muqueの新作EP「DOPE!」が6月11日にリリースされた。
昨年10月に1stアルバム「Dungeon」を発表後、その注目度と人気をますますアップさせているmuque。アルバムリリース後に開催した初のワンマンツアーは追加公演も含む全5公演が完売し、今年1月には日本テレビ系音楽番組「バズリズム02」内の恒例企画「今年コレがバズるぞ!2025」で1位を獲得した。一方Spotifyでのユーザーの40%を海外のリスナーが占めるなど、その人気は海外にも拡大している。
そんな中でリリースされた新作EP「DOPE!」には、バンド初のアニメタイアップ曲となるテレビアニメ「ONE PIECE」エッグヘッド編エンディング主題歌の「The 1」、FM FUKUOKA開局55周年テーマソングの「カーニバル」といったタイアップ曲のほか、ダークな雰囲気をまとう新曲「Ghost」、ワンマンツアーで初披露された楽曲「cheers」、既発曲「"Later"」の新アレンジの計5曲を収録。快進撃を経てメンバーそれぞれが見る光景、抱く意識にも変化が出てきたことを印象付ける1枚だ。
音楽ナタリーでは新作のリリースを記念しmuqueの4人にインタビュー。昨年のアルバムリリース以降の活動や「DOPE!」の収録曲、新作の初回限定盤付属ディスクにライブ映像が収録される昨年のワンマンツアーについて語ってもらった。
取材・文 / 天野史彬
より上を目指すためストイックに
──2025年に入ってから約半年が経ちましたが、今急速に注目度が上がっているmuqueにとってこの半年間は激動の期間だったのではないかと思います。振り返っていかがですか?
Asakura(Vo, G) ライブやフェスにもたくさん出させていただいたし、私自身はバンドが進むのにがんばってついていっている感じでしたね。
──自分たちの存在感や立ち位置がどういうものか、フェスに出て実感されることはありましたか?
Asakura それぞれのフェスでカラーはかなり違うんだなと感じているんですけど、私たちはどのフェスの色にも合わせることができるのかなって、ライブをやっていると感じますね。ポップ系のフェスでも、おしゃれな感じのフェスでも、ロック系のフェスでも、私たちは染まることができるし、自分たちの色に染めることもできる。そんな自分たちを楽しんでいます。
──takachiさん、Kenichiさん、Lenonさんのこの半年はいかがでしたか?
takachi(Dr, Track make) 活動も忙しいし、ちょっとは満足するのかなと思っていたんですけど、全然そんなことなくて。どんどん目標も出てくるし、野心しかないのが現状です。フェスに出ることをずっと1つの目標にしていたから「出れた! うれしい!」ってなるのかと思いきや、意外と悔しい気持ちが大きかったりもして。メインステージのアーティストと自分を比べると、足りない部分があるんですよね。まだまだやることがいっぱいあるなと思っています。
Kenichi(G) もう5月が終わるのか!って感じです(※取材は5月下旬に実施)。気付けば次のツアーも目の前だし、日々が過ぎていくのをすさまじく早く感じますね。それは充実している証だし、もちろん稼働も多いし大変な部分もあるけど、それ以上に何倍も楽しさがある日々を過ごせていると思います。その中でもちゃんと自分の時間を作って、いちギタリストとして技術向上のために自分に向き合う時間をもっともっと作っていかないとな、とも感じていますね。ただ忙しく日々が過ぎていくだけではダメで。ちゃんと成長していくためには自分と向き合わないといけないなと、最近思っています。
Lenon(B) 1月に「バズリズム02」に出演して、最近は「ONE PIECE」のタイアップもあって、より自分たちの存在をいろいろな人たちに知っていただく機会が増えていて。フェスに出ても、自分たちのステージのキャパをオーバーするくらいのお客さんが来てくれているというのも聞くし、自分たちに対しての期待感は高まっているのを感じます。それに対してうれしい気持ちはあるけど、同時にプレッシャーも感じてはいますね。より上のステージを目指すために、ストイックさも増していった半年間だったなと思います。
──メンバー間でのコミュニケーションに変化は生まれていますか?
