ナタリー PowerPush - MO'SOME TONEBENDER
MO'SOME TONEBENDERついに帰還!2年の“葛藤”を経て得た答え
MO'SOME TONEBENDER史上もっともポップなアルバム「SING!」から2年2カ月、ようやくニューアルバム「STRUGGLE」が完成。「これぞモーサム!」と万歳三唱したいぐらいにモーサムらしい、徹底的にぶっ壊れていて、イカれていて、限りなくロマンティックで、しかも笑えるという最強のアルバムに仕上がっている。インタビュー中でも言ったが、「SING!」のようなポップなモーサムに賛否両論はあっても、今作のようなモーサムを嫌いな人はまずいないはずだ。しかもそれはただの原点回帰や初期衝動ではなく、2年2カ月におよぶ“STRUGGLE=葛藤”の果てに辿り着いた新境地なのである。
現在のモーサムのライブはサポートのドラマーを加え、なんと藤田勇がステージフロントに出てきてギターやサンプラーを弾きまくり、ときにはツインドラムとして叩きまくるという前代未聞の態勢でおこなわれている。その異様なまでに高いテンションとアグレッシヴなサウンドは、衝撃的ですらある。アルバムの仕上がりは完全にそれに見合ったものだ。
バンド分裂の危機にまで遭遇した沈黙期間のさまざまな煩悶、葛藤、逡巡。アルバム完成に至る長い道のりと楽曲にこめた思いを、百々和宏がすべて語り明かした。
取材・文/小野島大 インタビュー撮影/平沼久奈
結果がバキッと出せなかった「SING!」
──アルバムは2年2カ月ぶりになりますね。その間、つかず離れずで見てきたので、なんとなく様子はわかってたけど。
どう見えた?
──悩みつつあちこち考えつつ。でも今は、どこか吹っ切れて前向きなものが出てきたかなって。
うんうん。去年がふてくされモードで、今年がギンギンに盛り上がってきたかな。
──なんでふてくされてたの?
ちょうど日本コロムビアと契約が切れて、急いで次を考えなくてもいい状況になって。次のアルバムの話はあったんだけど、まだまだって思った。今のモーサムのまま次に進むのは良くないから、ちゃんと次が見えるまで制作に入るべきじゃないと。
──それまではわりとハイペースでレコードを出してましたね。
うん。前2作くらいはまるっきりライブを無視した作品だったからね。ライブの場で消化しきれなかった部分もあったんですよ。特に「SING!」がメロディアスな歌モノに特化した内容だったんで。ライブのクオリティと、観にきたお客をぎゃふんと言わせるものができてたかというと、あのツアーだけじゃ無理であったと。
──2年前はわりとポップな方向性に向かってたけど、それはライブバンドとしてのモーサムと両立し得ない感じだったと?
むしろ、ポップなモーサムとライブバンドとしてのモーサムを両立させたかったんです。モーサムとして高いモチベーションを持ってできるチャレンジだったんですけど、結果がバキッと出せなくて。
──それは自分たちの納得度の問題?
いや、お客さんも含めて。掴めてないなって。ズレがあるんだって思いましたね。だから時間がかかるなってのはハナからわかってたんで。でも、それをやってきたでしょって自負もあったし、シーケンス導入したときもそうだったし。
──でもなかなか受け入れてもらえなかった。
「SING!」のモードは特にね。だからもう1作その流れを汲んだ作品を作って、自分らのライブのクオリティも高めていって、「あ、このモーサムもありやな」って持ってく選択肢もあったけど……ハートの中はそういうモードになりきれなかった。
──端から見てたら、あれで気が済んだのかと思ってたけど、そうではなかったと。
いやあ、気が済んではいないですね。やりきった感じでもないし。まだ次があるって思う。お客さんをもっと沸かせたいしね。
──お客さんも、やりきったところまで観て判断してほしいと。
うん。その前の「C.O.W.」のときも、リリースツアーでついてこれてないお客が半々くらいだったのね。
──あれは一番過激な変わり方でしたもんね。
でもその翌年の「SING!」のときのツアーには、「C.O.W.」の曲が受けるんだわ。
──半拍ズレてるんだ(笑)。
そう(笑)。だから、ライブで回った感触も含めてもう1枚その流れで作るっていうのは頭の中にはあったけど、心がそうはならなくて。
「自分の意見が通らないんだったら辞める」
──そこの踏ん切りがつかないまま2年間経って。
ツアーが終わって2009年頭にメンバーで集まって話したときに、自然と3人の意見が「ガツガツしたいな」って方向で一致して。
──当時は「モーサム大丈夫か?」ってバンドの存続を危ぶむファンの声もあったね。ファンの子から「モーサムは大丈夫か?」って声も上がってたんだけど、実際のところどうなんですかって訊かれて。そんなこと俺に訊かれても……。
あははは!(笑)
──じゃあ、そういう感じではなかった?
いやいや、そういう感じでしたね。だから……意見が割れたら「ほかでやれば?」「ソロでやれば?」「じゃあ解散するか」みたいな。解散じゃねえな、(藤田)勇が「抜ける」って言いだしたんだ。
──どういう意見の相違だったの?
うーん……なんか「SING!」までの流れで、1ツアー回ってもやりきった感も出なかったし。何が悪いのかわけがわかんなくなったというか、どういうジャッジでこうなったのかわかんなくなって。それで、勇曰く「自分の意見が通らないんだったら辞める」と。
──そういうのがあったから、彼主導で「C.O.W.」を作ったんじゃないの?
そうそうそう。やったよ!(笑)
──好き放題やったように見えたけど(笑)。
まあ、そういう男なんでね。わかっていて付き合ってるんで。で、言ったら言ったですっきりして、勇はすぐ撤回したんですけど(笑)。辞めてもいいけど、今じゃないやろ、辞めたら悔しいやんて。もっと華々しく散ったほうがいいんじゃないのって。それで、「じゃあ、リーダーは勇でいいわ、今日からお前がリーダーだ」ってことになった。でも誰も言うこと聞かないんだけど(笑)。
CD収録曲
- Hammmmer
- youth
- Junk
- けだるいDays
- Drum Song
- 教祖様はスレンダー
- PURR
- アイデンティティ
- Black In,Black Out
- 七月二十日
- Kingdom Come
MO'SOME TONEBENDER(もーさむとーんべんだー)
1997年に福岡で結成されたロックバンド。メンバーは百々和宏(Vo,G)、武井靖典(B)、藤田勇(Dr/現在はG)の3名。年間100本に達するほどのライブ活動を行い、2001年にはアルバム「HELLO」でメジャーデビュー。迫力あるロックサウンドで高い評価を獲得している。ダイナミズムあふれるライブパフォーマンスには定評があり、各地のフェスにも精力的に出演。2007年4月には初の日比谷野外大音楽堂でのワンマンライブも成功させた。その後2年間にわたって何度も試行錯誤を重ね、2010年に精力的な活動の再開を宣言。ドラマーだった藤田がギタリストにパートチェンジし、現在はサポートドラマーを迎えた4人編成でライブやレコーディングを行っている。