ナタリー PowerPush - MO'SOME TONEBENDER

MO'SOME TONEBENDERついに帰還!2年の“葛藤”を経て得た答え

あまりにも本気で力が入りすぎたら笑えてくる

──モーサムってもともとエクストリームなことをやっていても、決してマニアックでカルトなバンドではないじゃない?

うん、カルトなバンドではないですね。

インタビュー風景

──存在自体がポップっていうか。だからポップな曲をやるのは全然OKなんだけど、そこでさっき話に出たような、お客さんが求めるものとの若干の食い違いにタイムラグが生じたのかもしれないね。

ね。あと、メンバーが一丸となれてたかっていうと、どうかなとも思うしね。

──俺がモーサムに求めてるものや好きな部分、「ヤバイところ」「イカレたところ」「笑えるところ」が今回のアルバムにはちゃんとあるなと。

おお!

──だから、これは正しいモーサムだなって。

あははは(笑)。

──特に笑える要素が一番大きなポイントで。単にヤバイだけだったらいくらでもほかにいると思うけど。そのあたりは自分たちで意識してるんですか?

うーん……別に笑かそうと思ってやってなくても、あまりにも本気で力が入りすぎたら笑えてくるっていう感じですよね。やり切って出てくる笑いっていう。

──あまりにも極端なものに出会うと笑っちゃうみたいな。

そうですね。狙ってはいないんだけど、笑いにたどり着く。ライブの現場でもね、お客が笑ってるんですよ。ニコニコしながら観てて、それがうれしかったですね。

──「うんうん。これこれ!」って感じだもん。だって、勇くんが前に出てきてすごく楽しそうに、ガンガンやってたらこっちも笑いたくもなるよ(笑)。ああ、好き放題やってるな、楽しそうだなっていうのがわかるし、どんなに激烈な音でやっていてもどこか愛嬌があるんだよ。

うんうん、でしょうね。

曲の善し悪しよりも“STRUGGLE”してるかどうか

──じゃあレコーディング自体は順調に進んだ?

曲作りは去年の頭から始めたんですけど、ずーっと作業をしてた気がするので「完成した、やったー!」っていう気持ちが今回は全然なかったですね。レコーディングスタジオに入っていた日数は少ないんですけど、ずっと悩んで曲作りしてたなって。今回は埋もれた曲も相当あるし、デモも合わせるとね、俺だけでもソロ用の曲とあわせて20曲くらいありましたね。

──ボツ曲と採用になった曲の違いってなんですか?

曲の善し悪しよりも“STRUGGLE”してるかどうか……今のバンドの空気に合う曲しか入れてない。そうなると、70分のアルバムなんてありえんなって話になって、今回は46分くらいで収まってます。

──そうやってもがき苦しんでいる姿が、ちゃんと音に出てるからリアルだし。

だからね、意外とシリアスなだけじゃないなと。自分でも後から聴いて思ったんですけど、笑えてくるぐらいの音になっとる。

──「アイデンティティ」「Hammmmer」は、あまりにも極端すぎて笑えるというか。ここまでやらなくてもいいんじゃないのっていう(笑)。この間、DJやって「アイデンティティ」をかけたの。

あ、ホント?

──いろんな人に「これ誰ですか?」って訊かれて、モーサムって答えるとみんなすごく納得したような顔をしてた(笑)。

あははは!

──今回アルバムを一番象徴する曲はどれですか?

「Hammmmer」だと思って1曲目にしたんですけど、一番記憶にあるのは「けだるいDays」かな。アルバム全体にあるささくれ立った感がまるでない曲調で、最初にみんなでデモを聴いたときの評価が低かったんです。

──でも、この曲がアルバムの中でいいアクセントになってると思うけどね。

武井が持ってきたけどすごい悩んでいて、勇が1回持ち帰ってそれをいじり倒して、一応上がったような状態で返ってきて。歪んだシンセが印象的だけどこの曲調じゃなあって思ってたんだよね。でも、最終的に歌詞が乗ったときに(注:当時病床にあった百々の友人であるガロリンズの藤井よしえに捧げた歌詞。11月7日死去)、これはヒリヒリもがいてるなって。だからあの曲が入ると入らないでは、アルバム全体も変わってきただろうな。

──バランス上、入ってたほうが絶対に良いよね。

うん。でもバランスなんて考えてなかったんで。

──でも入れたってことは、無意識のうちにそういうのがあったんじゃない?

