Ms.OOJA「Ms.ENKA~OOJAの演歌~」インタビュー|デビュー15周年、今「演歌」を歌う理由 (2/2)

酒と海、男と女

──実際に歌ってみて、ほかにも気付いたことはありましたか?

演歌には、「酒」というワードがめちゃくちゃ出てくるんですよ。酒と海と、男と女、それから雨と雪と冬。やっぱり時代背景もあるんでしょうね。つらいことがあったら1人で酒を飲む。そこに次の恋が始まりそうな相手がいたりして。当時は今みたいに簡単に連絡が取れる時代じゃないですし、下手したら手紙や電報の世界じゃないですか。だからこそ、相手への思いを募らせる度合いがものすごく強かったんだろうなと思うんです。

──確かにそうですね。連絡手段が限られている分、想像や妄想で補わなきゃいけない部分も多かったはずです。

そうなんですよね。だからこそ、行間を読むとか、空気を読むとか、そういう感覚がすごく大事だったんだと思います。グローバルな社会の中では、そういうものが欠点のように言われることもあるけれど、私はそこにすごく大事な美しさがあると思っています。

Ms.OOJA

──それは、どんな美しさですか?

この間、日曜日に渋谷の道玄坂からスクランブル交差点まで歩いてみたんです。あれだけカオスな場所でも秩序が保たれていて、海外からの観光客の方たちもその空気になじもうとしているのを感じて。そのとき、日本が持っている“空気感”の強さを改めて実感したんですね。空気を読むとか、間を感じ取るとか、そういう「日本人らしい」とされる感覚のよさは、演歌の中にもぎゅっと詰め込まれていると思います。

──わびさび、みたいなものでもありますよね。

そう、わびさび。「それが日本のよさなんだ」ってもっと言っていいし、誇りに思っていいことだと思います。これからも大切にしたいですね。

──このアルバムを、どんな人に聴いてほしいですか?

日本に住んでいる方にはもちろん、海外の方にも聴いてもらいたいです。演歌って英語ではどう表記するんだろうと思って調べたら、「ENKA」で通じるらしいんですよ。だからこそ今回はあえてローマ字で打ち出しましたし、この言葉をもっと広めながら「こんなにカッコいい音楽があるんですよ」と伝えるきっかけになれたらいいなと思っています。

気付けば誰かを励ましていた

──この15年間のMs.OOJAさんの道のりについても伺いたいです。2011年2月にデビューして、直後に東日本大震災がありました。当時のことを、今はどう思いますか?

デビューから1カ月後に震災が起きたんですが、当時は絶望的な気持ちでしたね。でも、そこからすぐ音楽の力も必要性も痛感しました。その年の4月にセカンドシングル「LIFE」をリリースしたのですが、その曲は「先が見えなくても一歩踏み出そう」「挫けそうになりながらも夢に向かってがんばろう」というニュアンスの応援ソングだったんです。それが、当時の状況と偶然にも重なって、本当に多くの方に聴いていただくきっかけになりました。「あのとき『LIFE』に救われました」と言ってくださる方にお会いするたび、私の知らないところで誰かを励ましていたのだなと思って胸が熱くなります。

──音楽を発信する手段も、この15年で様変わりしましたよね。

本当に。私がメジャーデビューした頃は「着うた」全盛期で、ちょうどCDからダウンロードへ移行していく時期でもありました。そこからサブスクリプション配信が広がって、今やサブスクとSNSが主流になっていますよね。そんな変化の中で不安なときもありましたが、この15年の間に毎年リリースしてきた曲たちがいつでも聴けるようになったのは素晴らしいことだなと。昔の曲が思いもよらないきっかけで再発見されることもありますし、これから先もまた新しい出会いを生み出してくれるんじゃないかなと思っています。

──中でも「Be…」は、ずっと愛され続けているMs.OOJAさんの代表曲です。

「Be…」はデビュー2年目の頃、ドラマの主題歌として書き下ろさせていただきました。ドラマの制作スタッフの方々の作品に対する思いが本当に強く、何度も何度も曲を書き直してブラッシュアップしたことを覚えていますね。ようやく「これでいこう」となったレコーディング当日にも、さらに修正のオーダーが入って……(笑)。結果的にスタジオで5、6時間かけてほぼ全部書き直して、そのままレコーディングしたんです。

──それはすごい……。

あのときは「脳が沸騰する」という感覚を初めて味わいました(笑)。デビューしたばかりの自分にはなかなかのハードルでしたが、あのタイミングでそこまで求めてくださったことを、ものすごく感謝しているんです。あの経験があったからこそ今の自分があると思っていますし、だからこそ「Be…」は私にとってすごく思い入れのある曲ですね。

Ms.OOJA
Ms.OOJA

──もともとMs.OOJAさんは、どんな音楽を聴いていたのですか?

