ナタリー PowerPush - monobright
大胆不敵な「DO10!!」宣言 新曲「英雄ノヴァ」で鳴り響くファンファーレ
monobrightが驚異のリリース計画「DO10!!」(怒涛と読む)を宣言した。その内容がぶっ飛んでいてすごい。3rdアルバムのリリース前ながら、4thアルバムまでのリリース計画を大胆にも発表。来年夏までの1年間に、ライブ展開までもが綿密に詰め込まれている。なんでも、桃野陽介(Vo, G)曰く「曲作りで誰にも負ける気がしない」そうだ。
まず皮切りとして、マニフェスト的な8thシングル「英雄ノヴァ」を4月21日にリリース。「ロック英雄待望論」をテーマとした激ロックな意欲作だ。その自信の源たるや何なのか。いつになくテンションの高い、本気モード突入の桃野陽介に話を訊いた。
取材・文/ふくりゅう
2010年ってとてつもなく未来だと思ってた
──なんだかアーティスト写真がすごいことになってますね。
ポップコーンになっちゃいました(笑)。今回「爆発」がコンセプトでしたから。今後の僕らに必要なんですよ「爆発」が。
──確かに、オフィシャルサイトに掲載された驚異のリリース計画「DO10!!」宣言はインパクトがありました。なぜ1年の間に2枚のアルバムをリリースし、ライブ三昧を決め込もうと思ったんですか?
2010年を迎えたときに決めたんです。2010年って中学生くらいの頃、とてつもなく未来だと思ってたんですよ。宇宙服で、浮いた車が街を走っててみたいな未来都市のイメージがあって。でも、案外ぬるっと現実的に迎えちゃったなーと思いまして。それで無性にくやしくなったんです。そこで、とりあえず誰もやってないことをやってみようと考えて。思いつきやひらめきで行動してみようと。ならば「来年の夏までの日程を宣言するバンドっていないぞ!」と(笑)。あと、今とにかく曲作りが楽しくてしょうがないんですよ。
──そして完成したニューシングルですが、1曲目に収録された初回限定生産盤ボーナストラック「Misirlou」(映画「パルプ・フィクション」でも使用された有名曲のカバー)は、ロックの王道感満点のカッコいいサウンドになってましたね。
今回、初めてカバー曲をやってみたくなったんです。曲は、monobrightがもともと持っているニューウェイブ世代の音だったり、自分らしさを表現できる曲、キャッチーなインパクト重視ってところで、ベースの出口が選びました。で、ボーナストラックなのに1曲目に収録っていう斬新さもいいなって。
──TV番組でもよく流れている耳馴染みのある曲だから「あれ? なんだろう?」って思えるし、フックも強いですよね。かつ、スカテイストなアレンジで、ライブ感も出てました。
ライブ感は今回大事にしましたよ。全体で勢いがあるサウンドにしたくってこだわったんです。
──「2010年」という、わかりやすいキーワードがありつつ、さらに分厚いサウンドでライブ感を出すっていうのもテーマなんですね。
バンド自体、変化が好きなんです。変化することに快感を覚えている部分があって(笑)。なので、今はそんなモードです。
「現代は音楽ヒーローがいない!」っていう悲鳴
──タイトルチューンである2曲目の「英雄ノヴァ」も、イントロから勢いありますよね。この曲の存在があることで、大胆不敵な宣言にも納得がいきましたから。
今までストレートなロックって案外やってなくて。僕らってロックをやってもニューウェイブだったり、かわいらしいエッセンスを取り入れていたりしてたので、一見草食男子に思われがちだったと思うんですよね。でも今回は「肉そのものだぞ!!」みたいな、肉食っ気でオラオラしている部分を見せたかったんですよ。
──確かに、畳み掛けるパワフルな感じがヤバいです。この曲はどんなきっかけで生まれたんですか?
