ナタリー×WOWOW ミュージックスタイルJAPAN PowerPush - The Birthday
WOWOW連動 能野哲彦インタビュー
「本物の音楽との出会い」をコンセプトに、毎月厳選したアーティストを紹介するWOWOWのライブプログラム「ミュージックスタイルJAPAN」。2月の番組では12月19日に東京・日本武道館で行われたThe Birthday「TOUR 2012 “VISION” FINAL」の模様をオンエアする。
ナタリーでは「ミュージックスタイルJAPAN」と完全連動の特集コンテンツを展開。The Birthdayが所属する事務所ベイスの代表であり、チバユウスケらが出演する映画「赤い季節」の監督も務める能野哲彦へのインタビューを実施し、ロックと映像の関係について話を聞いた。
取材・文 / 大山卓也 インタビュー撮影 / 福岡諒祠
あ・うんの呼吸でつながる映像チーム
──能野さん率いる映像チームは、THEE MICHELLE GUN ELEPHANT時代からほぼ同じメンバーで映像を手がけていますね。チームとしての確固たる存在感を感じます。
やっぱりそういうふうに見えるのかな。確かにつながりは深いですね。PV作るにしてもライブビデオ作るにしても、あ・うんの呼吸みたいのはできてるような気がする。
──イメージの共有ということですか?
うん、長い間付き合ってきてるから、例えば(バンドの)メンバーの気分とかも汲みながら、一緒になってああでもないこうでもないって考えられるチームだとは思います。
──同じスタッフチームでやることのメリットはどこですか?
やっぱり今までのいろんなことを踏まえて作れるっていうことかな。例えば新しい曲ができたっていうときに、そこに至るプロセスだったり感情だったり、メンバーの狙いだったりを理解し合えてることは強みだと思います。もしかしたらずっと一緒にやってることで、馴れ合いじゃないけど、わかりすぎてて逆に踏み込めないようなケースも出てくるのかもしれないけど、それでもいいところのほうが大きいからこうやってずっと続けてこれてるんだと思う。
──なるほど。
もちろん新しい出会いとかを拒んでるつもりもないですけどね。でもずっと続いてるいい関係を、あえて壊すっていうか、変える必要も特に感じないので。
バンドの魅力をダイレクトに伝えるために
──そもそも音楽に映像をつけるとき、例えばビデオクリップを作る際の、能野さんのポリシーみたいなものがあれば教えてください。
やっぱりバンドとか曲が持ってるものをダイレクトに伝えたいっていうのはあります。その一方で、広く届けるためにオブラートで包む作業も必要だって思うときもあったりするし。作りこみすぎて、音楽とかけ離れたものになっていく怖さはありますけどね。
──じゃあ能野さんは例えばCGを使った凝った映像には興味はない?
いや、そういうのも面白いのかなって思うときもあるけどね。曲だったりバンドによって合うなら、いつかやる日があるのかも。わかんないけど(笑)。
──能野さんが担当しているバンドは、ダイレクトな表現が似合うバンドが多いということなんでしょうか。
なんとなくそうなっちゃってるよね。なんでだろうね(笑)。
──今回WOWOWでオンエアされるThe Birthdayの武道館ライブも、相当ダイレクトというか、現場の空気を荒っぽいところも含めて映像で伝えていますよね。
ライブ自体がダイレクトだからね。武道館だからといって特別な演出とかもまったくないし。そうするとおのずと映像もステージの、いやステージだけじゃないな、あの空間の気分をできるだけダイレクトに伝えるような方向にいくんですよね。
──そういう映像の方向性は、やっぱり監督の手腕によるところが大きいんですか?
大きいと思う。番場(秀一)くん。
──能野さんから見て番場さんのすごいところというのは?
やっぱりバンドが大好きなところ。音楽が大好きなところ。だから嘘がない。まあ不器用なとこもあるけど、筋が通ってる感じはすごいなって思う。音楽の中にあるダイナミズムとか抑揚みたいなものに、監督自身がどう乗るか。番場くんはそこにすごくうまく乗れてるというか、波長が合ってるんだと思います。
──その波長を監督だけじゃなく、映像チーム全体で共有しているわけですね。
そう、スタッフみんな含めてですね。
──ライブ映像を撮るとき、こうするとカッコよくなるっていうコツみたいなものはありますか?
どうだろうね。好みはあるけど、俺は手持ちカメラが好きで。もちろんフィックス(固定)のカメラも必要だけど、手持ちカメラのライブ感はいいんだよね。
──今回の武道館映像でも効果的に使われていますね。
うまく言えないけど、なんか迫っていくというか、画として強いっていうか。被写体がただ真ん中にいるんじゃなくて、1つのフレームの中で表現ができてる気がするんですよ。
ライブ自体がドキュメントだと思う
──能野さんは、もともとどういうきっかけで映像を始めたんですか?
なんだろうね。ただ好きなだけなんだけど。
──それが今では映画も撮っているわけで。
作っちゃいましたね(笑)。でも音楽が映像と一緒になったときの強さって絶対あると思うし。あ、あれ観た? ブランキー(BLANKEY JET CITY)の映画(「VANISHING POINT」)。
──いえ、まだ観てないんです。
あれはよくカメラ回したなって思いましたね。あれは相当心が苦しいだろうなって。よく回してたと思うし、それをよくつないだなって思ったし。
──能野さんもそういうドキュメンタリー的な映画を作りたいですか?
いや、ドキュメントは無理だな俺は(笑)。すぐ(カメラを)止めちゃうだろうな。
──フィクションがいい?
うん、そうですね。ドキュメントは難しい。カメラが回ってる時点で、撮られてるほうもそれを意識するだろうしね。そのキワキワが面白いのかもしれないけど。むしろライブのステージ自体がドキュメントだと思うし、そこで生々しさが表現できてたら、そこに至るプロセスは別に伝える必要はないんじゃないかなって僕は思うんですよね。
MUSIC STYLE JAPAN
WOWOWライブ
ミュージックスタイルJAPAN
The Birthday TOUR 2012 “VISION” FINAL
2013年2月24日(日)23:00~
The Birthday(ばーすでい)
元THEE MICHELLE GUN ELEPHANT / ROSSOのチバユウスケ(Vo, G)を中心に結成されたロックバンド。2005年にイマイアキノブ(G)、ヒライハルキ(B)、クハラカズユキ(Dr)の4人体制で始動。2006年8月にデビューシングル「stupid」をリリースして以降精力的なリリースを重ね、2008年には初の日本武道館公演を成功に収める。2010年8月に出演した「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2010」を最後にイマイが脱退。2011年からは新ギタリストにフジイケンジを迎えて活動を続けている。2012年7月には通算6枚目のアルバム「VISION」をリリースした。
能野哲彦(のうのてつひこ)
株式会社ベイス代表取締役。1990年代よりTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTのゼネラルマネージャーを務め、映画「ミッシェル・ガン・エレファント THEE MOVIE-LAST HEAVEN 031011-」を企画。チバユウスケをはじめとする多くのアーティストを裏方として支える。映像にも造詣が深く、2012年公開の映画「赤い季節」では監督・脚本を担当した。