ナタリー PowerPush - 中川翔子

11年目の大人ロック&壇蜜セクシー指南

レベル低いまま強いボスに向かっていったら意外と倒せた

──曲作りのプロセスはどのような感じだったのでしょうか。

今回は曲選びの段階から参加させてもらったんです。曲が決まってからも、自分から希望を出してアレンジを変えてもらったり。歌詞も、岩里さんが現場に来てくださって「ここ、言い回しを変えようか」とか、作曲してくださったシライシ紗トリさんが「ここに何かセリフみたいなのを入れたら面白い!」と提案したら、岩里さんが「ニーチェの言葉を引用してみよう」とか、その場で一緒にアイデアを出してくれました。ニーチェ!? ってびっくりしたんですけど、それもすごく面白かったし、面白がって前のめりになって作ってくれたのがすごくうれしかった。こうやって前々から準備を重ねて曲を作るのも意外に初めてなんですよ。松本隆さんも「シングルはずっと残る生きた証だから」っておっしゃってましたけど、だからこそ慌ててドタバタの中で作るもんじゃないなってずっと思っていたので、やりたいことをやりたい形でできるようになったことが本当にうれしいです。

──ほとんどセルフプロデュースと言っても差し支えないような。

もちろんプロフェッショナルな大人の方がキチンとまとめてくださるからこそなんですけど、自分の意見を出しながらブレずに自分の思いが形にできた満足感は、今までで一番強いですね。

──前回のインタビューでも感じましたけど、去年のアジアツアーや国内での多数のライブを経て、何か変わりましたよね。

アジアツアーは昔の私だったら「ムリムリムリ!」としか言えなかったけど、もう言ってる場合じゃなかったというか。でもいざツアーが始まってみたら「ああ、本当にやれてよかった」って笑顔で思える日のほうが多くて。笑顔を作るためには今この瞬間をどうするか、って1秒ごと瞬間的に考えながら歌ってるような感じでした。それがすごく気持ちよくて。レベル低いまま強いボスに向かっていったら意外と倒せた、こっちのほうが気持ちいいな、みたいな(笑)。去年はすごくドラクエ感の強い1年で、レベルがけっこう上げられたかなと思います。余裕があるわけじゃないんですけどね。

──余裕はないけど、立ち向かえるだけの強いハートが身に付いた。

そうですね。取り組むスタンスが変わったというか。何があっても意味があると思えるので、今すごくやる気に満ちています。

80年代アン・ルイス感のあるキャッチーなロック

──中川さんはもともとアイドルソングなど優しいポップスも好きだと思うんですけど、今、音楽的にロックがやりたいというのは、やっぱりライブの影響が大きいですか?

大きいと思います。やっぱりライブのセットリストも一番盛り上がるのはロックな曲だし。でも実はシングルでロックな曲ってあんまりなかったんですよ。去年のZeppツアーでシングル曲を並べて歌ってみたところ、意外と落ち着いた曲が多くて。でもロックの曲は増えていてなんだろうなーと思ったら、大人しいA面に対してロックなB面、みたいなシングルが多いんです。

──ああ、確かに。

今回はそれをシングルのA面でやりたいと思ったんですよ。ロックは「空色デイズ」(2007年6月発売の3rdシングル)で出会ったのが始まりで、そのときは「えっ、ロックって何? わかんないどうしよう」みたいなところから始まったんです。でも今は、ライブ会場で誰かが自然発生的に歌い出した「空色デイズ」の大合唱がアンコールの声の代わりになるような、大事な曲になって。ホントに空の色のように歌うたび景色が変わる曲で、ビシッと気持ちが正されるんですね。歌っている間だけは空とつながれるような気がするというか。

──ロックを歌ってるときは人格すら変わってるような感じがありますよね。

今年の5月、“レベル28”の誕生日は東京ディズニーリゾートの舞浜アンフィシアターでライブがあって、「塔の上のラプンツェル」の衣装で空を飛びながら歌わせてもらったり、夢のようなライブだったんですけど(参照:中川翔子、レベル28の誕生日ライブで地上21m空中飛行)、ロックな衣装を着たら「てめえらひれ伏せ! 翔子様と呼べ!」みたいな(笑)。ディズニーリゾートで「血祭りだ!」って叫んじゃったんですよ(笑)。口が勝手に動いちゃったので、なんか……すみませんでした。