高校生のとき、友達に誘われてダンスレッスンを受けに行ったときに初めてヒップホップという音楽に触れて、「こんなにカッコいい曲があるんだ」と感動したのが音楽を好きになった最初の大きなきっかけです。そこからR&Bにも惹かれるようになり、宇多田ヒカルさんやメアリー・J. ブライジ、アリシア・キーズのようなシンガーに夢中になっていきました。どこか哀愁のある声のシンガーがずっと好きで、そこに自分は強く惹かれるんだなと思います。

──ところで昨年リリースされた最新オリジナルアルバムのタイトルを「最終回」にした理由は?

当時、闘病している友人がいたんです。去年の夏に亡くなってしまったんですが、タイトル曲「最終回」を書いていた時点では彼女はまだ存命でした。でも、どこかで彼女との“最終回”が来るかもしれないことを、無意識に感じ取っていたんだと思います。だからこそ、ああいう歌詞が自然と生まれてきたのかもしれません。

──そうだったのですね。

人って時間が無限にあると思っているうちは、目の前のことをそこまで大切にできないと思うんです。でも「あとこれくらいしか時間が残されていないのかも」という感覚が生まれると、物事の見え方が変わる。40代になって少しずつ失っていくもののほうが多くなってくる中で、死を意識することで、逆に「もっと楽しまなきゃいけない」とか「もっとできることがあるな」とか、“生きること”を強く意識するようになりました。そういう思いを、このタイトルに込めています。

大阪城ホール公演を控えて

──10月に大阪城ホール公演の開催を控えていますが、心境はいかがですか?

公演に向けて、自分の中でも変化が起き始めているのを感じます。例えば去年の9月くらいから断捨離をし始めて、3、4カ月かけて家の中のものをたぶん半分くらい捨てました。ものを捨てるって、最初は物理的な変化なんですけど、それが精神的な部分にも影響して、結果的に行動まで変わってくるんですよね。「何か行動を起こせば、ちゃんと結果が伴ってくる」という小さな成功体験を、断捨離を通して得られた気がして。見える景色も一気に変わりましたし、日々の生活もすごく快適になりました。お抹茶を点てたりもするようになって(笑)。

──まさに「丁寧な暮らし」ですね。

そうなんですよ。お香を焚いたりとかもそう。以前の自分なら絶対やらなかったようなことにまで興味を持ち始めていて。たぶん大阪城ホールという大きな目標を前にして、それに全力で向き合うための心の余白を自然と作りたくなったんだと思います。そういう変化も含めて、ここから自分がどう変わっていくのかが楽しみですね。

Ms.OOJA

公演情報

「Ms.OOOOOJA! ~あたらしい景色をみにいこう~」

  • 2026年10月18日(日)大阪府 大阪城ホール

プロフィール

Ms.OOJA(ミスオオジャ)

1982年生まれ、三重県出身のシンガーソングライター。2011年2月にシングル「It's OK」でUNIVERSAL SIGMAよりメジャーデビュー。2012年にリリースされた仲間由紀恵主演ドラマ「恋愛ニート~忘れた恋のはじめ方~」の主題歌「Be...」はドラマとともに大きな注目を浴び、同年のレコチョク2012年上半期ランキングで4冠を獲得。配信合計100万ダウンロードを超える大ヒットを記録した。2016年3月に初のベストアルバム「THE BEST あなたの主題歌」をリリースし、2022年2月にはメジャーデビュー10周年を記念したオールタイムベストアルバム「10th Anniversary Best~私たちの主題歌~」を発表。デビュー15周年を迎えた2026年4月には初の演歌カバーアルバム「Ms.ENKA ~OOJAの演歌~」をリリースした。同年10月には、15周年記念ライブ「Ms.OOOOOJA! ~あたらしい景色をみにいこう~」を大阪・大阪城ホールにて開催する。