今日、キャロル・キング来るよ
──そういうときに音楽の話はされるんですか?
中村 あんまりしないかな?
小谷 中村くんは池ちゃんとか豊夢くんとだとそういう話もできると思うんですけど、私に知識が全然なくて。実家の近くに大きなCDショップもなかったし、いろんな音楽を聴いて勉強する習慣がなかったから、ほかのアーティストの話をされても全然通じなくて。
中村 みーちゃんは“純・個性”だから。みーちゃんみたいな音楽、ほかにないもんね。
小谷 デビュー当時、いろんな人からキャロル・キングに影響を受けてるって言われたんです。でも、私は全然知らなくて。聴いてみたら、すごい人がいるんだと思って。
中村 100sのメンバーはみんな、みーちゃんのことキャロル・キングって呼んでたよ。「今日、キャロル来るよ」って。
小谷 にゃははは!(笑)
中村 奏法はキャロル・キングではないんだけど、根付いた個性だったり、連綿としたものをちゃんと音にしてるっていうところなんじゃないかな。
小谷 光栄です。
中村 「火の川」のAメロとか。あんなの普通出てこないから。天才だと思ったもん。
小谷 あはは(笑)。いやいやー。
中村 思い出すねえ。いろいろ。
小谷 ねえ。
中村 100sが「世界のフラワーロード」というアルバムで全部出しきった感があったんで、池ちゃんたちともひさしく会えてないんですけど。
小谷 鍋やろうって言い続けてるんですけど、みんな忙しいから。
中村 100sは池ちゃんがバンマスだったんですけど、「アルバム3枚作ろう」って僕が言い出して、その3枚でどんだけ充実した展開ができるかを考えながら活動してました。Trioはどうなの?
小谷 何にも決めてない(笑)。
中村 ははは!(笑) それがいいよね。
小谷美紗子、11人+犬の大所帯バンドに加入?
──Trioだとやりやすい部分はありますか? 音の自由度が上がるとか。
小谷 上がりますね。1人だと低音から高音まで厚みがないとダメなので、弾かなきゃいけないところも多いんですけど、そこにベースとかドラムが入るとそこは任せて自分が必要なところだけ弾けばいいという意味では制限がなくなるから。
中村 ああ。ピアノって全音楽器っていうか、すごい高いとこから低いとこまでガツーンといけるもんね。だからこの前の弾き語りのアルバム、あれでも全然成立してんだよね。
小谷 えへへ。寂しいよ、でも(笑)。
中村 バンドでやってると悲しい曲やってても“笑顔感”ってあるじゃん? そのみんなでやってる感はトリオだと出てるから。
小谷 弾き語りもあって、バンドとかトリオもあるのが一番理想的だよね。どっちかだけになっちゃうとダメな気がする。
中村 俺もまっちぃ(町田昌弘 / 100s)と2人でやってるし。それと「海賊」っていう11人と犬の大所帯バンド。
小谷 いいなあ。私も入れてもらおうかな。
中村 ははは(笑)。えっ、入る? 海賊。
小谷 入る入る!
中村 ホントに? やった!
小谷 パートはコーラスと……マラカス?
中村 そこはピアノでいこうよ(笑)。えー、うれしいなあ!
「MONSTER」は小谷美紗子ナンバーの設計図
──昨年、20周年ということで小谷さん初の弾き語りオールタイムベスト「MONSTER」がリリースされました。
中村 あのベストよかったねえ。今日も聴いてきたもん。こんなこと言っちゃ身も蓋もないけど、「あれでいいんじゃない?」みたいな。全部わかるというかさ。ピアノの音への意識もさ、「こう鳴らしたい」っていうみーちゃんの思いも全部わかる。あれをずっとメンバーに伝えてきたんだね。大変だったね。ここはちょっとシンセっぽく鳴らすとか。途方もない作業だなと思って。
小谷 ああ、でもそれわかってもらえたのすごいうれしい。
中村 俺も宅録から始まってるから。設計図だよね、「MONSTER」。こういうこと考えてるよっていう意図が1音1音に出てるから。
小谷 そうそう。それもたぶん中村くんやからわかってもらえるんだと思う。ほかのミュージシャンからも「これアレンジするの大変だろうね」って言われるんですけど、中村くんは自分で宅録でやってきてるから。
中村 わかるわかる。なんなら、「もしバンドスタイルだったらシンセのこういう音にしたいんだろうな」とかまでわかるもん。
──ご自身の楽曲を再演するといろいろ見えてくるものもあると思いますが、今回一番感じた部分はなんでしょう。
小谷 デビューする前は、デビューしたら自分はピアノ弾かなくていい、あとはバンドさんが全部やってくれると思っていたんです。もともとピアニストになりたかったんですけど、私にとってピアノは一度あきらめたもので、突き詰めるものじゃなかったので、あまりちゃんと向き合ってなかったんですね。でも、デビューしたら「弾き語りがいいんだ」って周りから言われて、なぜか続けることになって。それからピアノもがんばんなきゃいけないんだって思い始めて。ちょっとずつアプローチを考えながらやってきたことが、このベストアルバムで具現化できたと思います。反省点もいっぱいありますけど、私なりにピアノがんばってきたんだなっていうところをもう1回レコーディングできたので、すごくありがたかったですね。