そうですね。

歌うと尋常じゃないテンションになる「七月二十日」

──「七月二十日」ってタイトルにはどういう意味があるんですか?

それね……(独り言気味に)どうしようかなあ……ま、いっか、もう。いつも取材では適当にお茶を濁してたんですけど……母ちゃんの命日。何年前かな……3年、4年……来年7回忌かな。

──それを今、形にしたのはなぜですか?

勇が作った曲で、タイトルは後付けなんですけど。実はこの曲はタイトル決める前からライブでもやっとったんだけど、自分が尋常じゃないテンションになるんですよ。で、そのときに浮かぶのが、母ちゃんの命日の1日。ああだったな、こうだったなっていろいろ浮かんできたんで、こっそり曲タイトルの候補に入れといたんです。そうしたら「いいね」って意見が出て、2人から「『七月二十日』って何?」って訊かれたら「勇と武井がバンド費払ってくれた日」って答えてた(笑)。

インタビュー風景

──「けだるいDays」もそうだけど、そういう個人的な思いも込めたアルバムなんだ。

俺、あんまりそういうのをバンドに持ち込んじゃいかんなと思いつつ、そうせざるを得ないテンションになってるんで、そこは嘘つきたくないんですよね。でも俺の個人的な思いが出すぎると、勇が嫌がるんですよ。特に勇の曲にはそういうのが必要とされないんで(笑)。

──バンドによっては、歌詞を書かないメンバーは歌詞について無頓着だったりしますけどね。極端なことを言うと、ボーカリストが何を歌ってるのか知らないって例もあるし。

うちもあまり内容に関して語ってこない。でも気にしてないわけじゃなくて、それぞれ武井も勇も自分が作ってきた曲については、俺が書いた歌詞について「これはそういうイメージではない」と言ってきますね。「じゃあどういうイメージ?」って訊くと、なかなか説明できない(笑)。だから感じ取るしかなくて。でも、絶対違うなっていうときもあって、俺が完全に「見えた!」ってときはゴリ押しします。「けだるいDays」はそうでしたね。勇は違うと思ってるだろうけど。

ありがちなロックのこだわりにやっとクソ食らえって言える

──今回は「SING!」からの流れをうまくリセットできたなという感じですか?

どうなんですかね。ホントにね、ビルにダイナマイトを突っ込んで壊す、あんな感じですよ(笑)。

──全部ぶっ壊して。

そうそう。やっぱりドラムが替わるってのは大きいですよ。全然違う。

──ただ単に替わっただけじゃないですからね。

替わって「なんじゃこりゃ!?」みたいな余計なものが増えた(笑)。

──3人組バンドにメンバーが1人増えて、前のドラムがギターになるっていうのは前代未聞だからね。

ホント、3ピースのロックがうんたらかんたらみたいな、ありがちなロックのこだわりにやっとクソ食らえって言えるなって。

──じゃあ本当に会心の1枚ができたなと。

やっぱりね、売れる気ございませんと半分笑いを込めて言ってるんだけど、本音はこれを売りたいなって思ってますね。売れるっつうか、次につながる結果をちゃんと出したいなって。

ニューアルバム「STRUGGLE」 / 2010年12月8日発売 / 2940円(税込) / 日本コロムビア / COCP-36552

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CD収録曲
  1. Hammmmer
  2. youth
  3. Junk
  4. けだるいDays
  5. Drum Song
  6. 教祖様はスレンダー
  7. PURR
  8. アイデンティティ
  9. Black In,Black Out
  10. 七月二十日
  11. Kingdom Come
MO'SOME TONEBENDER(もーさむとーんべんだー)

1997年に福岡で結成されたロックバンド。メンバーは百々和宏(Vo,G)、武井靖典(B)、藤田勇(Dr/現在はG)の3名。年間100本に達するほどのライブ活動を行い、2001年にはアルバム「HELLO」でメジャーデビュー。迫力あるロックサウンドで高い評価を獲得している。ダイナミズムあふれるライブパフォーマンスには定評があり、各地のフェスにも精力的に出演。2007年4月には初の日比谷野外大音楽堂でのワンマンライブも成功させた。その後2年間にわたって何度も試行錯誤を重ね、2010年に精力的な活動の再開を宣言。ドラマーだった藤田がギタリストにパートチェンジし、現在はサポートドラマーを迎えた4人編成でライブやレコーディングを行っている。