音楽ナタリー Power Push - ニコナタ(音楽)DAOKO×吉崎響監督

“DAOKOの世界”がアニメになるまで

DAOKO×吉崎響監督 対談

心の穴を満たしてくれる作品

──まずはニコニコ生放送の配信を終えた感想をお願いします。

DAOKO 番組の最後にライブをさせてもらったんですけど、新曲の踊りを披露するのがすごく緊張しました。楽曲の世界観を壊さないように演じきるっていうのをすごく意識していて。

吉崎響 ライブ、すごくよかったです。振付もかわいくて、指を使ったフレームをモチーフにした動きとか「DAOKOさんらしいなあ」と思ってつい見入ってしまいました。お誘いいただいていた9月のライブに行けなかったことを今すごく後悔しています。

DAOKO

DAOKO ちょうど今回の「GIRL」の作業と被っていたんですよね。ぜひ今度はライブにも遊びに来てください。

──DAOKOさんは今回のアニメ「GIRL」を初めて観たとき、どういう感想を持ちましたか?

DAOKO 映像を観せてもらったとき、 すぐに「これだ!」と思ったんです。“私の話”が描かれているというか、自分の心の穴を満たしてくれる感じがして、心の底が温かくなりました。

──番組では吉崎監督をはじめとした男性スタッフ陣が、乙女心をどこまで表現できるか研究しながら作り上げたとおっしゃっていましたが、DAOKOさんから見て違和感はなかったですか?

DAOKO はい。女性に寄り添うような作品に仕上がっていました。

吉崎 “乙女心”って誰も教えてくれないし、なかなか人に聞けるようなことでもなくて。だからスタッフ同士でどう描くか、すごく話し合いましたね。あまり過剰な表現じゃないほうがリアリティがあるかと思ってこういう形に……。

「GIRL」のワンシーン。 © nihon animator mihonichi LLP. / TOY'S FACTORY INC.

DAOKO 確かに生々しすぎる表現だと、女性は引いちゃうところがあるので。うまくこう、オブラートに包んで美しく表現していただいたと思っています。

吉崎 例えば単純にエロスを描くのではなく、キャラクターの葛藤とか曲の流れとか、演出が積み重なって、感情からくるエロスに理由があるシーンに到達するという設計したかったんです。アニメってつい見た目、キャラクターに気を取られてしまうんですけど、かわいさだけじゃなくて、そこを通して内側にある歌にたどり着いてほしいっていうのが今回の狙いなんです。

切り離したものが倍になって返ってきた

──DAOKOさんと吉崎監督がタッグを組むのは昨年11月に配信された日本アニメ(ーター)見本市第3話「ME!ME!ME!」以来2回目となるわけで「初めまして」でない分、お互いに踏み込んだ作品ができあがったなと思いました。

吉崎 でも「GIRL」の打ち合わせでひさしぶりにDAOKOさんと会ったとき「あ、前と違う人がいる」って思ったんです(笑)。だいぶイメージが変わったというか。

DAOKO 「ME!ME!ME!」のときは、私がまだ高校生でしたからね。今回の打ち合わせでお会いするまでに、メジャーデビューをするっていう人生の転機も経験してましたし。

吉崎 そうそう。外見の変化だけじゃなくて、DAOKOさんの内側で大きな変化があったんだろうなっていうのも、なんとなく打ち合わせのときに思っていて。それでDAOKOさんのことをアニメにするというか、彼女の世界観を全面に押し出した作品をやりませんか?と相談したら快くOKをいただいて。

──今回「GIRL」に使用されている「さみしいかみさま」と「ゆめみてたのあたし」の2曲は、アニメのスタッフとガッチリ組んで制作された楽曲だと伺いました。DAOKOさんにとってアニメ化を前提に曲を作ることは難しかったのではないですか?

