NAMBA69が5月15日にニューアルバム「CHANGES」をリリースした。
2014年12月にリリースされた1stフルアルバム「21st CENTURY DREAMS」以来、約4年5カ月ぶりのフルアルバムとなる今作。彼らは“極力ライブで再現できる音”というこれまでの制作方針を一転、オーバーダビングを重ねるなど新たなサウンドメイクで作品としての完成度の高さも追求した。音楽ナタリーでは、2016年6月に加入したko-hey(G, Cho)とオリジナルメンバーの難波章浩(Vo, B)に、現体制に移行後のバンドのモードやアルバム「CHANGES」に込めた思いを聞いた。
取材・文 / 阿刀“DA”大志 撮影 / 西槇太一
ko-heyが加入して熟成したNAMBA69
──今回、なぜ2人でインタビューに臨むことになったんですか? というのも、「CHANGES」はNAMBA69というバンドの勢いがかなり増している中でのリリースで、内容的にもかなり手応えがあるはずです。そういうタイミングでのインタビューには全員で参加するのかなと思っていました。
難波章浩(Vo, B) まあ、K5(G)が全然話さないからっていうのもあるんだけど(笑)。
──あはは!(笑) NAMBA69は他媒体のインタビューでもメンバー全員か難波さん1人という形がほとんどですよね。
難波 振り返ってみるとそうだね。3年前にko-heyが入ってから、徐々にバンドが熟成されたのかもしれない。ko-heyはあとから入ってきた立場だから、制作とかライブではもちろん遠慮はなかっただろうけど、こういう場ではサンちゃん(SAMBU[Dr])とK5を立てて、控えめにしていた部分はあったかもしれないね。だけど今は下手したら俺もいらないんじゃないかって思うぐらい、ko-heyに任せられる部分が大きくなってきたんだよね。
──ko-heyさん1人でもインタビューが成立するぐらい。
難波 むしろそうなってほしいと思ってる。
ko-hey(G, Cho) チームからはよくそういう話をしてもらってるんですよ。だけど俺はビビって、「いや、リスナーは難波さんの言葉を待ってますよ! まだ1人じゃつらいです」って(笑)。
難波 だから、「ko-heyがNAMBA69の顔です!」って言えるようになったときこそ、俺たちは本当にブレイクしたって言えるのかな。
──真の意味でNAMBA69になるという。
難波 「バンド名を変えたほうがいい」って周りのバンドマンから言われたこともあるんだけど、これまでいろんな出来事があったからこそこのバンド名になってるから、俺の名前が付いてはいるけど、そこを越えたときに4人が対等になるんじゃないかなって。
──ただ、越えるべき壁としてはとんでもない高さですよ。
ko-hey 今の話はアルバムのレコーディング中にもしていて、「NAMBAって付いてるけどさ、俺がいるからじゃなくて、『NAMBA69のボーカリストは難波っていう人なんだね』っていうところまで持っていけたら勝ちだよね」って。
メンバーの役割がはっきりした
──ここまで話を聞いていて感じたんですけど、昨年Ken YokoyamaとスプリットCDを出したときに比べて、2人がまとう空気感がよりポジティブになっている気がします。
難波 感じる? 本当? 今回の曲作りはko-heyがアイデア出しとか打ち込みといった作業を相当やってくれて、今までだったらko-heyは先輩のメンバーに遠慮してたんだけど、今回は「ギターアレンジは任せろ!」って感じになったし、K5もko-heyに任せる空気になって、完全にメンバーの役割がはっきりしたことも今のko-heyのバイブスにつながってるのかもしれない。俺もすっきりした部分があるし。
──なるほど。
難波 バンドってメンバー全員がガチガチにストイックになってもうまくいかないし、実際に俺はそういう経験があるから(笑)、K5みたいに落ち着けるキャラがいるとホッとするんだよね。
──潤滑油的な。ko-heyさんは自分の役割をどう考えていますか?
ko-hey つい最近思ったのが、難波さんと俺がバンドの色を付けて、その動力となるのがサンちゃんで、バンドの世界観を表現するのに重要なファクターとしてK5くんがいる。それがベストなポジショニングなのかなって思ったんですよね。
難波 今までは俺が1人でバンドの色付けを担っていたけど、ko-heyという、もしかしたら俺以上かもしれない才能が来て、やっとバンドがまとまったのかなって。
目立ちたくない難波章浩
──難波さんとしては肩の荷が下りて、曲作りやライブに対してより自由に臨めるようになったんじゃないですか?
難波 そう! やっぱり、もともと俺はボーカリストじゃないし、フロントマンじゃないんだよね。
──それ、以前から言ってますね。
難波 こないだ出演した「Love music」(フジテレビ系の音楽番組)もすごくいい映像だったんだけど、客観的に観ると、俺はやっぱり真ん中に立つ人じゃないんだよねえ……。
──これまで何十年も立ってきたのに!(笑)
ko-hey そうそう!(笑)
難波 俺はすごい人が横にいることで成立するのかも。過去を振り返ってみるとずっとそうだったな。常に誰かすごいヤツが俺の隣にいた。昔入ってたバイクのチームにも本気でヤベえヤツがいたのよ。俺よりも喧嘩が強くてカッコよくて、そいつと一緒に何かをやるって感じだったんだよね。
──自分と対になる存在がいて初めて輝けると。
難波 そうかもしれない。俺、ロックスターとかカリスマみたいな存在にはなり得ないし、もともとなろうともしてないっていうか。ぶっちゃけ言うと、目立ちたくない。
──今の発言、全パンクファンが笑うところですよ。
ko-hey あはは!
難波 そう?(笑) そこはモッズ気質っていうか、本当は仲間内だけで「俺、ヤベえだろ?」って言ってるだけでいいんだよね。
ko-hey 最近、難波さんのそういうところを感じることが増えてきましたよ。俺からすると難波さんはスターだし、フロントマンであるべき人だし、いわゆるカリスマ的な部分を感じることも多々あるんですけど、実は影で暗躍してこそ輝くのがこの人の本領なのかなって思うことがあるんですよ。誰かを前に行かせて、自分は後ろで牛耳るというか。
難波 普通のあんちゃんなんだよ。
──ああ、それはわかります。難波さんは音楽と関係ないところでも、「お前行け! お前行け!」ってよく周りの人をけしかけていますよね。
難波 ああ、そうだね(笑)。サッカーでもパスを回すタイプで、トップではなかったから。
──じゃあ、ko-heyさんが今こうして存在感を発揮してきたことで、難波さんは本来自分が向いている立ち位置に収まることができていると。
難波 できてるできてる! ライブを観ればわかると思うけど、ko-heyはすごく突っ込んでくるし、制作に関しても遠慮ないし、妥協なんて絶対しないんだよ。今回、アルバムのミックスをアメリカのエンジニア、ウィル・プットニーさんにやってもらったんだけど、そのチェックも俺が納得できるレベルまでko-heyがやってくれたからね。今までだったら俺が最後まで責任を持ってやらないといけなかったから、そういう意味では肩の荷が下りたかな。
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