ナタリー PowerPush - ムック
新たな要素を積極的に導入した移籍第1弾シングル「フリージア」登場
ムックのニューシングル「フリージア」が11月25日にリリースされる。強力なアルバム「球体」を経て発表される本作は、DANGER CRUE RECORDSに移籍して最初の作品。過去2枚のシングル同様にken(L'Arc~en~Ciel)がプロデュースを担当しており、エモーショナルなサウンドとエレクトロな要素がミックスされた、ムックならではのドラマチックな楽曲に仕上がっている。
シングル発売を記念して、ナタリーでは逹瑯(Vo)とミヤ(G)にインタビューを敢行。今回のシングルに隠された意外な秘密や、プロデューサーとしてのkenの魅力、さらには海外での活動や初の南米ツアーの裏側など、興味深い話題をたっぷり聞いた。
取材・文/西廣智一
南米で人気の曲と日本で人気のある曲は違う
──2009年は3月にアルバム「球体」をリリースして、国内ツアーあり、武道館公演あり、そして海外ツアーもあって、非常に攻めてるなというイメージがあります。改めて今年を振り返ってみると、ムックにとってどういう1年でしたか?
ミヤ 俺は特にライヴが多いとは感じてなくて、これくらいがちょうどいいかなと。今までやりたいようにやれてなかったんで、今年はやっと流れが作れたかなと思います。
──今年は初めて南米にも行きましたが、そもそもどうして南米ツアーをしようと思ったんですか?
ミヤ 海外をツアーしているといってもまだ行ってない国も多いし、その中にはお客さんが待っていてくれる国もたくさんあって。今はインターネットがあるので、どこにどれだけのファンがいるという情報が得られるし。南米もファンが待っていてくれる場所のひとつで、ヨーロッパに比べるといろいろ条件も良くなかったけど、今回やっと行けたんですよ。
──南米というと観客が熱狂的というイメージが強いですが、現地での盛り上がりはどうでしたか?
ミヤ やっぱり熱狂的でしたよ。ヨーロッパ以上に日本のバンドが訪れる数が少ないんで、すごく歓迎されてる感じが伝わってきましたね。
──南米ではムックの作品はリリースされてないですよね?
ミヤ 南米はまだですね。でもみんなインターネットを通じて、日本のファンと同じくらい曲を知っていてくれるんですよ。
──日本での反応と比較して、違いは感じましたか?
ミヤ 南米で人気の曲と日本で人気のある曲はちょっと違っていて。だからライヴでは、向こうで人気のある曲を入れたりしました。
──現地ではどういう曲が人気あるんですか?
ミヤ シングル曲でビデオクリップを制作したものは人気がありますね。その中でも「最終列車」は特にすごい人気で、ムックと言えばこの曲というくらい。YouTubeでムックをカバーしているバンドはだいたい「最終列車」をやっていて、一番日本的なメロディだからムックのアイコンとしてわかりやすいみたいなんです。ライヴで演奏するとすごく盛り上がって、みんな歌ってくれるし。
逹瑯 向こうのファンが何に反応してるのかについて深く話したことはないですけど、やっぱり一番デカいのはメロディだと思いますね。メロディが良くて聴いてくれてるんだと思うし。
──逹瑯さんは向こうでも日本語で歌っているわけですが、言葉の通じない海外で意識していることはありますか?
逹瑯 歌詞の意味をそのまま伝えるのは無理でしょうね。俺らが洋楽を聴いてても歌詞を理解するのは難しいし、メロディやサウンド、表情、歌の聴こえ方で感じ取るしかない。だから、ジェスチャーでいかによりわかりやすく伝えるかですよね。
海外ツアーは北海道や九州に行くのと同じ感覚でありたい
──ここ何年かは積極的に海外ツアーを行ってますが、ムックにとっての海外活動というのはどういう位置付けなんでしょうか。
ミヤ ツアーで北海道や九州に行くのと同じ感覚だし、そうありたいと思ってます。飛行機に乗ってすごく遠いところに行くというのは事実なんですけど、結局そこに着いてしまえばライヴハウスでライヴをやるのは一緒だし。言葉が通じなかったり機材が少なかったりはするけど、それにも慣れてきてます。ライヴが始まっちゃえば同じですね。
逹瑯 国内ツアーと比べて飛行機に乗る時間は長いけど、ヨーロッパ内の移動はずっとバスで寝ていれば次の場所に着くので日本より楽なんですよ。ライヴが終わってバスに乗れば、すぐに寝れるし。
──海外ツアー中は各地で取材も受けたりすると思いますが、海外メディアの反応ってどういう感じなんですか?
ミヤ 日本の取材とまったく違う視点で質問してくるんですよ。もちろん音楽のことも訊いてくるけど、国によっては政治についてとか、歌詞に讃美歌が出てくるけどキリスト教徒なんですかとか宗教的なことを質問されたり。そこは国によって違うと思いましたね。
──今回のワールドツアーで特に印象に残ってることはありますか?
ミヤ アルゼンチンからチリへの移動がね。
逹瑯 飛行機がトラブって6時間くらい待たされたのがキツかったです。
──ヨーロッパには何度かライヴで行ってますが、回を重ねるごとに現地での認知度やリアクションは変わってきてますか?
ミヤ 最初に行った頃と比べると雰囲気が変わってますね。お客さんも日本のバンドならなんでもいいという感じではなくなってきたし、なんでもかんでも珍しがる感じではないです。「私はこのバンドが好き」という空気がよりはっきり伝わってきますよ。
ムック
1997年に茨城で結成された4人組ヴィジュアル系バンド。水戸・千葉・東京を中心にライヴ活動を展開。日本語にこだわった文学性の強い歌詞と、従来のヴィジュアル系サウンドに欧米ヘヴィ/ラウドロックからの影響をミックスした独自の音楽性が高く評価されている。インディーズでの活動を経て、2003年5月にシングル「我、在ルベキ場所」でメジャーデビュー。同年8月にはドイツのメタル系フェス「Wacken Open Air」に出演するなど、海外での活動も積極的に行っている。2006年には初の日本武道館公演を敢行するほか、初のアメリカライヴを開催。また2007年7月にはGUNS N' ROSES来日ツアーでオープニングアクトを務め、話題となる。