DAOKO

DAOKO 曲によっては苦しみながらリリックを書く曲もあるんですけど、今回は自分の素の部分を引き出せばよかったので、すんなり書けましたね。

吉崎 自分から提案しておいてこんなこと言うのも変なんですが、仮歌が入ったデモを聴かせてもらったときに「あ、DAOKOさん、自分を切り売りしたな」って、まず思って。

DAOKO あ、そうかもしれない。

吉崎 DAOKOさん自身が身を削って作った曲だから、今回の作品を作る上でこれまでの曲や活動も調べて、いろんな人から話も聞いて。今までのDAOKOさんの曲にヒントがいっぱいあったから、それらをつないでいって「今のDAOKOさんはこうなんじゃないか」と、現在の彼女自身を描くつもりで取り組みました。

DAOKO だから「GIRL」を観たとき「返ってきた」みたいな感覚になったんですね。なんだろう。自分から切り離したものが倍になって返ってきた、みたいな感動があって、作品を観ながらボロボロ泣いちゃったんです。

「日本アニメ(ーター)見本市-同トレス-」
作品紹介
第31話「GIRL」

原案・絵コンテ・監督:吉崎響
キャラクターデザイン・作画監督:井関修一
イメージボード:品川宏樹
音楽:DAOKO(TOY'S FACTORY)
アニメーション制作:スタジオカラー

第32話「新世紀いんぱくつ。」

脚本・監督:櫻木優平
キャラクターデザイナー:西田亜沙子
音楽:buzzG / 歌:加隈亜衣
アニメーション制作:スティーブンスティーブン

第33話「世界の国からこんにちは」

原案・脚本・監督:片山一良
ロボットデザイン:出渕裕
キャラクターデザイン:高遠るい
作画監督:小曽根正美
アニメーション制作:ブリッジ

第34話「旅のロボから」

原案・脚本・監督:沖浦啓之

ニューシングル「さみしいかみさま」 / 2015年10月21日発売 / TOY'S FACTORY
初回限定盤A [CD+DVD] / 1944円 / TFCC-89576
初回限定盤B [CD+DVD] / 1944円 / TFCC-89577
通常盤 [CD] / 1296円 / TFCC-89578
初回限定盤A CD収録曲
  1. さみしいかみさま
  2. ゆめみてたのあたし
  3. ShibuyaK
初回限定盤A DVD収録内容
  • 日本アニメ(ーター)見本市 サードシーズン 吉崎響×DAOKO 企画「GIRL」
初回限定盤B、通常盤 CD収録曲
  1. ShibuyaK
  2. さみしいかみさま
  3. ゆめみてたのあたし
初回限定盤B DVD収録内容
  • 「ShibuyaK」MUSIC VIDEO
  • 8/17ワンマンDAOKO THE LIVE! 映像
DAOKO(ダヲコ)

1997年生まれ、東京出身の女性ラップシンガー。ニコニコ動画のニコラップに投稿した楽曲で注目を集め、2012年に1stアルバム「HYPER GIRL-向こう側の女の子-」を発表。ポエトリーリーディング、美しいコーラスワーク、ラップを絶妙なバランスで織り交ぜたドリーミーな世界観で話題を呼ぶ。2015年3月にTOY'S FACTORYよりメジャー1stアルバム「DAOKO」をリリースしデビューを果たした。10月にはメジャー1stシングル「ShibuyaK / さみしいかみさま」を発表した。

吉崎響(ヨシザキヒビキ)

1980年生まれ、映像ディレクター・映像作家。ミュージックビデオ、アニメ、CG作品の監督・演出・モニターグラフィックスなど幅広く活動している。日本アニメ(ーター)見本市では第3話「ME!ME!ME!」、第20A話「ME!ME!ME! CHRONIC feat.daoko / Teddyloid」、第31話「GIRL」の3作品の監督を担当した。代表作品は「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」、「マクロスF(TV版・劇場版・娘クリ・dシュディスタb)」、「ACE COMBAT INFINITY」、「クラムボン / KANADE Dance MV」、「夜桜四重奏 ~ハナノウタ~」および「夜桜四重奏 ~ツキニナク~」のオープニング、「AKB0048 NEXSTAGE」オープニングなど。