ナタリー PowerPush - NICO Touches the Walls
ありのままをさらけ出した3rdアルバム「PASSENGER」
NICO Touches the Wallsの3作目となるアルバム「PASSENGER」がリリースされた。2010年はライブ三昧の日々を送り、その合間にレコーディングを重ねていた彼ら。そんな活動を経て完成した今回のアルバムは、バンド史上もっとも奔放でエネルギーに満ちたロックアルバムに仕上がった。
ナタリーでは入魂の新作を完成させたNICO Touches the Wallsのメンバーにインタビューを実施。前作「オーロラ」から今作に至るまでの日々と、アルバムに込めた思いをじっくり訊いた。
取材・文/中野明子 インタビュー撮影/平沼久奈
思っていたよりもカッコいいバンドになってた
──非常に中身の濃い、骨太なロックアルバムが完成しましたね。手応えはいかがですか?
古村大介(G) 確かに今まで以上に手応えはありますね。録っていてすごく楽しかったし、マスタリングが終わってから通して聴いて、このアルバムは間違いないなって。自分たちが鳴らしたいと思ってた音がそのままパッケージできたと思ってます。
対馬祥太郎(Dr) 俺も良いものができた自信があります。まっさらな状態というか、リスナー視点で聴いたときにまっすぐなアルバムだなって感じて。歌詞もサウンドも含めて、中身が詰まってて、心に訴えてくるような作品ですね。
坂倉心悟(B) 手応えで言うと今まで録った音源の中で一番ある。作ってるときのバンドの状態も良かったし、何よりも自分たちの成長が手に取るようにわかる。音圧感だったりグルーヴ感だったり。今までの音源の中で聴いていて一番気持ちいい。
光村龍哉(Vo, G) 僕も想像以上の仕上がりだと思ってます。自分たちが考えていたよりもはるかに成長しているということがわかったし。でも、去年の時点ではどんなアルバムになるか全然わからなかったんですよ(笑)。曲はたくさんあったけど、自分たちの思い描く作品になるか不安で。
──どんなイメージを描いてたんですか?
光村 とにかくライブの勢いを殺さないようにしたかったんです。ただ、勢いで作ったものが、納得できるものに仕上がるかどうかわからなくて。レコーディングが終わってから音を聴いて、前作と全然違うなって。自分たちが思っていたよりもカッコいいバンドになってるって気付いた。気持ち悪いくらい気持ちよかったんですよ、聴いてて(笑)。
古村 「気持ち悪いくらい気持ちいい」って感想、初めて聞いた(笑)。
音楽は自分たちの言葉であり手足なんだ
──今回のアルバムは、NICO Touches the Wallsというバンドの激しい一面やキャラクターが全面に出ていると思います。また、歌詞や音の端々にリスナーに伝えたい思いがほとばしっている気がして。
光村 ええ。今まではバンドのスケールをいかに大きくして、どれだけたくさんの人を巻き込めるかということを考えてたんですね。自分たちのキャパシティを大きくすることを重視して、“木を見ず森を見てた”というか。だけど昨年3月の武道館公演がターニングポイントになって。過去最大規模の会場でたくさんのお客さんに囲まれて、そこで初めて自分がミュージシャンだって認めてもらえたような気がしたんです。そのときに、目の前に人がいて、その人と音楽を通じてコミュニケーションをすることがいかに大切かということを実感して。
──これまでは人に聴かせることよりも、音楽を作ることが先だった?
光村 そうなんですよ。自分たちという存在以前に、とにかく曲を残したかった。極端なことを言えば、自分たちが奏でる必要もないとも思ってたところがあったし。でも武道館でライブをして、NICO Touches the Wallsは俺らがやってることなんだ。音楽が自分たちの使う言葉であり、手であり、足なんだってことを自覚しましたね。
──音楽と自分が一致したということでしょうか?
光村 ええ。音楽を通して自分という人間を知ってもらってる実感が出てきた。
──その感覚はバンド全体で共通しているものですか?
坂倉 はい。ただ曲を奏でているだけじゃなくて、今は自分たちを見ながらプレイできている感じがありますね。以前とは違う感覚でステージに立つことで、過去の楽曲も響き方が変わってくるし。それは身近なスタッフも気付いてくれてうれしかった。
──自分たちを見るというのは具体的には?
坂倉 この4人である意味を考えたり、4人だからこそ鳴らせる音を鳴らそうと思ったり。NICOってこの4人でやってるものだっていう前提が、自分たちの中にちゃんと根付いた。それが武道館以降のライブにも、今回のアルバムにも影響してると思います。
NICO Touches the Walls(にこたっちずざうぉーるず)
2004年4月に光村龍哉(Vo, G)、古村大介(G)、坂倉心悟(B)の3人で結成。同年7月に対馬祥太郎(Dr)が加入し、現在の編成となる。2005年から渋谷と千葉・柏を中心にライブ活動をスタートさせる。2006年2月に初のミニアルバム「Walls Is Beginning」をインディーズレーベルから発表。その後「SUMMER SONIC」「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」などの夏フェスやライブイベントへの出演を経て、2007年11月にミニアルバム「How are you?」でメジャーデビューを果たす。2008年9月に1stフルアルバム「Who are you?」、2009年11月に2ndフルアルバム「オーロラ」をリリース。2010年3月には初の日本武道館ワンマンライブを開催し成功を収める。エネルギッシュなライブパフォーマンスに定評があり、多くのリスナーを魅了している。