ベストアルバムの意義

持田　ベスト盤の選曲は自分たちでされてるんですか？

Maynard　もちろんそうなんですけど、50曲ですから全部ではなくて（笑）。チームのスタッフにも考えてもらって、「いやいや、これは入れなきゃいけない」「これは聴いてもらわなきゃ」っていうのをいい感じにまとめました。でも難しかったです。

DICK　ホント難しかったですよ。

Maynard　自分のベストってわかんないんですよね。シングルの曲は知ってもらう機会は多いけど、自分の中のベストなのかというとそうでもないこともあるし。

──MONKEY MAJIKさんのベストアルバムはほぼ全アルバムから数曲ずつピックアップした形になっていて、冒頭にインディーズ時代の音源も入ってるのが面白いなと思いました。

Maynard　自分たちとしては恥ずかしいって気持ちにもなりますけどね（笑）。

Blaise　本作はリリース順に曲を入れているので、バンドの15年を本みたいにチャプターで振り返ることができてよかったです。特にそのPart 1にあたるインディーズのアルバムの曲からはバンドの始まりっていう雰囲気をすごく強く感じられる。ゼロからレコーディングしたことがなくて、「どうやったらうまくいい音楽を作れるのか」ってところからスタートしてたから、ギターの音の出し方、アンプやマイクセッティングとかどうすればいいのって状態で。でも「これからがんばりましょう」って言いながら、お金がない中で自宅のリビングとか安いスタジオでアルバムを作ってた時代の音が聴ける。このアルバムは自分たちの人生のブックオブライフ的な作品になったと思います。一緒に面白いことをやり続けて、一緒に飲みにも行ってる僕たちの15年を振り返られる。

“旅”つながり

──今回お互いの作品にはそれぞれ新曲として、ELTはアルバムタイトル曲「Tabitabi」、MONKEY MAJIKは「Journey」という、“旅”を表すナンバーを収録しているという共通点があります。

Maynard　そういえば！

伊藤　おお、確かに。

──ご自身のキャリアを振り返るタイミングで“旅”というキーワードが共通して出てきたのが面白いなと感じました。

TAX　Blaiseと「最近なんか面白い本とか読んでる？ 面白い映画ある？」とかそういう他愛のない話をしてて。そこでたまたま、アメリカのJ・F・ケネディ元大統領のスピーチの話になったんです。2人でYouTubeでスピーチの動画を観ながら「すごい立派なこと言ってる、この人」って。

一同　あははは（笑）。

TAX　その中の「日常生活に置き換えると、どんな大きな旅でも小さな旅でも何か目標を持つには、まず準備が大事」っていうところから“旅”のヒントをもらって。それは先ほど持田さんから言ってもらった「当たり前のことを見失わない」っていう自分たちのメッセージにも通ずる部分で、そのシンプルなところにもう1回立ち返った曲を作ろうと思ったんです。15年を区切り、16年目っていう新たなスタートを切るような内容を曲にしたらいいんじゃないかねって話をして。それで、今回「Journey」っていう歌が生まれました。

持田　私たちはこれまでいろんな土地の人たちに会いに行って、そこで育ててもらったところがあるなって思ったんです、振り返ってみると。あとはライブとかで、直接的にお客さんと会える時間がすごい好きで。

──なるほど。

持田　それに自分たちが好きなことをやり続けられているってすごい幸せだなって改めて思うんです。忙しいとそれをすぐ忘れるというか「苦しい、しんどい」と思うこともあるんですけど（笑）。でもやっぱり、心地いいなとか、好きだなとか思える。そういう小さな思いが10年、20年って時間とともに1つひとつ積み重なって、これからも“旅”が続いていくといいなという願いも「Tabitabi」に込めてますね。

Blaise　そこは僕らの作品のメッセージとすごい近いかもしれないですね。1つのちっちゃいことから、素晴らしいものを生み出すっていう。

続いていく「A.RI.GA.TO」

──皆さんが今後についてどんな気持ちでいらっしゃるのか聞かせてください。

伊藤　例えば10年、20年が経って、自分の作品にその分の重みを出さなきゃっていうプレッシャーはもちろんあるんですけど、自分で出そうとはまったく考えてこなかったんですよね。たまたま僕らはこういう世界の中で音楽を生業にできてるんですけど、この世界には自分たちだけじゃなくてたくさん作り手がいて。やっぱり人を喜ばせたり泣かせたりとか、そこを落としどころにしてみんながんばってると思うんですよね。で、僕らはポップスをやってるんで、月並みなんですけど親しみのあるいい曲をたくさん残したいですね。

持田　私も日常の中に音楽があるような感じがすごい好きで。だから、すごく大それた何かをするとかではないんですけど、リスナーに寄り添えるようなものを作っていきたいと思いますね。

伊藤　それに僕は音楽をアルバムで聴いて育った世代ですが、これからは配信などによって楽曲単位でとか、音楽の聴き方も変わっていくだろうなと思っていて。でもそこで自分が見失ってはいけないものと、柔軟に取り入れるべき未知のものを一緒にできれば楽しいなとは思ってます。実際に僕は最近になってようやく知らないことを楽しいなと思える感じに成長してきたような気がしています。まあ、もし自分がEvery Little Thingを20年以上続けることがはじめからわかっていたら、今以上にミュージシャンとして成長できてたとは思うんですけど。

Maynard　あはは（笑）。でも同じように僕らも15年前に「バンドを15年間続けられる」って言われてもまあ信じなかったろうし、実際に当時期待してもいなかったから。

伊藤・持田　あはは（笑）。

Maynard　いやホントにね。よく考えると何が目標だったのかな。別に「売れたい！」っていうのもなかったし。

──ロックバンドらしく「日本武道館のステージに立ちたい」などは？

Maynard　なかったですね。今年の2月にライブをしたんですけど、それも15周年やりましょうよって言われて「じゃあやりましょう」って（笑）（参照：15周年MONKEY MAJIK、盟友＆ファンと作った温かい初武道館）。ただ15年間ずっと誰かが応援してくれて、僕たちは今もここにいられる。だからこれからも同じで僕たちが残ってさえいればよくって、あえて何かスペシャルなことをしなくてもいいと思うんですよね。それで今回のアルバムのタイトル「A.RI.GA.TO」は僕らの音楽を「また聴きたい」って求めてくれる人たちに向けての感謝。これは僕たちの曲の中によく出てくる言葉で。いつも感謝だけは忘れないようにしたい。だから今回は15年の「A.RI.GA.TO」、それでもし30年とかいけたら、今よりももっとすごい感謝をする（笑）。

Blaise　最初は「DO.U.MO」とか軽い感じにすればよかったね。それで5年後とか次のタイミングで「A.RI.GA.TO」、さらに5年で「A.RI.GA.TO.GO.ZA.I.MA.SU」とか。

持田　あははは、タイトルもずっと続くんだ（笑）。