NONA REEVES|20年選手のポップバンドに課せられた任務

「バンドマンとして生きてる」という感覚を思い出した

──なるほど、そういう気持ちが音に表れたのかもしれませんね。

西寺 以前よりも制作に時間をかけられたのもよかったですね。ミュージカル「JAM TOWN」の音楽と出演、A.B.C-Zの舞台「株式会社、応援屋!! -OH & YEAH!!-」で脚本と音楽を担当させてもらったり、本を書いたり、この数年は個人的にすごく忙しかったんですけど、最近は大きな仕事を受けないようにしていたんです。そのぶんノーナの楽曲制作に時間を取れるようになったし、奥田との共作も増えて。奥田、小松も忙しいんですけどね。どこかでライブをやった次の日に荷物を持ったままスタジオに来ることが何度もあったし。それを半年くらい続けていたんですけど、この何年間で、3人で集まっている時間が一番長かったんじゃないかな。

奥田健介(G, Key)

奥田 確かに3人で会う時間は増えましたね。当たり前ですけど、昔はサポートミュージシャンの仕事はなくて、ノーナしかなかったわけじゃないですか。今回のアルバムの制作で、その頃のことを思い出したんですよ。「バンドマンとして生きてる」という感覚と言うか。

小松 しかも全曲“せーの”で録ってますからね。メンバーとスタジオに入って、一緒に演奏するっていう。Billboard Recordsの頃はほとんどシンセベースだったから、そこは全然違いますね。

奥田 うん。シンセベースを取り入れるのも面白かったんですけどね。ダンスミュージック的なアプローチができて。

西寺 そうだね。今回は全曲にキーボードの冨田謙さん、ベースの村田シゲ(□□□)が入ってくれていて。そういう録り方は初めてかもしれないですね。今までは1曲ごとのプロダクションが基本だったんですよ。例えば「この曲は冨田恵一さんにプロデュースしてもらう」「こっちの曲は自分たちでやる」とか。今回は全曲を通してバンドとして一緒に録るという軸があるので、そこは大きく違うと思います。スタジオで生演奏するって、変な話、お金がかかるんですよ。今の社会では一番ゴージャスなやり方ですよね。

小松 実は「できるならスタジオで一緒に録りたい」という気持ちはあったんですけどね。

西寺 それがようやく実現したっていう。ミーティングの段階では「ナイル・ロジャーズにプロデュースしてもらうのはどう?」とか「クインシー・ジョーンズは? ミネアポリスのペイズリーパーク・スタジオ使えるか、聞いてみようか?」みたいな「ホントに?」っていうでっかいプランも出てたんですけど(笑)、アメリカに何週間も滞在するのはさすがに無理なので。気の合う仲間と一緒にレコーディングできてよかったです。

チャンス・ザ・ラッパーやケンドリック・ラマーを僕らがやったらどうなるか

──それにしても名曲がそろったアルバムですよね。1曲目の「ヴァンパイア・ブギーナイツ」、2曲目の「Sweet Survivor」を始めとするキャッチ―なポップナンバーも素晴らしいですが、個人的には「NEW FUNK」がまず印象に残りました。

西寺 お、うれしい。曲名のイメージと違ってなかったですか?

──バキバキのファンクチューンかと思いきや、メロウなスローナンバーですからね。現在のポップミュージックのトレンドにも沿っているし、もちろんJ-POPとしても成立していて。

西寺 そこまで深く聴いているわけではないけど、チャンス・ザ・ラッパー、フランク・オーシャン、ケンドリック・ラマーの中にあるスピリチュアルなファンクを、ヒップホップではない僕らがやったらどうなるかというのがテーマだったんです。そこにトッド・ラングレンやポール・マッカートニーのテイストを入れて。この曲、僕も気に入ってたんですけど「アルバムからは外れるかな」と思ってたんですよ。おとなしい曲があってもいいけど、その場合はバラードのほうがいいかなと。でも、奥田が「この曲を入れよう」って強く言ってくれて。

