NoGoD「Le: VOYAGE」特集|我が道を突き進んできた20年──激動の軌跡とさらなる未来を語る (2/2)

それぞれのやりたいことをいいバランスで融合させた「神劇」

──2017年発表のアルバム「proof」はいかがですか?

団長 「proof」は、当時のギタリストのKyrieが、「次はこういうアルバムにする」という構想を持っていた記憶がありますね。Kyrie作曲か俺作曲か、キャラが二極化してるアルバムかな。

「proof」ジャケット

「proof」ジャケット

Shinno 一応Kyrieなりに裏テーマがあって。彼がそれぞれのメンバーになりきって、「このメンバーが曲を書いたらこうなる」というのを意識していたのを覚えています。作曲者は曲を作るときに何かしらコンセプトを持っていると思うんですけど、「proof」のときはそういう方向性の話をしてましたね。

──なるほど。次は2019年発表のミニアルバム「神劇」です。

団長 自分としてはすごく気に入っている作品ですね。正直に言うと、「Renovate」と「proof」での曲の作り方があまりしっくりきていなかった部分があって。もちろん個々が独立した曲作りもいいんだけど、それが主軸になるとNoGoDらしさから遠ざかってしまうような気がしていたんですよね。それで、「Arlequin(ハーレクイン)」という曲からひさしぶりに共作的な作り方をしたら、やっぱりこっちのほうが自分が持っているNoGoD像に近いなと思った。「神劇」はわりと俺の色が強めに出た作品ですけど、メンバーそれぞれのやりたいことをいいバランスで融合させることができて、まだこのバンドで面白いものを作れるんだなという気持ちでした。

「神劇」ジャケット

「神劇」ジャケット

──作り方に対する意識の変化は、メンバーにも共有されていたんですか?

K いや、楽器陣のほうは、作られた曲のデモに対してそれぞれの中で解釈を考えていく形なので。団長とはまた違う作り方の変化が楽器陣の中でもあった気がします。個人的には「シアン」がすごく好きです。同期を使わないバンドでもこういう曲ができるんだなと思えた曲ですね。

NoGoDで一番個を重んじたアルバム「神髄-OMNIBUS-」

──そこから少し間が開きまして、現体制になってから2023年にアルバム「NoW TESTAMENT」をリリースしました。コロナ禍やメンバーチェンジがあり、一番激動の期間だったのかなと。

団長 コロナ禍の影響がほぼすべてですね。たぶん世の中すべてが激動だったんじゃないですか? そのせいか「NoW TESTAMENT」のこと、あんまり覚えてない……。

K ははは!

hibiki いや、それは嘘ですよ!(笑) 団長の家で曲作ったじゃん。

団長 それは覚えてる。

「NoW TESTAMENT」ジャケット

「NoW TESTAMENT」ジャケット

hibiki 当時、僕はメンバー同士で一緒に曲を作り上げていくという作業をあまり経験したことがなかったので、その印象がとても強いんですよね。音だけじゃなく、パーソナルな部分も含めて、この作品をきっかけにNoGoDというバンドを知りました。

団長 昔からそうなんですけど、バンドではメンバーがやりたいことがやれない状況が一番よくないと思っていたので。「こういう曲調は全然通ってきてないな」と思っても、やりたいメンバーがいるなら、「そこにプレイヤーとして何ができるだろう?」と常に考えてやってきたんですよ。要はメンバー全員が音楽的ストレスを感じない集合体であるべきだと思って続けていたので、新体制になってもそうありたかったというか。結果的に、「こんなの弾けねえよ!」みたいな怒号が飛び交うんですけど(笑)。

K できないことは一旦伝えておかないとね(笑)。

──そして、2024年発表の最新アルバム「神髄-OMNIBUS-」は、「オムニバス」というタイトル通り、各メンバーが作曲した曲を集めた作品になりました。

団長 たぶん、NoGoDで一番個を重んじたアルバムですね。

「神髄-OMNIBUS-」ジャケット

「神髄-OMNIBUS-」ジャケット

──「NoW TESTAMENT」とは逆に?