Kenichi 曲を作っているtakachiの描くビジョンがどんどん明確になってきているなと思います。トラックの精度も高くなっているので、以前よりも会話はしやすくなっていますね。イメージの共有が早くなった。
Lenon 確かに、デモの段階でtakachiのやりたいことがより明確になっているのは僕も感じますね。「これは打ち込みベースでやりたいんだな」とか、そういうことが明確になってきたからこそ、「それをライブでどう見せるか?」ということを、僕とKenichiで話し合うことも増えて。
Kenichi そうだね。今後は、音源とライブの差別化がよりはっきりとしてきそうです。
──takachiさんご本人としては、曲作りのビジョンが明確になってきている実感はありますか?
takachi そうですね。前から自分のセンスを信じてはいたんですけど、最近、そこに実力がちゃんとついてきたのは自分でも感じていて。だから、今みたいなことを言ってもらえるのはすごくうれしい。
最初は不安のほうが大きかった「ONE PIECE」タイアップ
──そんなmuqueの新作EP「DOPE!」がリリースされます。1曲目に収録されたアニメ「ONE PIECE」エンディング主題歌「The 1」を聴いて感じたのは、例えばドラムンベースを昇華したグルーヴ感にはとてもmuqueらしさがあるんですが、それと同時に「ONE PIECE」という作品が持つ大衆性、「みんなが知っている作品である」という巨大さにしっかりと呼応している楽曲だなということで。takachiさんから出てくるもののスケールも以前より大きくなっているのかなと感じました。
takachi 最近「曲によってリスナーの層が違うんだな」と感じていて。サブスクで再生回数が伸びる曲もあるけど、ライブに来てくれる人は、実はサブスクで伸びていない曲が好きだったりもする。そういう現象が起きているうえで、その両方に向き合いながら曲を作りたいなと思っています。ライブまでは足を運ばないけど、ドライブをしながら音楽を聴きたい人に刺さるような曲と、ライブで音を浴びたい人にしっかりと届くような曲、その両方を満足させられるバランスで曲作りをしていきたい。それは1曲でその両方を満足させるというより、いろいろな曲を作ることで、全員をしっかり巻き込むことができればいいなと思うんですよね。
──目に映るリスナーの数が増えたからこその変化ですよね。
takachi そうですね。しかもそれが「全員一緒の感覚じゃないんだ」と思った。多様性が加速している時代だし、例えば自分たちの高校生時代と今の高校生は考え方も価値観も違うと思います。それに気付いたときに、自分たちが若い頃には当たり前だった価値観で曲を作っていると、失敗するだろうなと考えて。自分たちが想像するよりいろんな曲の聴き方があると思うので、そこをしっかり意識して曲作りしていきたいですね。
──改めて「The 1」の話を伺うと、「ONE PIECE」のタイアップが決まったときの心境はいかがでしたか?
Asakura うれしい気持ちもありましたけど、作品が大きすぎてプレッシャーというか。takachiの最高のトラックに、私がメロディを付けたことでタイアップが取りやめになったらどうしようっていう……。
Kenichi・takachi・Lenon (笑)。
Asakura そのくらい、最初は不安のほうが大きかったです。
──でも、Asakuraさんの書いた歌詞は「The 1」を「ONE PIECE」の歌であり、muqueの歌であり、聴いた人1人ひとりの歌にするような、そんな力強い言葉だなと感じました。
Asakura そうですね、「ONE PIECE」だけに振り切ると、今までのmuqueのリスナーが追いつけなくなっちゃうなと思って。自分たちのファンの人たちのことも忘れずに詞を書きました。そうは言っても「ONE PIECE」のあるキャラクターに入り込んだ歌詞でもあるので、今は自分とはちょっと違う人間が書いた感じもします。