ナタリー PowerPush - ねごと
ふんわり4人組バンド 奔放さあふれるデビュー盤を語る
ひらがな3文字、そこから発案したバンド名が「ねごと」。大学生の女性4人によるそのサウンドは、オルタナティブ感をまといながらもポップ、かと思えばハード、ときにはサイケな瞬間もあって、さらにセオリーにとらわれぬコード進行や変拍子まで飛び出す。健やかで風通しはいいのに、どうにも1カ所に収まらない奔放さが、定型外にして新しいポップミュージックの胎動を感じさせる。
今回はバンドのここまでの歩みと、1stミニアルバム「Hello! "Z"」に秘められたその音楽の成り立ちをテーマに、4人に接見。飾らないキャラクターの彼女たちは、ゆるやかな笑いが絶えない会話の中で「ねごとらしさ」についてあれやこれやと語ってくれた。
取材・文/青木優 インタビュー撮影/平沼久奈
ねごとはもともとコピーバンドのつもりで組んだ
──まずねごとがどういう音楽をやろうとしてるのか、訊かせてもらえますか?
蒼山幸子(Vo, Key) ジャンルとかはないな、と思ってて……しぼってなくて。いろんな人に聴いてほしいから「こういう年齢層」とか「こういうジャンル」とかは全然決めてないんです。そのときやりたいなあと思ったものを詰め込んで曲を作ってる感じですね。
──じゃあ結成するときに「こういうバンドを目指そう」とか「こんな感じでやろう」みたいなのはあったんですか。
蒼山 いや、もともとねごとはコピーバンドのつもりで組んだので……ギターの(沙田)瑞紀が「世の中にある面白い曲をコピーしよう」ってみんなを集めてたので、「プロになろう」とか「こういうバンドになろう」ってビジョンは全然なくて。ほんとに楽しいからコピーばかりたくさんやってたんです(笑)。
──その高校生当時にコピーしてたのは、どんな音楽なんですか。
蒼山 洋楽を主にやってて……THE CRIBSとかTHE FRATELLISとかYEAH YEAH YEAHSとかARCTIC MONKEYSとかTHE VINESとか。
──それはメンバーみなさんが好きだったバンドの……?
澤村小夜子(Dr, Cho) (即座に首を左右に高速で振る)知らなかった! 全部知らなかった。
沙田瑞紀(G, Cho) 言い出しっぺの私がホントに自由なので(笑)「これをやりたい!」ってみんなに言って聴かせたんです。みんなでいると、なんでも「いいね!」って盛り上がれるんで(笑)。
蒼山 で、「楽しそうだから、やってみよっか!」みたいな感じで(笑)。
──J-POPとか日本のロックは選ばなかったんですか。
蒼山 ねごとの前身バンドがあって……そのときはベースの(藤咲)佑はいなくて、この3人プラス違うメンバーでやってたんですけど。そこでは邦楽のコピーもやってました。だからそういう道も一応通ってきてはいるんですけど……でも洋楽は楽しそうだったから。
沙田 何も考えずに。はい。
──そこで沙田さんが洋楽をやろうと思ったのはなぜだったんですか。
沙田 洋楽にハマってたからです(笑)。だからバンドで合わせたら楽しそうな曲をあらかじめ自分の中で考えてたんですね。それで「やるとしたらこのメンバーかな」みたいな人たちを再び集めたんです。前身バンドの流れでもう1回やろうよ、みたいな。別に仲悪くて解散したわけじゃなかったから(笑)。それでみんなにメールを送って。
蒼山 ふふふ。「やろうよ~」みたいなのが来たんです。その後、やりたい曲を30曲くらい聴かせてくれたんだけど、どれも知らない曲で(笑)。「こん中からこれとこれとこれコピーしてきて!」みたいな感じでしたね。
カバーするときのワクワク感と曲を作るときのワクワク感は同じ
──そのバンドが「閃光ライオット」に応募することになったということは、コピーバンドからオリジナルをやるバンドに発展したんですか。
蒼山 「閃光」に応募するのをきっかけにオリジナルを作りだした感じです。でも「閃光」への応募もホントに「高校の思い出作りになるかも」「3年生の最後の思い出になりそう!」みたいな気持ちでしかなくて。それに、野外でライブしたいって思ってたのがあって、それが一番魅力的で応募したんですね。オリジナルは、前身バンドのときに作ったことはあったんですけど……ホントにちゃんと作ったのは、このタイミングが初めてなのかな。
──コピーをやってたけど「オリジナルも作れるかも」と?
蒼山 んー、なんて言うか……別に、全然、何も気負ってなかったんです(笑)。「いい曲にしよう」とか「すごい名曲を」とかは全然考えてなくて。面白いことをどんどん入れてサウンドを作ってくっていう、カバーするときのワクワク感と、曲を作るときのワクワク感は同じだったから。
──でもオリジナルとなると、何もないところから自分たちのアイデアで作らなくちゃいけないですよね。
沙田 うーん……(曲を作るにあたりいろいろと)考えてたから。
蒼山 どうなんだろうね。「ループ」は結構すぐにできちゃったんで。あんまり練ったりはせずに。はい(笑)。
沙田 「ここで何回キメをやったらサビに移りまーす!」みたいな感じで(笑)。
蒼山 そうそうそうそう(笑)。もう、どんどん進めちゃうんで。「はい!」「ワン、ツー、スリー、いいよ!」「はい、さっちゃん歌って!」みたいな感じ(笑)。
──沙田さんはかなり先導するほうなんですね(笑)。
沙田 練習中は、私がリードして話を進めちゃいます。
──なるほど。練習以外の場では?
沙田 練習以外???……(笑)
(全員笑)
沙田 ……普通?
蒼山 リードはしてないです(笑)。
ねごと
蒼山幸子(Vo, Key)、沙田瑞紀(G, Cho)、藤咲佑(B, Cho)、澤村小夜子(Dr, Cho)から成る4人組バンド。高校2年生だった2008年1月に結成し、春に開催された「閃光ライオット2008」に応募。予選を順当に通過し、8月に行われた決勝大会に進出。審査員特別賞を受賞する。同年11月に発売された「閃光ライオット2008」コンピレーションアルバムにも、大会で披露した楽曲「ループ」で参加する。その後勉強に専念するため一時ライブ活動を休止するも、2009年9月に本格活動開始。2010年2月より行っている自主企画「お口ポカーンフェス?!」も毎回好評を博している。2010年9月29日、1stミニアルバム「Hello! "Z"」をKi/oon Recordsよりリリース。