狩りに行く父親の気持ちだった
──とは言え、きまるさんが加入するまでは集客的に厳しい時期が続いて。
ぺいにゃむ 長かったですよね(笑)。でも、1つでも楽しいことがあれば大丈夫だった。「イベントに呼んでもらえた。イエーイ!」って言ったら、メンバーやおなカマが「イエーイ!」って返してくれた。そんなことが1つでもあれば活力になってましたね。あと、いい意味での勘違い(笑)。いつかもっと人気が出ると信じてたので。
ミキティー メンバーを採用するとき、全員に「絶対にスターにしてあげる」と言ってたんですけど、けっこう信じてたよね。
ぺいにゃむ ミキティーの言葉には言霊があって、現実になっていくんですよ。「パラダイスに連れていくから」と言われたことがあったんですけど、その言葉がずっと私の根っこにあります。
ミキティー つらいことがあっても、イベントへの出演が決定したら全部吹っ飛んだよね。それは今でも変わってない。やりたいことをつかめなかった時期が何年もあったからこそ、イベントやこういうインタビューにすごくありがたみを感じる。今はメンバー同士で「あの時期があってよかったよね」とよく話してます。
──続けてこられたのは相当意志が強いか、もしくはイカれてたからですよね(笑)。
ミキティー ホントにそう! 私には振り付けの仕事から生まれたいろんな交友関係があったんですけど、陽が当たる日を待ち続けてくれたメンバーはすごくつらかったと思う。私は出稼ぎとか狩りに行く父親の気持ちだった。「仕事取ってくるから」って外に出て行って、「収穫なかった。次はがんばろう」ってとぼとぼ戻ってくる。
ぺいにゃむ ものすごくがんばっていたのに、実りもなく戻ってくるミキティーの姿を見るのもつらかった。かといって自分たちには何かできる実力もなかったので、不甲斐なさも感じてました。
ミキティー あの時期は振り付けの仕事をやりながらセトリ決めや音源の手配など何もかも自分でやってたんですよ。メンバーは頼ってほしいと思っていただろうけど、自分でなんでもできるようにならなきゃと感じていた時期で、その頃に今の形ができていった気がする。私がプロデューサーで、2期、3期、4期と序列があるっていう。今はみんなでいろいろと分担できるようになったよね。
白鳥 ミキさんがほかの人に任せることが増えてきたのは、本当に最近なんです。
ミキティー 昔は何も頼まなかったよね。最近はメンバーにいろんなことをお願いできるようになった。
なりたかったのはミキティー本物にプロデュースされる白鳥白鳥
──時系列を戻しますね。つらかった時期が長く続いたあと、きまるさんと白鳥さんが同じタイミングでオーディションを受けに来たんですよね。
ミキティー そうです。それまでメンバーだった百恵ちゃんが辞めることが決まって、満を持してオーディションをやったんですけど、絶対にいい人が来るだろうなと思っていたんですよ。溜めに溜めてのオーディションだったので。
──グループの名前が徐々に広まってきた段階でのメンバー募集でしたね。
ミキティー 全国から30人くらい集まりました。7人からちょっと増えた(笑)。白ちゃんときまるくんは2人共最終選考まで残ったんですけど、同期にしたらダメだと思ったんですよ。年上の白ちゃんは猫かぶってて、この子が同期や先輩になったら年下のきまるくんが大変な思いをすると感じたんです。逆にきまるくんは本当にヘタレで、その場しのぎで返事をするような子だったので、この子は先輩にならないと成長しないと考えました。いい具合に逆転させたほうが両方の悪い面がなくなるなって。完全に戦略だったんだけど、それがめちゃくちゃうまくいったの。
──だから白鳥さんを一度落としたと。でも、そのあと戻ってくるかはわからなかったんじゃないですか?
ミキティー いや、落としたときに理由を聞いてきたんですよ。それで全部言ったんです。「その髪型、髪色、メイク、喋り方が嫌だ」っていろいろ。それから5回くらい会いに来たよね? 「見てください。変わりました」って。
白鳥 ふふ。
ミキティー 覚悟があったの。それで次の「白鳥白鳥オーディション」(我こそが白鳥白鳥だと思うゲイを募集したオーディション)にも来て。でも、最後の最後まで悩んでたんですよ。一緒に生活してやっていけるかどうかが大事だったので。「私の言う通りにすることは大丈夫なの?」って聞いたら、「私がなりたいのはアイドルじゃなくて、ミキティー本物にプロデュースされる白鳥白鳥なんです」と言ってくれたので、この子にしようと決めたんです。
オーディションに落ちたあと、勝手に上京
──きまるさんと白鳥さんがオーディションを受けたきっかけはなんだったんですか?
きまる 何かしら仕事をすれば生きていけるだろうと考えていた中、唯一なりたい職業がアイドルだったんですよ。でも、いろんな女性アイドルや男性アイドルを見ても、憧れる対象が自分の性別と一致しない部分もあって。「自分はアイドルになれないんだ」と思ってた時期に、ちょうど二丁ハロに出会ったんです。ゲイでありつつ、ちゃんとアイドルとして活動しているという点で輝いていて。私もこのグループに入りたいと思いました。たった1つの希望でした。
白鳥 私たちの理想とするアイドル像って、いろんな兼ね合いで自分では叶えられないものだったんですよ。女性アイドルのキラキラしたものにも、男性アイドルのキラキラしたものにも近付けない。ゲイアイドルとして何も隠さずにありのままで活動している二丁ハロは、私たちにとっては本当に唯一の希望だったんです。一度オーディションに落ちたとしても、どうにかしてここにすがり付かないといけないと思っていて。当時は関西で暮らしていたんですけど、とにかくそこまで人生を賭けてるんだという思いを見せなきゃと考えて、勝手に上京してきました。
ミキティー 勝手にだよ? びっくりしたよね。
──オーディションに落ちたあと、兵庫から上京して来たんですよね。
ミキティー 私は「こっち来たからってグループに入れないよ」と言ってました。
白鳥 きっと怖かったよね(笑)。あのときはがむしゃらすぎた。自分でも「なんでそこまでできたんだろう」と思う。そのくらい気持ちが強かったですね。
ミキティー 見た目を変えてきただけでなく、デザインの勉強をしていたので、フライヤーのデザインとかもプレゼンしてきたんですよ。「こういうのはどうですか?」って。それがすごいなと思った。今ではいろいろと二丁魁のデザイン周りを担当してもらっています。
白鳥 セルフプロデュースアイドルということで、私ができることを見せたくて。いろんなパターンでミキさんに詰め寄ってました。
ぺいにゃむ そのガッツは刺激になりました。「この子が入ったら私ももっとがんばらなきゃ」と感じたんです。
きまる うんうんうん。
白鳥 私の理想としているアイドル活動をやっているのが二丁ハロだけだったんですよ。一心不乱でしたね。
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ステージに何度も立つうちに人生が変わった