団長 ずっと極端なんですよね。前回このやり方でやったから、次は1回お休み!となりがち。でも、「NoW TESTAMENT」があったからできたという部分は大きいです。この5人全員でアイデアを持ち寄って曲が作れることがわかったから、じゃあ皆さん個人の趣味を1回聞いてみましょう、という。結果、すごく異色な作品になったし、評価もよかったよね。

K そうだね。

Shinno 個を重んじるコンセプトは過去にもありましたけど、もっと自由度の高い“個”という印象でしたね。各々が持ち寄ったものを、それぞれの“らしさ”というフィルターを通した結果、うまくまとまったので。みんなすごいなあと思えたし、制作していても面白かったです。

この20年で一番しんどい曲にしよう

──ざっくり振り返っていただきましたが、時代ごとにスタンスや作り方、やりたいことが変わってきているんですね。

団長 本当はそんなにコロコロ毎回変わっちゃうとよくないんですけど……人間だもの(笑)。

hibiki ははは! でも、同じことばかりやっていたら、10枚もアルバムを作れないと思いますよ。

──ベストアルバムには新曲「I Can't Say Goodbye」が収録されています。このタイミングにふさわしい、決意表明のような1曲です。

団長 節目の年にベストアルバムを作ると、「なんだ、解散か?」とか言われるのがすごく嫌で。「違う違う!」という気持ちを込めた曲です。あと、10周年のベストアルバムに入れた「walk」が、ネガティブな方向を向いていた曲だったんですよね。10年前と今では自分の向いている方向が違うということがはっきりわかっているので、「walk」との対比も意識しました。「walk」と「I Can't Say Goodbye」の歌詞を聴き比べていただくと、「大人になったなー!」と感じてもらえると思います。10年前は、「なんでわかってくれないんだ」「お前らが悪い」くらいの発言もしてましたけど、10年経って「そりゃそうだよね、こんなの理解できるわけないよね」と思えるようになりました。

「Le: VOYAGE」ジャケット

「Le: VOYAGE」ジャケット

──「世の中のせいじゃない 人のせいじゃない」という歌詞に表れていますね。

団長 10年前は受け入れられなかったいろんなものを、今は噛み砕いた状態で咀嚼して、モグモグしながら歩ける感じです。飲み込むこともできるし、器用になった。10年前はちょっと腐ってた部分がありますけど、今熟してますね。

hibiki そう捉えてるんだ。発酵と腐敗は同じようなものですけどね(笑)。

K (笑)。僕としては、「I Can't Say Goodbye」の音源が届いたとき、まずは「叩けるかな?」と思いました(笑)。メインで編曲をしてくれたのはhibikiなんだよね?

hibiki そうですけど、ドラムに関してはこちらの人(団長)の意向がそのまま反映されています。

K 確かに、足(バスドラ)の量が多いときはだいたい団長。

団長 いい練習になるかなって(笑)。裏テーマとして、「この20年で一番しんどい曲にしよう」と思っていたんですよ。20年で落ち着いて「バラードでも出しゃいいか」みたいなことはしたくなかった。これが20歳になったNoGoDの最初の曲なわけで、「俺たちは今からこれを着て面接に行くぜ!」というリクルートスーツや名刺的な曲にしたかったんです。今自分が20歳でNoGoDを始めたとして、最初にどういう曲を作るんだろうと考えたら、とにかく全部盛りにするなと。15年前に「カクセイ」を作ったときも、そのときのNoGoDができる全部盛りっていうコンセプトだったから。

──なるほど。

団長 フレーズ的にも全員が映えて、過去イチでしんどい曲と考えたら足(バスドラ)が多くなり。でも、弦楽器に関しては何がしんどいかわからないので、hibikiちゃんに「しんどくして」とお願いしました(笑)。

──(笑)。確かに、歌メロの裏でずっとギターソロレベルのフレーズを弾いていたりしますね。

Iyoda その部分はシビれますよね。最初に聴いたときからエネルギーを感じて、本当に力強い曲だなと思いました。そのあと、この楽曲に込められたメッセージはどんなものなんだろうと考えながらしっかり歌詞を見て、力強さの中に歴史あり、と実感しました。いいなあと思ったので、ライブでは演奏をがんばります! サビ裏のフレーズは、いわゆるライトハンド奏法で弾いているんですけど、今のところライブでは僕が弾くことになっているので。

Shinno hibikiくんはギターのアレンジを考えるときも、ちゃんとそれぞれの“らしさ”を意識してくれるんですよ。だから、自分としても心地よく弾けるというか、ある意味すごくいい参考書を作ってもらったような感覚でレコーディングできました。自分ではわからない、「こういうこともできるんだ」「こういうふうにやったら俺らしくなるんだ」という部分に気付かせてもらえるのでありがたいです。

──第三者だからこその視点が生きているんですね。

Shinno そうそう。違うアプローチからインプットしてもらえるのが面白いなあといつも思います。みんなインプットするものは自分で見つけてくることが多いし、自分で発見したほうがラクじゃないですか。その人の好みを踏まえて、「これおいしいから食べてみなよ」ってオススメするのは、簡単なようで実は難しい。フレーズも同じだと思うので、自分で咀嚼して人に提供することができるのはすごいと思います。

