ナタリー PowerPush - NICO Touches the Walls
本能剥き出しの攻撃的キラーチューン完成 新曲「サドンデスゲーム」が明かすバンドの現状
NICO Touches the Wallsの2010年第1弾シングル「サドンデスゲーム」がリリースされた。今年3月の初の日本武道館ライブ、そして初夏に行われた新曲披露ツアーを経て発表される本作は、バンドの攻撃性を押し出した骨太なロックチューン。カップリングには「サドンデスゲーム」各パートのマイナスワンテイクや、日常感あふれるミディアムバラード「泣くのはやめて」が収録され、付属のDVDにはレコーディングのリハーサル映像が収められるなど新たな試みを凝縮。NICO Touches the Walls新章の幕開けを告げるような濃厚な作品に仕上がっている。
ナタリーでは新作の発売を記念してメンバー4人にインタビューを実施。新曲「サドンデスゲーム」が誕生した経緯をはじめ、武道館公演以降のバンドの状況や変化を率直な言葉で語ってもらった。
取材・文/小野島大
ビョーク×ブラック・サバス=「サドンデスゲーム」!?
──今作はかなりアグレッシブな仕上がりですね。この曲ができたきっかけを教えてください。
光村龍哉(Vo,G) 去年の5、6月に合宿したときのセッションでイントロができて。最初はそのイントロのフレーズだけで延々セッションしてたんです。そのイントロでビョークの「Hunter」の生バンド版みたいなものをやりたいなって。
──ビョーク? 全然違う気もする(笑)。
光村 ええ。単にスネアとかドラムとかの連打みたいな。ああいうカッコいい冷たさを出したいっていうのから始まって、そのイントロの雰囲気だけで何十分もセッションしてたんです。さすがに曲にしなきゃねって言い出したのが今年の初めで。みんなでいくつか新曲の狙いを定めてスタジオに入ったときに、僕の頭の中にあったコード感をみんなで検証しながら、自分が面白いと思うコード進行だったり、新しい試みを詰め込む曲にしようと。やるって決めてから完成は早かったですね。4日ぐらいでできました。結果的に最初の構想からは全然違うものになったんですけど。どんなサビがくるのがいいのかなって、プロデューサーの岡野(ハジメ)さんとスタジオに入ってたら、岡野さんの中で空前のメタルブームが来てて「メタルを制す者が音楽を制す」みたいな話になって(笑)。僕もちょうどその時ブラック・サバスの「Paranoid」を聴きまくってた頃だったので、70年代のブラック・サバスがやりそうなサビを当て込んでみたらどうですかね、みたいな話をしたら岡野さんも盛り上がって。
──ビョークとブラック・サバスの合体!
光村 そうなんです。その間をどう行き来するかみたいな。最初はめちゃくちゃだなって思いながらも、バンドで合わせてたらだんだん盛り上がってきて、これはこれでありなんじゃないかなって。最初はもっと冷たい雰囲気で終始終わらせようとしてたんだけど、これでいいってところで落ち着いて。
──さっき新しい試みをしたいって言ってましたが、そういう気分の時期だったんですか?
光村 常にそういう気分はあるんですけど自分の中でわりとステディに書けた曲があったら、次は掟破りな曲を作りたいとか。そのへんを行ったり来たりしながら曲作ってるんで。新しい試みをしたいという思いは常にありますね。
セッションじゃないと化学反応が起きない
──曲を作るときはセッションで作ることが多いんですか?
光村 なるべくセッションで作るようにしてます。楽曲のイメージは僕の中にあるんですけど、そのイメージどおりにしようとは思ってなくて。スタジオで僕がギターを弾いて、それに皆が乗ってきてという形を大事にしたい。
──きっちりデモテープを作るほうではない、と。
光村 チャレンジしたことはありますけど、いまいち化学反応が起きないなぁって感じで。
──皆さんもセッションでやったほうがやりやすいですか?
古村大介(G) 曲によりますね。「サドンデスゲーム」は、みんなであわせて気持ちがいいっていうところから入ってたんで、どうしようかって言いながらセッションやるのが合ってましたね。
坂倉心悟(B) この曲に関して言うなら、曲のテンポとコード進行だけを決めて、ガッとあわせただけの曲なんでセッションで良かったですね。あんまり考えずにこういうのが弾きたいってのが、すごく見えたんですよね。
対馬祥太郎(Dr) 基本的にウチらの曲のネタはみっちゃん(光村)が持ってくるんですけど、まずドラムがないと、セッションでどうなるかっていうのがわからないんですよね。
──リズムから決めるということですか?
対馬 そうですね。そこを決めてから、2人(古村と坂倉)がアレンジしたり、入ってきたりするんで。みっちゃんも曲を持ってくるときは、リズムがすでに頭の中にあったりするんですけど、ちょっと俺がミスったりしたのを「それいいね」って拾ったりもするし。
──光村さんは曲はどんな流れで作るんですか?
