ナタリー PowerPush - NICO Touches the Walls

武道館リベンジに向けて放つ初ベスト

NICO Touches the Wallsが初のベストアルバム、その名も「ニコ タッチズ ザ ウォールズ ノ ベスト」をリリースした。

2004年の結成からこれまで、多種多様な楽曲をリスナーに届けてきた彼ら。メジャーデビュー7年目にして発表されるこのベスト盤は、勢いに満ちた新曲「ローハイド」から幕を開け、ライブでおなじみの楽曲を挟みつつ、新曲「パンドーラ」で締めくくられる全17曲入りの濃密な1作。初回限定盤にはインディーズ時代に発表した「Walls Is Beginning」を一発録りで再現したスタジオライブDVDが付属するなど、現在のNICO Touches the Wallsを詰め込んだ内容となっている。

8月には4年ぶり、2度目の日本武道館公演を控えている彼ら。現在はどんなモードで活動しているのか話を聞いた。

取材・文 / 中野明子

2度目の武道館のためのベスト

──このタイミングでベスト盤をリリースすることになった経緯を教えてください。

「ニコ タッチズ ザ ウォールズ ノ ベスト」初回限定盤付属DVD「Studio Live

光村龍哉(Vo, G) ずばり8月にある2度目の武道館公演のためですね。4年前に初めて武道館をやったときは満員にすることができなくて。いつか満員の武道館でライブをやりたい、リベンジをしたいっていう思いでこの4年間やってきたんです。それで2度目の武道館が決まって、やるにあたってセットリストはどんなものがいいかなって考えたときに、今までファンと俺らで育ててきた曲で構成するのが一番盛り上がりそうだなと。「手をたたけ」で一緒に手を叩いたり、「THE BUNGY」でコール&レスポンスをひたすらしたり。それでライブのアンセムというか、必殺チューンばかりを集めたベスト盤を作ったらより楽しんでもらえるかなと。

──いわゆる集大成的なベストではないと。

光村 そうですね。今年結成10周年を迎えるんですけど、10周年を祝ったり、振り返ったりするために出すわけじゃない。ベストって銘打つことで、ファンじゃない人にも届けられるという思惑はありますけど。

対馬祥太郎(Dr) まあまとめ的な感じのベストになると、落ち着いちゃう気がして。そこまで偉大な功績は残してないし。

──ひとつのバンドを長く続けることって、決して簡単なことではないと思いますが。

光村 俺ら的には全然まだまだで。

──バンドの状況は最近いかがですか?

光村 過去に比べると年々、曲にしてもバンドの空気にしてもシンプルになってるんですよね。

──シンプル?

光村 ロックバンドとしての自分たちを追求していきたい。それだけを考えるようになった。

──今まではそうじゃなかった?

光村 漠然としてますけど邦楽っていう畑の中で、新しい音を鳴らさなきゃとか、何かを背負ってやろうとしてたところがあるんですよ。自分たちの欲求は抜きにして。

──それが変わったと。

光村 ロックバンドであることを自覚するようになったし、俺ららしくやれることをやるのが一番楽しいし、面白いし、カッコいいんじゃないかなって。

──バンドを始めた頃に戻った感じですか? 4人で音を鳴らしてて楽しいっていうような。

光村龍哉(Vo, G)

光村 いや、そもそもNICOって4人で演奏してて楽しい、だから曲を作るっていうところから始まっているわけじゃないんで、この境地は初めてですね。

──デビュー当時は曲が喜ぶようなアレンジやライブをしたいと言ってましたね。

光村 そうそう。バンドとして認められたいんじゃなくて、曲を認めてもらいたい。面白くてカッコいい曲を作って、それで聴く人の心を射抜きたいと思ってたんですよ。それが今は“俺ら4人”の曲やパフォーマンスでリスナーを射抜きたいという意識に変わった。

──変わった時期というのはいつになるんでしょうか?

光村 今思えば、最初の武道館が終わったあとからそういう意識はあったかもしれませんね。

坂倉心悟(B) 前回の武道館が終わったあと、自分たちってこんくらいの存在だっていうのは赤裸々にわかったんですよ。お客さんの動員だったり盛り上がり方だったり。お客さんがすごく助けてくれた感じがあって。

光村 とにかく曲を愛しすぎてたんだよね(笑)。曲を愛しすぎて、ステージに立ってるのが俺らだっていう意識があんまりなかったんだよ。

坂倉 お客さんは僕らのことを観に来てくれたのにね。

光村 それに気付いて、俺らのパーソナリティがあってこそ、曲も引き立つっていうことに気付いたんですよ。お客さんを引き寄せたいなら、自分たちをもっと出さないとって。

──今度の武道館では“NICOの曲”を聴かせるのではなく、自分たちを見せるライブをやると。ベスト盤はそれを表明した作品だと。

光村 その通りです。

今の俺らに会いにライブに来てほしい

──曲順は新曲「ローハイド」から始まって、どんどん時代をさかのぼってますよね。なぜこの流れにしたんですか?