小松シゲル(Dr)

奥田 今、郷太が言ったように「NEW FUNK」というタイトルなのにいわゆるファンクではないというのが引っかかって。「マイナーっぽいメロディがあったらいいかもな」と思って加えたんですけど、それもうまくハマったし。

西寺 小松のドラムもいいんですよね。2000年代のマックスウェルあたりのズシッとくるリズムで。

小松 「NEW FUNK」ですからね。僕なりのファンクを出してみました(笑)。

──ゲストボーカリストが参加した楽曲についても聞かせてください。まずはCharisma.comのいつかさんをフィーチャーした「Danger Lover」について。

西寺 Charisma.comの「unPOP」「Lunch Time Funk」をプロデュースしたんですけど、いつかちゃんとはすごく気が合って、プライベートでも会ったりしていて。いつかちゃんの謎の友達にスナックに連れていかれたこともあるんです(笑)。だから今回のアルバムで「若い世代のシンガーに参加してもらうのもいいね」という話になったときに、いつかちゃんにラップしてもらおうと思って。

奥田 すごくチャキチャキしたラップで、リズムともなじみがいいんですよね。

西寺 うん。書いてくれたラップも1つも直してないですからね。

NONA REEVES「MISSION」
2017年10月25日発売 / Warner Music Japan
NONA REEVES「MISSION」

[CD]
3240円 / WPCL-12781

Amazon.co.jp

収録曲
  1. ヴァンパイア・ブギーナイツ
  2. Sweet Survivor
  3. Danger Lover feat. いつか(Charisma.com)
  4. NEW FUNK
  5. NOVEMBER
  6. 未知なるファンク feat. 曽我部恵一(サニーデイ・サービス)
  7. 大逆転
  8. 麗しのブロンディ
  9. 記憶の破片 feat. 原田郁子(clammbon)
  10. O-V-E-R-H-E-A-T
  11. Glory Sunset
NONA REEVES全国ツアー
  • 2017年10月28日(土)東京都 Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE ※SOLD OUT!!
  • 2017年10月29日(日)東京都 Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE ※SOLD OUT!!
  • 2017年11月3日(金・祝)福岡県 DRUM SON
  • 2017年11月11日(土)愛知県 ell.FITS ALL
  • 2017年11月12日(日)大阪府 Music Club JANUS
  • 2017年11月18日(土)北海道 Sound Lab mole
NONA REEVES デビュー20周年記念渋谷ノーナ最高祭!!! 第三夜

2017年11月25日(土)東京都 TSUTAYA O-EAST
出演者NONA REEVES / クラムボン

ノーナとHiPPY CHRiSTMAS 2017
  • 2017年12月9日(土)大阪府 Music Club JANUS
  • 2017年12月17日(日)東京都 渋谷CLUB QUATTRO
NONA REEVES / ノーナ・リーヴス
NONA REEVES
西寺郷太(Vo)、奥田健介(G, Key)、小松シゲル(Dr)の3人からなるポップソウルバンド。1995年に結成し、1997年11月に「GOLF ep.」でメジャーデビュー。初期はギターポップ色の強い楽曲を得意としていたが、1999年のメジャー2ndアルバム「Friday Night」を機にディスコソウル的なサウンドを追求しはじめる。その後も精力的に活動を続け、コンスタントに作品を発表。ポップでカラフルなメロディと洗練されたアレンジによって、国内で他に類を見ない独自の立ち位置を確立する。西寺は文筆家としても活動し、80'sポップスの解説をはじめとする多くの書籍を執筆。さらにメンバーは3人とも他アーティストのプロデュースや楽曲提供、ライブ参加など多岐にわたって活躍中。2017年3月にメジャーデビュー20周年を記念したベストアルバム「POP'N SOUL 20~The Very Best of NONA REEVES」、10月に20周年記念作品第2弾となるオリジナルアルバム「MISSION」をリリースした。