これはもうど真ん中ロックチューンにしようって気持ちがあって。でも、僕はその時々に聴いていた音楽に影響を受けるんですね。ちょうどその頃はたまたまOUTKASTとかヒップホップを聴いてまして。ふと、言葉の強いロックをやりたいなって思ったんです。
──ヒップホップからのインスパイアってのもユニークですね。でも、確かに歌詞に強いメッセージが込められていると思います。
「英雄ノヴァ」には、僕らのメッセージを力強く込めてます。「現代は音楽ヒーローがいない!」っていう悲鳴みたいなものを伝えたいって思って。なので、切実に語りかけるような感じになってますね。
──この熱さは伝わると思いました。新鮮でしたね。
そうですねー。でも、熱すぎる展開なので息継ぎが辛くて辛くて(笑)。なんでか、どんどん息が辛くなっていく曲が増えてきてるんです(笑)。
勢いに乗ってるバンドの空気感が生み出すエネルギー
──曲作りに向かうにあたって、テンションを上げるために心掛けてたことはありますか?
僕はたいがい脱げばテンション上がるので(笑)。そういうキャラなんです。周りの人たちはウブなヤツだと見てるかもしれないですけど、違うんだぞと。ほぼ全裸で歌うんだぞっていう(笑)。でも、ライブでポロリしても外国人みたいにパワフルな感じにはならないので(笑)。練習では、脱いでテンション上げてたりしましたよ。
──本作をレコーディングする上で、サウンド面で大きな影響を受けたものってありますか?
そうですねぇ。あるとしたらナチュラルさというか、10代の頃に自分が聴いてきた音楽ですね。これまでは60年代、70年代、80年代ニューウェイブの要素が強かったんですけど、もっとナチュラルに90年代のロックの影響を出していきたいなって思ってました。
──90年代だとどの辺りを聴いてたんですか?
高校のときなんかはグランジを聴いたり、タイムリーなものだったらエモコアだったり。アメリカのインディーロックとか、イギリスで言ったらBLUR、マッドチェスターからOASISとか。そんなサウンドが染み付いてますね。
──その辺のサウンドからの影響は3曲目「すたらい」に感じられますね。
そうですね。「すたらい」や4曲目「真夏のデストロイ」にはそれが出てます。やっぱり染みついてる分、表現も豊かになる感じはありましたね。今はとにかく音を届けたいって思いが強いので、ナチュラルに伝えるっていうのが自分の中ではしっくりきている感じがしてます。まぁ、今後あまりの怒涛なスケジュールになりそうなので、ナチュラルじゃないと太刀打ちできない部分もあるんですけど(笑)。
──夏にはツアーもフェスもありますしね。
今はまだレコーディングだけって感じなんですけど、多分夏のツアー入ったら死んでるんじゃないかなと(笑)。考えてみるとツアーもあってレコーディングもあって曲作りもあってってなると、ツアー先で曲作りするのか?って考えたり……これから、やったことない展開がいっぱい待ってますね。それを詰めてやるってなると多分……ナチュラルハイでおかしなことになるんじゃないかと。それも含め、自分をどんどん追い込んでいきたいんですよね。
──それだけ曲のタネはだいぶ見えてきている?
そうですね。今は、とにかくいろんな曲をやりたくて。思いついた衝動でレコーディングに入りたいぐらいなんです。これまでは、少なくとも半年くらいタイムラグがあったんです。曲自体、もっと昔からあるものもあったし。そういうことを考えたら、これからは本当に旬なものを出していけると思います。
──確かに、追い込まれたときこそ自分の中にあるものがよりストレートに生まれてきそうですよね。
勢いに乗ってるバンドの空気感だったりとか、追い込まれたときに生まれるエネルギーっていうのが面白い要素になる確信があるんですよ。
monobright(ものぶらいと)
桃野陽介(Vo,G)、松下省伍(G)、出口博之(B)、瀧谷翼(Dr)の4人から成るロックバンド。2004年11月に桃野の弾き語りプロジェクトとしてスタートし、2006年6月に現メンバーが加入。地元・北海道で精力的なライブ活動を行いながらファンを増やしていく。2007年1月に東京に拠点を移し、同年7月にシングル「未完成ライオット」でメジャーデビューを果たす。その後も、2ndシングル「頭の中のSOS」、1stアルバム「monobright one」と順調にリリースを重ね、2009年1月にシングル「アナタMAGIC」がアニメ「銀魂」の主題歌に起用され急激に支持層を拡大。日本のロックシーンを担う新星として注目を集めている。インディーズ時代から黒縁メガネをかけ、白いポロシャツにスリムジーンズというファッションを貫いていたが、2009年4月に2ndアルバム「monobright two」のリリースを機にビジュアルイメージを一新した。