ナタリー PowerPush - 中島卓偉

“リアル1stアルバム”からピックアップ 「名刺代わり」の攻撃的シングル

以前は自分の中で作った制約に縛られていた

──このアルバムの曲名には、めちゃめちゃ強い意味合いの言葉が並んでます。特に1曲目の「ゲッザファッカゥッ!!!!」は「Get The Fxxk Out」をカタカナで表記しただけですもんね。

中島卓偉

そうです。たまに「ラジオでかけにくい」って言われますから(笑)。正直、カッコいい曲タイトルっていうのにちょっと飽きていて。例えば海外のバンドっていうのは自分の国の言葉で歌詞やタイトルを書いてるから、英語がよくわからない僕らからするとカッコよく見えることがあると思うんです。でも英語圏の人からすると、その歌詞やタイトルが必ずしもカッコいいものとは限らない。そう考えたときに、自分の中のルールがどんどん壊れてきて、「だったら漢字やカナで書いた歌詞やタイトルが必ずしもカッコよくなくてもいいんじゃないか?」と思うようになったんです。

──歌詞はメロディができてから付けていくんですか?

今まではずっとそうだったんですけど、実は今回は先に歌詞から書いた曲もいくつかあって。さっき「作詞というものがわかってきた」と言いましたけど、それは歌詞を先に書くようになったのも大きい気がしてます。以前はメロディに言葉を当てはめなきゃいけないという、自分の中で作った制約に縛られていたんですね。ずっとそれが苦しかったんですけど、あるとき「そんなことにこだわってるのは自分だけじゃないか? そこに6つのいい言葉があるなら、それをそのまま使えばいいんじゃないか?」と気付いて。そこからは思ったことをそのまま歌詞にして、あとからメロディを付けてみたんですけど、そっちのほうがむしろすんなりいっちゃって(笑)。なおかつこの方法のほうがいい歌詞が書けると気付いたんです。このアルバムでの一番の収穫ですね。

──言葉を大事にするあまり、メロディが崩れてしまうことはなかったですか?

16ビートの跳ねる感じさえ出すことができれば、言葉数が増えても大丈夫かなと。「サイトウダイスケ ~all good adults go to heaven?~」とか「口パク禁止令」とかは歌詞から作ったんですけど、すごくユニークな曲に仕上がったと思いますよ。

中島卓偉

──今までがキッチリやりすぎていたと?

そうなんですよ。なんでキッチリやろうとしていたのか、今となってはわからないんですけど。正直な話、1コーラスのAメロと2コーラスのAメロの譜割りが違っていたっていいはずじゃないですか。そんな曲たくさんあるはずなのに、言葉数が合ってないってだけでダメなんじゃないかと思ってしまっていたんです。

──リスナーのことを気にしすぎていたのもあった?

それもあると思いますね。やっぱりライブで歌いやすいようにと考えてたんでしょうけど、歌詞を大切にするならこのやり方が一番なんじゃないかという気が今はしてます。

子供の頃に知ったロックという文化を継承していきたい

──サウンドについても聞かせてください。アルバムのサウンドは全体的に重心の低い、ヘビーなアレンジになっています。

「ゲッザファッカゥッ!!!!」ではギターの6弦のチューニングをEからDまで下げてますからね。

──なおかつ、ロックファンならニヤリとしてしまうフレーズも至るところに散りばめられていて。

中島卓偉

いろんな影響を受けているんだっていうことを匂わせたいっていうのは、ずっとありまして。でもそこはそのまんまパクるんじゃなくて、あくまでオマージュとして自分なりに紹介してる。「あ、こんなバンドも好きなんだ」って思ってもらえるくらいの。中にはまんますぎるパクリかたの音楽もあるじゃないですか。そういうやり方よりも「あ、好きなんだろうな」って匂わすくらいのほうがカッコいいと思うんですよ。僕はそうやって自分が子供の頃に知ったロックという文化を継承していきたいんです。でも最近はその傾向が弱くなっている気がして、例えば自分のファンの中にも過去のロックへのオマージュに気付かない人もいる。だからこそ、自分が続けていって、何年先でもいいから「あ、卓偉はあのアーティストが好きで、ここにこういうフレーズを取り入れたんだな」って意図に気付いてもらいたいんです。