光村 僕はイントロから作っちゃいますね。じゃないとAメロもサビも出てこない。
──ほぉ。それはすごく正しいロックバンドのあり方ですね(笑)。
光村 それはバンドを始めてからですけどね。前までは結構脳内作曲じゃないですけど、頭の中でサビも歌も歌詞もできあがってからバンドに持っていったんですけど、それがこの4人でスタジオに入ってると、僕のイメージした以上のビートが聞こえてきたりすることが多くなって。「サドンデスゲーム」はイントロのイメージから始まって、セッションをする中で転がるようにできましたね。
武道館に立って自分の中でひとつケリがついた
──この曲は演奏する喜び、気持ちの良さみたいなものが伝わってくるんですよ。NICOって始めに歌ありきというよりも、まずはバンドで演奏する楽しみや気持ち良さを追求してるんじゃないかという気がしたんですけど。
光村 そういうのから逃げられないなと、この曲ができたときに感じましたね。インディーズの頃はやりたい曲のイメージとか、自分が挑戦したい曲のイメージをハッキリ持ちながらやってたんですけど、その傍らでバンドで演奏する楽しみからできる曲もあったりして。その両方がごっちゃになった感じがあったんですよね。当時はそのちょっとねじれた状況が気持ち悪くて。どちらかと言うと作為的にいろんなことをやりたかったから、バンドの本能的な部分をあんまり認められなかったんです。やってて楽しいけど、別に俺らがやる必要はないだろうと。そういうジレンマがあって、ライブでもテンポがアッパーなものはやりたくないって思ってました。
──それよりも歌を聴かせたいって思ってた?
光村 ええ。で、いろんな曲のシナリオを作っていったりして。去年出した「オーロラ」くらいまでは自分のシナリオの流れの中だったんだけど、ここにきてそれが自分の中でケリがついたというか。自分が思い描いていたNICOとしての欲求が満たされたアルバムが「オーロラ」で。そうしたら、このバンドって演奏してても楽しかったよな、みたいな、そういう思いがふつふつと沸き上がってきて。アルバムを作って武道館までのツアーが終わって、自分たちがそれまで抱えていた“お約束”みたいなものを1回忘れて曲作ってみようと。それで新曲をいろいろ試すツアー「ミチナキミチ」をやってみたら、今まで以上に制約がなくて。これはこれで楽しいんだというのを感じて。
──武道館までは自分の世界観を作り上げることに関心があったけど、それがもっと「ナマなバンドらしさ」みたいなものに目が向いてきた?
光村 作り込まなくても自分たちらしさが出せるかなと。それぞれが伸び伸びやって、4人が集まったら自然な化学反応は起きるんだなと。それが何にも代え難い他のバンドとの違いだったり、NICOにしかできないものなのかなって。バンドとしての意義みたいなものに自覚的になってきたし、今は現場で鳴ってる音を重視するようにしてます。だから「サドンデスゲーム」は今ある曲の中では一番演奏する喜びを感じる曲ですね。
CD収録曲
- サドンデスゲーム
- 泣くのはやめて
-bonus track-
- Instrumental
- Instrumental (-Mitsumura Guitar)
- Instrumental (-Furumura Guitar)
- Instrumental (-Sakakura Bass)
- Instrumental (-Tsuhima Drums)
DVD収録内容
- 「サドンデスゲーム」レコーディングリハーサル映像(メンバー別マルチアングル)
- 「サドンデスゲーム」TOURファイナルLIVE Ver.@YOKOHAMA BLITZ 2010.06.12
NICO Touches the Walls
(にこたっちずざうぉーるず)
2004年4月に光村龍哉(Vo,G)、古村大介(G)、坂倉心悟(B)の3人で結成。同年7月に対馬祥太郎(Dr)が加入し、現在の編成となる。同年ヤマハのバンドコンテストに出場し、優勝に準ずる賞を獲得。2005年から渋谷と千葉・柏を中心にライブ活動をスタートさせる。2006年2月に初のミニアルバム「Walls Is Beginning」をインディーズレーベルから発表。その後「SUMMER SONIC」「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」などの夏フェスやライブイベントへの出演を経て、2007年11月にミニアルバム「How are you?」でメジャーデビューを果たす。2008年9月に1stフルアルバム「Who are you?」、2009年11月に2ndフルアルバム「オーロラ」をリリース。2010年3月には初の日本武道館ワンマンライブを開催し成功を収める。メンバー全員が1985年生まれと若手ながら、楽曲のクオリティの高さと演奏力に定評がある。また、エネルギッシュなライブパフォーマンスも多くのロックファンを魅了している。