ステージに何度も立つうちに人生が変わった
──ちなみに、白鳥さんはきまるさんの入った3人時代の二丁ハロをどう見ていたのでしょうか。
白鳥 ニュースできまるさんの加入を知って、「私、落ちたの?」と思いました。
ミキティー 不採用の連絡をしなかったんだよね。
──ひどい(笑)。
白鳥 でも、「不採用の連絡が来てないので、落ちたわけではないのかも」というプラス思考でした。「まず1人目の合格者かな? まだ検討中の可能性があるかも」って。
ミキティー その1カ月後くらいに連絡が来たもんね。「どうなってるんですか?」って。
白鳥 オリジナル曲が少しずつ増えていって、ミキさんの書く歌詞や曲に乗せる思いを知って、私も「どうにか一緒に過ごしたい」と考えてました。そもそもオーディションを受けたいと思ったきっかけがオリジナル曲の「The frog in the well knows nothing of the great ocean ~カエルのうた~」だったんですよ。「この人はなんて歌詞を書くんだ」と衝撃を受けたんです。そこからいろんな曲を聴いていくうちに、「やっぱり二丁ハロじゃないとダメだ」という思いが強くなりました。
──きまるさんの加入がターニングポイントだったということはよく語っていますが、明らかに景色が変わっていくような感覚があったのでしょうか。
ミキティー それまではいろんなことが夢物語だったんですよ。イベントでほかのグループのライブが盛り上がっているのを見ると悔しかったけど、それはただ外から羨んでただけだったんです。3人になってからさらに練習し始めて、悔しさの質が変わっていって。「本当に負けたくない」と思うようになった時期でした。
ぺいにゃむ ほかのアイドルと同じ土俵に立ったうえでね。
きまる それまではアイドルさんのことを「素敵だな」という気持ちで見てきたんですけど、対バンでご一緒させてもらうとライバル心が生まれて、負けたくないという気持ちになって。そこから練習に取り組む姿勢も変わるようになりました。
ミキティー きまるくんは入ったとき、「こんなに歌えなくて踊れない人いる?」と思うくらいだったんですけど、鍛え上げたよね。きまるくんはまだ大学生で何も知らずに入ってきたのに、次から次へとあれこれ覚えさせられて、けっこう大変だったと思うんですよ。
きまる でも、ミキちゃんやぺいちゃんからこれまでの大変だった話を聞いているうちに、この人たちと一緒にやっていきたいという思いが強くなって。初めてがんばって成長することの意味を知った気がします。「この状況を手放したくない」と思うようになりました。
ミキティー ドラクエみたいだった。RPGで仲間が1人ずつ増えて行く感じがあった。で、白ちゃんに関しては最初から覚悟があったので。
──入る前から気合い入りまくりですもんね。
白鳥 実家から飛び出て、人生を賭けてしまったので。ミキさんも「あなたにはこれしかないでしょ?」という感じでした。
ミキティー 歌を聴いたときに絶対に必要な声だと思ったし、キャラクター的にも「この子しかない」という気持ちでした。
──グループの人数についてビジョンはあったのでしょうか。
ミキティー いや、そこに関しては歌で決めようと思ってた。きまるくんが入って3人組になって、「もしかしたらこれでいいのかな」と思ってたんだけど、CDが完成したときに「私が思い描いていた歌じゃない」と感じたんだよね。で、オーディションのときに白ちゃんに私たちの曲を歌ってもらって。4人で歌ってみたらマッチしたんです。歌ができあがった。
──音楽的なバランスなんですね。
ミキティー 顔とかじゃなくて声で決めた。
絶対に立ちたかった中野サンプラザへ
──4人になり、二丁目の魁カミングアウトと改名して以降の快進撃は多くの人が知るところですよね。
ミキティー これまでのことを思い返すと「楽しかったな」と思うけど、4人になってからは本当に日々戦いで。少しずつスケールが大きくなって、二丁目を飛び出して、いろんな人が関わるようになっていくでしょ。それはすごくプレッシャーだった。「ちょっとでもミスしたら私たちは終わりだ」と思ってました。勝手に崖っぷちを歩いてるような精神状態だった。
白鳥 道は広いのに崖の一番端っこを歩くような。
ミキティー 自信がなくて、「何事も慎重に進まなきゃ」という気持ちだったのかも。失敗したくなくて、歌もダンスもめちゃくちゃ練習したんですよ。基礎体力をつけるために筋トレもして。「誰にも負けないパフォーマンスをしなきゃ」と思うようになってました。
──緊張感の高さと自信のなさから練習量が増えた結果、パフォーマンスにどんどん説得力が増していって。
白鳥 二丁魁として発進したての頃はまだアルバイトで生計を立ててたんですよね。その頃は特にてんやわんやしてました。
ミキティー 家賃を稼ぐためにあの頃はみんなバイトしてたね。遠征から夜行バスで帰ってきて、そのままバイトに行ってた。
きまる あの頃は学生だったな。
白鳥 去年の春頃に「バイトを辞めました」って発表したんです。今は二丁魁の活動以外にない分、4人で気持ちを1つにできるのはありがたいことだなと思っています。
──この活動1本で自活できるようになったのはここ1年くらいの話なんですね。
ミキティー 本当にそうですね。4人になってからのここ2年間は、休みが年に1、2回くらいしかなかったんですよ。だから最近の私の中のテーマは、ちょっと休みも取るようにしてプライベートも充実させること。4人でディズニーランドに行ったことがあるんだけど、並んでる間に振りの確認をし始めちゃったりするんですよ(笑)。少しでも時間があると仕事の話になっちゃうので、もっとうまく休んだほうがいいなって。プライベートだからこそわかってくることもいっぱいあると思うので。だから休みの日は一緒にいない……けど、連絡取っちゃうよね(笑)。
ぺいにゃむ 「なにやってんの?」って。
白鳥 テレビ電話したり(笑)。でも、休みをもらって実家に帰ると、それまで芽生えなかった新しい感情に気付くんですよね。「ゲイアイドルとして活動してる」とおおっぴらに言ってこなかったんですけど、今は誇りに思っているので、同級生とかにも二丁魁を見てもらいたいなと思えるようになってきて。全然連絡を取ってなかった人に、ゲイアイドルとして活動していることを言ってみたんです。大きな一歩だなって思います。
ぺいにゃむ 胸を張って言えるようになったというのは確かにある。Zepp Tokyoのときの写真を見せれば、何をやっているかわかるし。
──「2000人のファンが集まってます」ということが一目瞭然ですもんね。
きまる ライブを観に来てくれた友達が感動してくれました。今は自分たちのライブに対して自信が付いてきました。
──来年の1月には東京・中野サンプラザホールでの単独公演が控えてますね。
ミキティー ホントにヒーヒー言ってる。もちろん満員にしたいけど、それ以前に夢のステージだから。
──ハロプロの振りコピをしていた人が中野サンプラザに立つということですもんね。
ミキティー 本当にうれしい。
ぺいにゃむ 二丁目の人たちに中野サンプラザでやるって言うとびっくりされるよね。「これは行きたい!」と言ってくれてます。
ミキティー Zepp Tokyoもそうだけど、中野サンプラザは絶対に立ちたいと思っていた場所なので今からドキドキ。あの大きなホールで、チケットの値段に見合ったゲイアイドルになれるかどうか。めちゃくちゃがんばります。1つ言えるのは、どんなに大きい場所でも、私たちが身近に感じられるようなステージにしたい。この8年間ずっと同じ気持ちで活動してきたので、二丁目でライブするのと気持ち的には変わらない。身近な私たちを観に来てください。