光村 俺たちはこれだけのものを携えてきました。これからもこの曲たち、この曲を聴いてくれる人たちとまだまだ進んでいきますよっていうことを発信したかったんです。そういうことを考えたら、「ローハイド」から始まらないと意味がないって4人で話して。

対馬 ベストって時系列に曲が並んでるのも多いじゃないですか。そういう固定観念に縛られるのもイヤで。ベスト盤だからって過去の曲ばかりでまとめたり、古い曲から始まると懐かしむモードになっちゃいそうだし。これを聴いて「今の俺らに会いにライブに来てほしい」っていうのがメッセージなんです。

──タイトルにバンド名が入ってますが、あえてカタカナにした理由は?

光村 自己紹介的な意味というか。周りが僕らに対して抱いてるイメージって、もっとクールで頭使ってやってるっていうイメージだと思うんですよ。名前も長くてとっつきにくいし(笑)。だからタイトルから、もっととっつきやすいんだよっていうのを表現したかったんです。

古村大介(G) 英文字だとやっぱり「NICO Touches the Worlds」とかいまだに言われるんですよ(笑)。

坂倉心悟(B)

坂倉 このタイミングでぜひ覚えてもらいたいっていうのもあるね。

──(笑)。そういえば、あるインタビューでタイトルを英文字にすると「NICO Touches the Walls NO BEST」になると話してましたが。

光村 ベストって銘打ってるけど、いわゆるまとめ的なベストじゃないよって言いたくて。今回もCD1枚にまとめましたけど、新曲が2曲入ってて、新録(「image training」)があって、さらに初回限定盤のために「Walls Is Beginning」を再現するDVDを作って……。

坂倉 曲をまとめたっていうよりも、ベストアルバムを制作しましたって感じですね。消費したカロリー的に(笑)。

「よく観とけ まだ先だ 最終回!」

──収録されている新曲についてもお聞きしたいんですが、ラストの「パンドーラ」は複雑な展開の曲で。

光村 俺ら的には「そのTAXI,160km/h」の10年後っていう設定の曲なんです。「TAXI」を作った頃から、自分たちの芯の部分は何も変わってない、攻撃的なところがまだあるっていう証明のつもりで入れました。あと初めて4人で一緒に作った曲で、バンド名義で出す曲だし、ちゃんと新しいところも出せてるかなと。

──バラエティに富んだ楽曲が並ぶベスト盤の中にあってもインパクトがありますよね。一方でオープニングを飾る「ローハイド」は?

光村 武道館埋めてやるぞとか、これからもっともっと面白いことやっていくぞっていう所信表明のような思いを歌詞にも音にも込めました。俺らとしては今までの中でもっともリアルで素直な曲。歌詞も「準備オーライ 準備オーライ いざローハイド」って書けた時点で、俺はやることやったなと思って。あとはアレンジは各メンバーに任せたら、そしたら古くんは変態的なギターを乗せてくるし、坂倉も対馬もすごい音出してるし(笑)。それぞれ今一番ホットなことをやろうっていう点では一致してて。あと毎回最後のサビで感動しちゃうんですよね。

対馬 「よく観とけ まだ先だ 最終回ー!」ってところね。バンドの思いとしては、本当にそれに尽きるな。

ベストアルバム「ニコ タッチズ ザ ウォールズ ノ ベスト」 / 2014年2月5日発売 / Ki/oon Music
初回限定盤 [CD+DVD] / 3800円 / KSCL-2423~4
通常盤 [CD] / 2800円 / KSCL-2425
CD収録曲
  1. ローハイド
  2. ニワカ雨ニモ負ケズ
  3. Mr.ECHO
  4. 夏の大三角形
  5. 手をたたけ
  6. バイシクル
  7. Diver
  8. 妄想隊員A
  9. マトリョーシカ
  10. N極とN極
  11. かけら~総べての想いたちへ~
  12. ホログラム
  13. THE BUNGY
  14. Broken Youth
  15. 梨の花
  16. image training-2014-
  17. パンドーラ
初回限定盤DVD収録内容

Studio Live"Walls Is (re)Beginning"

  1. そのTAXI,160km/h
  2. 行方
  3. プレイヤ
  4. image training
  5. 病気
  6. 雨のブルース
NICO Touches the Walls
(にこたっちずざうぉーるず)

2004年4月に光村龍哉(Vo, G)、古村大介(G)、坂倉心悟(B)の3人で結成。同年7月に対馬祥太郎(Dr)が加入し、2005年から渋谷と千葉・柏を中心にライブ活動をスタートさせる。2006年2月に初のミニアルバム「Walls Is Beginning」をインディーズレーベルから発表し、翌2007年11月にミニアルバム「How are you?」でメジャーデビューを果たす。2008年9月に1stフルアルバム「Who are you?」、2009年11月に2ndフルアルバム「オーロラ」をリリース。2010年3月には初の日本武道館ワンマンライブを開催した。2011年4月には3rdアルバム「PASSENGER」、7月にシングル「手をたたけ」、12月に4thアルバム「HUMANIA」を発表し、それぞれの作品でバンドの新たな音楽性を提示する。2012年には幕張メッセイベントホールでワンマンライブを実施し、成功を収めているほか、「夏の大三角形」「夢1号」というシングルを2作発表。2013年3月にシングル「Mr. ECHO」、4月に5thアルバム「Shout to the Walls!」、7月にシングル「ニワカ雨ニモ負ケズ」を発表。2013年2月にキャリア初のベストアルバム「ニコ タッチズ ザ ウォールズ ノ ベスト」をリリースした。なお8月には2度目となる日本武道館単独公演を控えている。