ここまで音楽で遊べたのは初めて
──今作「CHANGES」に詰まっているパワーはすさまじいですね。
ko-hey 制作の前に難波さんに言われて吹っ切れたことがあって。前作まではライブで再現できないことは極力やらないようにするっていうのが大前提としてあったんですけど、今回は「作品として聴き応えのあるものにしよう。オーバーダブしまくってギターの重なりで聴かせる曲があってもいいと思う」と難波さんから言われて、その言葉をきっかけに頭をフル回転させたっていうのはありますね。
難波 今まではko-heyとK5のギターの音は左右でばっちり分かれてたからね。
ko-hey でも今回は「誰が何を弾いてるわからないようにするのも面白いと思うよ」って。
──今の話を聞いて腑に落ちました。今回はアレンジがとても自由ですよね。
難波 自由だね。さっき言われた今作のパワーっていうのは“自由”なんだと思う。すごく遊んでるし、やっと遊べるようになったんだよね。これまでの自分のキャリアでここまで音楽で遊べたのは初めて。曲作りの期間もすごく短くて、実質2カ月ぐらいだったし。
──それはすごいですね。
ko-hey 事務所に集まってダベりながら曲作りをすることもよくあって、1日でネタが3曲分もできるような状態が続いたんですよ。
──そういう環境での曲作りはリラックスできるし、より自由にやれそうですね。
難波 お菓子食べながらね。そこでサンちゃんが「ええやんええやん!」みたいに入ってきたり。
──それだけ短期間で作ったのに、曲に振り幅があるのがすごいです。
ko-hey しかも今回は、作ったけど録らなかった曲が2、3曲ありますからね。
難波 車で聴くといいんだよ。フルアルバムって長いからいいよね。
──発言がリスナーみたいですよ(笑)。
難波 もう毎日聴いてるからね! ここまでくると自分のバンドの音源だから聴いてるって感じじゃないんだよ。パンクロックなのか、ハードコアなのか、カテゴリーはどうでもよくて、なんかすごいアルバムなんだよ。
──わかります。リスナーはいろんなカテゴライズをすると思うんです。パンク、ハードコア、イージーコア……だけどそれは重要なことではなくて、それ以上に“NAMBA69の音”になっている。
難波 そういうふうになったね。ko-heyが入る前は、俺がFOUR YEAR STRONGが好きだったから、ブレイクダウンとかにチャレンジしてたのよ。でもそうすると、感覚がちょっと早いネットの奴らに「なんで難波がそんなことやってんの?」みたいな嫌味を言われたりして(笑)。だけど今はそんな連中も「ヤバい」って言ってくれてる。
──ミックスもかなりいいですね。
難波 ドラムがデカくて、ベースもローが効いてて、低音を聴かせるっていう時代がアメリカを中心に2、3年前ぐらいにあったのよ。だけど今は流行が変わってきて、ポップに生々しく聴かせるようになってる。これまでハードコアなバンドをたくさん手がけてきたウィルさんがそっちの方向に行ったことに驚いたね。
──迫力はあるけど、耳が疲れない見事なバランスで。
難波 ローがすごいとかエッジがすごいっていうことじゃないんだよね。レコーディングをしてくれた松金さん(MEGA HYPER STUDIO)とのコンビネーションがすごくうまくいったんだと思う。
心からNAMBA69が最強だと思う
──話は戻りますが、今回はどういう作品を目指していたんですか?
ko-hey 「フルアルバムだしやりたいことをやろう」っていうことですね。あと、難波さんの根本には「ヤベえことをやってるヤツが一番強い」っていう考え方があって、そのことしか頭になかったです。だからアルバムとしてどうするかっていうのは考えてなかったですね。
──その「ヤベえ」をもうちょっと説明すると?
難波 俺が思う「ヤバさ」は、今までになかったもの、新しいものだね。たとえスリーコードのロックンロールだとしても、音楽性がどうということではなくて、それが新しいと感じられるものならカッコいいんだよ。
──なるほど。
難波 今まで俺はインタビューで「今が最強です」って言ってきたけど、実は強がってた部分が多々あって。だけど今回はついにその状態を抜けたね。今、俺はNAMBA69が最強だと心から思えてるし、周りにもNAMBA69が最強だと思って集まってくれるヤツが何人かいるから、もうそれで満足なんだよね。
──それはさっき話していたことにもつながりますね。
難波 そうだね。ここから先はもう狙ってやることじゃないんだよ。もちろん、好きって言ってくれる人がもっと増えるならうれしいし、そういう気持ちに応えたいって思うけど、今回ヤベえ音源を作った、ヤベえライブができるようになった。それでもう俺の中では完成しちゃってるんだよね。今回はHi-STANDARDで得る感覚を超えるぐらいのものがあって、これはko-heyが来てくれたおかげだと思う。
ko-hey 俺は難波さんから、「とりあえずトライしようよ」という姿勢を学びました。ロックって変わらない強さも大事だと思うんですけど、殻をぶち破っていく強さも大事だと思っていて。例えば、「JAW」の頭にブレイクビーツが入ってるんですけど、これは俺がやりたいって言い出したんです。「マッド(THE MAD CAPSULE MARKETS)みたいだねって言われるようなことを今やりたい!」って。あと「A FOREVER DREAMER」は、楽器を全部録り終えた段階で難波さんが「シンセほしいなあ!」っていきなり言い出して、そこから俺が思いついて、次の日にシンセを入れたバージョンを用意したり。
──その2曲のシンセは確かに耳に残りました。
ko-hey うちはカテゴリーで言うとパンク / メロコアバンドだけど、そういうことをやってもいいじゃんって思うんですよね。
難波 俺が歌えばメロコアのバイブスになっちゃうけど、それだけじゃハイスタには勝てないっていうのがずっとあったんだよね。でも、ko-heyという存在が現れたことで、逆に俺はメロコアをやればいいんだなって思えた。「ただ自分でいればいいんだ」って。
──なるほど。
難波 前はハイスタと歌い方を分けて、太い声で歌ったりしてたんだよ。だけど今は素直に「これが俺です」って言える。それはko-heyの声とギターが入ったからだと思うんだよね。あとは、怒らなくてよくなった。キャッキャ言っていればいいだけになった(笑)。
──ボーカルに関しては、むしろ怒ってるのはko-heyさんですもんね。
ko-hey あはは!(笑) 確かに怒ってますね。
難波 俺はもう怒れないよ。心の中だけじゃなくて、表でもギャーギャーやってたらただの嫌なヤツになっちゃうじゃん。俺、嫌だよ、嫌われるの。
──あっはっは!(笑)
難波 だから、怒るのはもう若い人たち任せる。
──感情面でも役割分担ができているんですね。
難波 それが強さにもつながってるんだよね。力を抜いたほうが強い、みたいな。
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