──「続 混沌」はこれまでのロック曲ともテイストが違いますよね。まず否定から入るし(笑)。岩里さんも「べらんめえロック」とコメントされているように、口調や歌い方から違うという。

これこそ昔だったら戸惑うばっかりで絶対歌えなかったですね。この曲は誕生日のライブでも披露したんですけど、発売1カ月以上前からライブで歌うというのは今回が初めてで。いつもなら新曲を歌うときは「ああ歌詞なんだっけ」って慌てちゃうのに、この曲はすっかりなじんじゃってて、まだ発売されてないのが信じられないくらい。初披露だったのにお客さんは赤いサイリウムでバッチリ揃ってて驚いたんですけど、迷いなく歌えてるからみんなも自然と入れたのかなあって。イントロですぐこの曲ってわかるし、80年代感もあるし……アン・ルイスさんみたいな。大好きな世界観だから、すっかりなじんでますね。

──あー、確かに。80年代のアン・ルイスさんみたいな、すごくキャッチーなロックで。けっこうヘビーなことを歌っているのにどことなくキャッチーなのは、確かにアン・ルイスさん直系という感じがします。

イントロとかサビとか、1回聴いて耳に残るような強いフレーズがある曲も、意外と今までなかったんですよね。実はすごくシンプルな曲で。「獣な人間(あたし)たち」とか、歌っていて楽しいですね。PVができたときも、翼が生えてる自分の姿に笑っちゃって。中2感全開じゃないですか(笑)。セフィロス(RPG「ファイナルファンタジー」のキャラクター)かっていう。セフィロスの片翼のイラストとか描いてた中2の頃とまったく変わってない(笑)。

──中2の闇を今カッコよく表現できるのって、なんか報われた感ありますよね(笑)。

中2脳がそのままあるが、だがしかし、これを次世代の子に伝えたいという気持ちに変わってるんですよね。

次元を超越したROLLYとの共演

──PVでは、レコーディングにもギターで参加しているROLLYさんと共演していますよね。あのROLLYさんも大きな見どころで。

ROLLYさんこそカオスですよね。次元を超越しているというか、生身の人間なのに間近で見ても2次元のキャラクターみたいで。ギターもすごいけど、表情もすごい! 普段はすごく気さくな方で、よく楳図かずおさんトークで盛り上がってるんですけど、しっかりと自分の世界を持っていて。

──ROLLYさんはデビュー時から一貫して異端であり続けているのに、存在感がすごくキャッチーなんですよね。

まったくブレないんですよ。クラスの中では絶対浮いちゃうタイプだと思うんですけど、すごくポップで。ROLLYさんも楳図さんも、尊敬する大人の人はみんなそうなんです。自分の世界をちゃんと持ってる。人目を気にして周りに合わせて生きるなんてもったいない!と気付かせてくれる大人の人は尊敬しますね。ROLLYさんの姿を生で拝見して、より「続 混沌」の歌詞が理解できました。

──確かに、あの歌詞の世界観を体現するのにピッタリな人かもしれない。今の中川さんの気持ちをバッチリ表現した曲になりましたね。

そうなりましたねー。ずっとモヤモヤと考えていたことが、バラバラだったピースがカチッと合わさったような。ずっと言いたかったことはこういうことなんだなーって。

ニューシングル「続 混沌」 2013年6月5日発売 / [CD+DVD] 1800円 / Sony Music Records / SRCL-8270~71
ニューシングル「続 混沌」
CD収録曲
  1. 続 混沌
  2. 紅恋毒蝕
  3. 続 混沌(instrumental)
  4. 紅恋毒蝕(instrumental)
  5. 歌舞伎町の女王 -2011.12.20.中野サンプラザver.-
DVD収録内容
  • 続 混沌 Music Video
  • 続 混沌 Music Video(メイキング)
中川翔子(なかがわしょうこ)

中川翔子

「しょこたん」の愛称で知られる、1985年生まれの女性アイドル。2002年に芸能界デビューして以来、数々のテレビ番組に出演し人気を高めていく。2004年11月からスタートさせた公式ブログ「しょこたん☆ぶろぐ」でも人気を博し、2006年にはシングル「Brilliant Dream」で歌手デビュー。このほかにも声優やイラスト、マンガ家、ドラマ出演など、多方面で活躍するマルチタレントぶりを発揮している。デビュー10周年を迎えた2012年には念願だった初のアジアツアーを大成功に収めた。2013年6月5日に通算16枚目となるシングル「続 混沌」をリリース。