──なるほど。そしてアレンジに関してもう1つ、コーラスの重ね方もかなり計算されているように感じました。

今回はキーボードを使ってないので、和音はギターと自分のハーモニーだけなんです。僕自身ハモりが大好きだし、The BeatlesやBeach Boysといったバンドからの影響もあって、コーラスはかなりこだわってます。レコーディングだと自分の声をどんどん重ねていくから気持ちいいんですよね。ライブでは自分1人ではできないけど、レコーディングはレコーディングと割り切っているから好き放題やれるっていうのもありますし。

──攻めのロックチューンでもハーモニーが入ることで、絶妙なポップさが加わっていて。このバランス感こそが中島卓偉のロックなのかなと思いました。

そう言ってもらえると、すごくうれしいですね。実は僕、ヘビーなリフで始まって、そのままヘビー一辺倒の曲って苦手なんですよ。別に起承転結がハッキリしてなくてもいいけど、ハッとする瞬間というか、音楽的にドラマチックな展開は必ず入っていてほしい。そのへんはThe BeatlesやThe Who、The Rolling Stonesなどの古きよき時代のブリティッシュロックからの影響かもしれませんね。

ニューアルバム「BEAT&LOOSE」 / 2013年10月2日発売 / 3150円 / UP-FRONT WORKS / zetima / EPCE-5991~2
ニューアルバム「BEAT&LOOSE」
CD収録曲
  1. ゲッザファッカゥッ!!!!
  2. サイトウダイスケ~all good adults go to heaven?~
  3. BEAT&LOOSE
  4. I'VE GOT MY SOUL
  5. さらけだす
  6. 口パク禁止令
  7. 言えよ
  8. 誰もわかってくれない
  9. だけどもう一度 それでももう一度
  10. LOCAL SENSATION
  11. いたわりマシーン
  12. カモン!カモン!
  13. YES, MY WAY
  14. 高円寺
  15. 泣いたままでいい
DVD収録内容

「15周年フライングイベント!まずは振り付けNight!」2013年8月31日(土)at 新宿LOFTライブ映像

ニューシングル「ゲッザファッカゥッ!!!! / 誰もわかってくれない / BEAT&LOOSE」 / 2013年11月6日発売 / UP-FRONT WORKS / zetima
初回限定盤A [CD+DVD] / 1680円 / EPCE-7010~1
初回限定盤B [CD+DVD] / 1680円 / EPCE-7012~3
通常盤 [CD] / 1050円 / EPCE-7014
CD(全仕様共通)
  1. ゲッザファッカゥッ!!!!(Single Ver.)
  2. 誰もわかってくれない(Single Ver.)
  3. BEAT&LOOSE(Single Ver.)
初回限定盤A付属DVD
  1. ゲッザファッカゥッ!!!! (Music Video)
  2. BEAT&LOOSE(Live Ver.)
初回限定盤B付属DVD
  1. 誰もわかってくれない(Music Video)
  2. BEAT&LOOSE(Live Ver.)
中島卓偉(なかじまたくい)

中島卓偉

1978年10月19日生まれ、福岡県出身のロックアーティスト。1999年10月21日、TAKUI名義にてシングル「トライアングル」でデビューを果たす。以後、ライブを主軸に音楽活動を展開。2006年に本名の「中島卓偉」名義に戻し、「3号線」をはじめ数々の楽曲を発表していく。また作家としても、安倍なつみやTHE ポッシボー、小川真奈、真野恵里菜、つんく♂などに楽曲提供。2014年のデビュー15周年を目前に、2013年10月にニューアルバム「BEAT&LOOSE」、11月にシングル「ゲッザファッカゥッ!!!! / 誰もわかってくれない / BEAT&LOOSE」を立て続けにリリースした。