出ない音域に挑戦してみる

──アルバムには新曲3曲も収録されています。レコーディングはどうでしたか？

本多　歌に関して言えばギリギリでしたね。例えば「未来は僕等の風が吹く」とかは自分の限界値を超えてるんで「ウォーウォー」ってところ、ちょっと低い声で歌ってたんですよ。そしたら成田くんは容赦しないんで「アントンさん、音程合ってなくてもいいんで、高いところ歌ってください」って言うんです。「えー？」と思いましたけど、トライしてみたらそれが意外とよかった。自分としてはあきらめてたのに「まだできる」ってことを客観的にわかってる人がいるのがすごいなと思って。

チャン　私は初めて自分に合うキーの曲が来た！と思いましたね。しかも自分が求めてるエモさも詰まってて最高です。

──じゃあこれまでの曲は、チャンさん本来の音域じゃないところで歌っていた？

チャン　そうですね（笑）。曲をもらったときはこんな高いの無理だよって思うんですけど、でもがんばってやるしかないんで。こんな豪華な作家さんに書いてもらって、私のキーに合う合わないとかどうでもいいわ！と思って、練習していくうちに意外と出るようになりました。

──その点、塚本さんは高音域は得意ですよね。

塚本　いや、でも今回の新曲はびっくりするぐらい高かったです。夏の魔物はやっぱり気合い！根性！っていうか、超えるべき試練をいつも成田さんが与えてくれるので、こっちも「やったるぞ！」って気合いを入れて自己最高を更新しました。

──成田さんはメンバーにも作家陣にも、いつも相当無茶なリクエストをしてるんですね。

成田　そこは否定できないですけど（笑）、みんなのいいところが出るように常に心がけています。きっとやってくれるっていう信頼が全員に対してあるんですよね。誰1人として妥協しないで作ったからこそ、この作品ができたんだと思うんです。

目標は東京オリンピック

──今後、夏の魔物はどこを目指していきますか？

成田　あの、リオオリンピックの閉会式にキャプテン翼、ドラえもん、マリオ、パックマンとか出てきたじゃないですか。あれを観て、自分たちもあそこにいきたいなって思いました。

塚本　じゃあ2020年？

成田　うん、まだ4年あるし（笑）。でも俺たちが表現してるのって実際そういうものだと思うんですよ。音楽だけじゃなく、ガンダムやエヴァンゲリオンの影響も受けてるし、プロレスの要素もあるし。そういう表現を妥協なくやっていきたいし、とにかく続けていきたい。……って、なんか恥ずかしいですね、こういう真面目な話（笑）。

チャン　こういうときしか聞けないんですよ、成田さんの本心。

──そうなんですか？ メンバー間で夢や目標を語ったりは？

塚本　ないですないです（笑）。

本多　普段はまったく存在感ないですからね。

チャン　ない！ 「みんなでがんばろう！」みたいなのも言ってもらったことないね。

──それでも皆さんは成田さんについていこうと思えているわけですよね。

チャン　うん！

本多　いやー、面白い経験できてますからね！

大内　この6人でステージに立ったときに「世界に見せつけてやるぜ」みたいな気持ちになるんですよ。全員が夏の魔物のために前を向いて、このメンバーで一緒に作っていく、戦っていくっていう本気をすごく感じるんで。

塚本　私も自分に自信があるタイプではないんですけど、夏の魔物の活動だけはすごく自信を持ってできてる。たくさんの人に見てもらいたいし聴いてもらいたい。

大内　やっぱり仲間に対する自信と信頼がないとステージで戦えないですから。

──あれ、成田さんちょっと照れてます？

成田　感動してます（笑）。昔はずっとうまくいかなくて、悔しいことやつらいことばっかりたくさん経験してきたのに、今メンバーとこんな話ができてるのが、なんか不思議だなって思って。

──じゃあ今は自分のやってることに自信が持てている？

成田　自分はともかく、メンバーに対する絶対的な信頼があるんで、今の夏の魔物にはすごく自信があります。どこに出ても恥ずかしくないと思ってます。なんていうか、レコーディングでもライブでも、引き算ができるようになったんですよ。以前はラーメンにトッピング全部入れるみたいな感じで、とにかく欲張って詰め込んでたけど、今はどう作れば理想の形になるかがはっきり見えるようになったんで。

──アイデアは枯れませんか？

成田　枯れない！ 生きてる限り枯れないです。あとはレーベルとの契約が続いてくれれば大丈夫です！（笑）