らし」のミュージックビデオには伊藤健太郎が出演して注目を浴びた。2025年2月に日本テレビ系「NNN ストレイトニュース」のウェザーテーマ曲「空模様」を配信リリースした。