団長 本当に助かります!

hibiki でも、きっと数年後にはこのポジションはAIに変わってますよ。

団長 ああ、こないだAIで次の曲のタイトルが決まったしね。もう先に言っておきましょうか。20周年が終わって、いずれ出るニューシングルのタイトルは……「神様のカケラ」です。

K 絶対嫌だ(笑)。

団長 そのままAIにワンコーラス作らせたら、とんでもねえジャパメタ曲ができちゃって(笑)。だから、やっぱりAIはその程度なんですよ。AIでなんでもできる時代に、人力でアイデアをひねり出して、パソコンから音も出さずに人力で演奏する美しさを改めて感じました。俺らは「神様のカケラ」を超えていく! 「神様のカタマリ」という曲で!

一同 はははは!

──(笑)。実際、これから作っていきたい曲のイメージはありますか?

団長 実は、今の体制になってから激しい曲だけを作ってきたんですよね。メンバーチェンジをマイナスイメージに捉えられたくないという気持ちが強く働いて、とにかくテンポが速くて激しい曲を作ってきた。なので、それは今回の「I Can't Say Goodbye」で一旦ひと区切りかなと。速い曲にはもう飽きたので、次はバラードを書きます! ……というのは極端ですが(笑)、ライブ映えする曲は十分そろったと思うので、ここから先は今の5人でまだやっていないレパートリーに挑戦していきたいです。

──まずは9月にスタートする全国ツアー「VISION QUEST」ですね。

団長 はい。20周年と銘打っていますけど、最初にも言ったとおり、個人的には20周年というものにあまり重きを置いてないんですよ。それよりも、今の5人での4年目、というほうが重要だと思っていて。もちろんこの20年間が価値のないものだとは思っていないですけど、10周年のときのように「周年だからこうでなきゃいけない」という気負いはない。20周年をきっかけとして、皆さんの心が動いて「ひさしぶりに行ってみようかな」という気になってくれればもうけもんです。今はこの5人でどんどんレベルを上げていくだけだと思っていますし、実際、今年に入ってクオリティは右肩上がりなので。今一番熟したNoGoDを、ぜひツアーで感じてほしいです。

公演情報

VISION QUEST

  • 2025年9月27日(土)神奈川県 Music Lab.濱書房
  • 2025年9月28日(日)神奈川県 Music Lab.濱書房
  • 2025年10月4日(土)北海道 Crazy Monkey
  • 2025年10月5日(日)北海道 Crazy Monkey
  • 2025年10月11日(土)栃木県 HEAVEN'S ROCK Utsunomiya 2/3(VJ-4)
  • 2025年10月12日(日)宮城県 ROCKATERIA
  • 2025年10月13日(月・祝)福島県 郡山CLUB #9
  • 2025年10月18日(土)埼玉県 浦和ナルシス
  • 2025年10月19日(日)千葉県 ROUTE14
  • 2025年11月1日(土)愛知県 ell.FITS ALL
  • 2025年11月3日(月・祝)東京都 CLUB PHASE
  • 2025年11月8日(土)長野県 ALECX
  • 2025年11月9日(日)山梨県 甲府Conviction
  • 2025年11月18日(火)福岡県 INSA
  • 2025年11月19日(水)広島県 Yise
  • 2025年11月21日(金)大阪府 CLAPPER
  • 2025年11月22日(土)兵庫県 神戸VARIT.
  • 2025年11月24日(月・振休)愛知県 豊橋club KNOT
  • 2025年11月30日(日)東京都 八王子Match Vox
  • 2025年12月7日(日)神奈川県 CLUB CITTA'

プロフィール

NoGoD(ノーゴッド)

2005年に「新興宗教樂團NoGoD」として結成。2010年6月にシングル「カクセイ」でメジャーデビューを果たし、ヴィジュアル系の枠に収まらない個性的なスタイルと確かな演奏力で人気を集める。結成10周年を迎えた2015年にベストアルバム「VOYAGE」をリリース。メンバー脱退を経て2022年にhibiki(B)、Iyoda Kohei(G)が加入し、現体制となった。2023年4月に新体制第1弾となるアルバム「NoW TESTAMENT」をリリース。2024年4月にアルバム「神髄-OMNIBUS-」を発表した。結成20周年を迎えた2025年9月に2枚目のベストアルバム「Le: VOYAGE」をリリースし、ライブツアー「VISION QUEST」を開催する。