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真摯な大将・佐野元春
- La.mama 35th anniversary
「正しさの価値観に共感する。中村一義×小谷美紗子」 -
2017年8月3日(木)東京都 渋谷La.mama
<出演者>
中村一義(Acoustic set) / 小谷美紗子(弾き語り)
- 中村一義「最高築」
- 2017年5月24日発売 / Victor Entertainment
-
初回限定プレミアム盤 [CD+ブックレット+缶バッジ]
5940円 / VIZL-1163 -
通常盤 [CD]
3240円 / VICL-64788
- 収録曲
-
- 犬と猫
- 永遠なるもの
- 魂の本
- 笑顔
- 1,2,3
- ロザリオ
- 素晴らしき世界
- キャノンボール
- いつだってそうさ
- Honeycom.ware
- ワンリルキス
- ビクターズ
-bonus track-
- 世界は変わる
- 初回限定プレミアム盤特典
-
- 写真集(撮影 佐内正史)約60ページ
- 全アルバムジャケットスペシャル缶バッジ(10個)
- 中村一義
「ERA最高築 ~エドガワQ 2017~」 - 2017年5月24日発売 / Victor Entertainment
-
[DVD]
5940円 / VIBL-852
- 収録内容
-
第一部
- イーラ
- 1,2,3
- ロザリオ
- メロウ
- スヌーズ・ラグ
- ピーナッツ
- ショートホープ
- 威風堂々(Part1)
- 威風堂々(Part2)
- 虹の戦士
- ジュビリー・ジャム
- ジュビリー
- ゲルニカ
- グレゴリオ
- 君ノ声
- ハレルヤ
- バイ・CDJ
- ロックンロール
- 21秒間の沈黙
- 素晴らしき世界
第二部
- 犬と猫
- ワンリルキス
- スカイライン
- 永遠なるもの
- キャノンボール
-bonus track-
- キャノンボール(Music Video)
- 小谷美紗子「MONSTER」
- 2017年4月15日発売 / Music For Life
-
特別「木の箱」仕様盤 [CD]
5400円 / MFLR-1001 - 2017年5月20日発売 / Music For Life
-
通常盤 [CD]
2700円 / MFLR-1002
- 小谷美紗子20周年記念弾き語りツアー2017「旱に雨」
-
- 2017年6月23日(金)東京都 Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE
- 2017年6月29日(木)京都府 高台寺
- 2017年6月30日(金)京都府 高台寺
- 中村一義(ナカムラカズヨシ)
- 1975年、東京都江戸川区出身のシンガーソングライター。1997年1月にシングル「犬と猫 / ここにいる」でデビューし「金字塔」「太陽」「ERA」というオリジナルアルバム3枚をリリースする。2001年「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2001」に出演した際のバンドメンバーが集結し、2002年にアルバム「100s」を発表。2004年には同メンバーでバンド・100sとしての活動を開始し、3枚のフルアルバムをリリースした。2012年2月に約10年ぶりとなるソロ名義での新作CD「運命 / ウソを暴け!」を、7月にアルバム「対音楽」を発表。同年12月にはデビュー15周年記念ライブ「博愛博 2012」を東京・日本武道館で実施した。2014年には盟友・町田昌弘(100s)とのトーク&弾き語りライブツアー「まちなかオンリー!2014」、自身初となる地元・江戸川区での特別公演「エドガワQ」、約12年振りとなるソロ名義のバンドツアー「RockでなしRockn'Roll」を開催する。2016年3月にはビクターエンタテインメント移籍後初のアルバム「海賊盤」、ライブDVD「金字塔完成記念日~エドガワQ 2015~」を発売。2017年5月にはセルフカバーベストアルバム「最高築」と、2月に東京・江戸川区総合文化センターで行われたライブ「エドガワQ2017~ERA最構築~」の様子を完全収録したDVD「ERA最高築 ~エドガワQ 2017~」を同時リリースした。
- 小谷美紗子(オダニミサコ)
- 1976年京都生まれ。ピアノ弾き語りによる情感あふれる歌声が注目を集め、1996年リリースのデビューシングル「嘆きの雪」がスマッシュヒットを記録。以後コンスタントに作品を発表し、多彩な音楽性を見せつけながらその存在感を確立していく。2003年には彼女をリスペクトするミュージシャンが集まり「odani misako・ta-ta」名義でアルバムを発表するなど、他アーティストからの支持も厚い。近年は玉田豊夢(Dr)、山口寛雄(B)とともにトリオ編成のバンドでライブやレコーディングを実施。2013年12月に通算12枚目となるオリジナルアルバム「us」を発表。2016年4月にはデビュー20周年プロジェクトの第1弾として弾き語りベストアルバム「MONSTER」をリリースした。