音楽ナタリー Power Push - MONKEY MAJIK×Every Little Thing

15周年と20周年、それぞれの旅路

がんばらない東北のよさ

伊藤 僕、MONKEY MAJIKさんの東北というか宮城を拠点にしている感じがうらやましいなって思うんです。東京にばかりアーティストが集まってなくてもいいと思ってるし。

対談の様子。

Maynard 東北は青森にいたときからけっこう好きで、「ずっと日本にいるんだったら北のほうにいたいな」っていうのはありましたね。それに頭の裏に音楽シーンについての考えもあって。例えばイギリスだとマンチェスターだったりリバプールだったり、都市ごとに音楽シーンがアツいじゃないですか。日本にそれが足りないとまでは思わないけど、仙台にはまだシーンと言えるものがないなと思って。それを作りたいというか、大事にしたいなって思ったんです。それに東北にはちょっと怠けてる人たちも多かったし。

──ええ?(笑)

Maynard 以前、岩手県で「がんばらない」っていうスローガンのムーブメントがあって「カッコいいな」と思ってたんです、スローライフっていうか。だから俺もがんばらないで東北にいます(笑)。

Blaise 仙台に友達もいるし、面白い人たちのコミュニティがどんどん広くなっていって。それで「別に東京に行かなくてもいいんじゃない?」って。家はここだから。

MONKEY MAJIKの音楽の魅力

──先日リリースされたELTのアルバム「Tabitabi」にはMONKEY MAJIKの提供曲が2曲入っていますね。それ以前にもお2人が制作をオファーしたことがあったと伺っています。

持田 そう。もともとは2014年に私が「ホノルルマラソン」で走ることと、そのテーマソングを歌うことになったのがきっかけで(参照:ELT持田香織「ホノルルマラソン」で初フルマラソン完走)。これまで42.195kmなんて走ったことないし、不安と隣り合わせだったのでMONKEY MAJIKさんに背中を押してもらいたくて、ダメ元でお願いしたんです。

持田香織(Vo / Every Little Thing)

──なるほど。もともと好きだったMONKEY MAJIKに。

持田 MONKEY MAJIKさんの曲って、「いつもそばにあるもの、当たり前のように思えることが実はすごく大事だ」ってずっと言ってくださってるような気がして。それでそのときも力強い言葉をいただけたらすごいうれしいなと思って。それにサウンドから大地のイメージを感じるので、やってもらえないかなあって声をかけさせてもらったんです。

Maynard ありがとうございます。

持田 そのときはご自身のアルバム制作を進めていたタイミングだったので実現しなかったんですけど、後日私たちがアルバムを作るときに「あのときにできなかったから」ってご自身の楽曲を候補として6曲もくださったんです。好きなのどうぞ、みたいなふうにおっしゃっていただいて。

伊藤 「えー!」っていう(笑)。

Maynard でも僕たちはその中から2曲も選んでいただけたっていうことにびっくりしました。ありがとうございます。

「さよなら」の変化

Maynard 楽曲のアレンジにも驚きました。自分たちが作るものはどうしても自分の声をイメージしちゃうので、持田さんがどう歌うのかすごく楽しみにしてたんですよ。できあがったときにすぐみんなで聴いて。

DICK 特に「さよなら」をあんな低いキーで歌うとは思ってなかった。

持田 あはははは(笑)。

Blaise(Vo, G / MONKEY MAJIK)

Blaise もともと男が歌うことを想定していた自分たちの曲がELTさんのものになってるってことにすごく感動しました。

伊藤 いつも考えるんですけど、いただいた楽曲に自分たちの匂いをほんのちょっと出したいなと思ってるんですよね。元のメロディはそのままで、違う調味料をちょっとだけ入れるとか。僕たちは職業ミュージシャンじゃなくてEvery Little Thingだから、そういうのを感じてもらえないと逆にダメなのかなあと。

Maynard 自分の曲だとわかってても、聴いたときに「なんかこの曲知ってる!」って思いました。それぐらい印象が新鮮で美しく仕上げてもらって。ホントにうれしかったです。

伊藤持田 あははは(笑)。

TAX 「さよなら」は最初男性目線で、身勝手な男性の話を歌詞にしていたんです。そこに女性の視点も入れたら面白いかなって思って女性目線の歌詞を入れたもので。男性が女性を置いて家を出て行ってしまう、でも実はその女性は狸寝入りしていて、出て行く彼をわざと見逃したってストーリーの歌詞を書いて。

持田 すごく面白いですよね。私が小さいときに聴いてた日本の歌謡曲の歌詞みたいに1曲の中に掛け合いがあって。

Maynard カラオケのスペードとハートですね(笑)。

持田 そうそう(笑)。「うわ、すごい好きこの感じ」と思いました。

TAX でも詞を書き上げてから持田さんがご結婚されたニュースを聞いて……(参照:Every Little Thing持田香織、一般男性と本日入籍)。

一同 あはははは(笑)。

TAX そんな方にこの歌詞で、大変申し訳ないことをしたなって(笑)。

新しいきっかけになる

──お互いアニバーサリー作品ということで、今までのキャリアを総括する楽曲が詰まった作品をリリースしましたね。

持田 はい。と言ってもコンプリートベストは2回目で「またですか!」っていう気持ちもあったんですけど(笑)。でも私たちの音楽を聴いたことがない人もまだまだたくさんいて、何がきっかけになるかわからないなって思ったら、こういう作品をまた出させてもらえることは素敵だなって。ライブに小学生の男の子やおじいさんがいて「どういうきっかけで私たちのライブに行こうって思ってくれたのかな」ってすごく不思議に思うんです。

Maynard わかります。ライブに来てくれるお客さんは毎年、毎回変わるし。あと持田さんのように家族で聴いてくれてるのか、小学生の子とかが来ると「なんで僕らのことを知ってるの?」って思います。そんなふうに、幅広い年代の人たちにも手にとってもらうきっかけとしてベストアルバムっていうのはいいですよね。

伊藤一朗(G / Every Little Thing)

伊藤 あと、自分の作品を振り返るだけでも時代を感じますね。例えば「このときはこうやってレコーディングしてたな」とか、自分のギアの入れ方もまったく違っていて、それはそれで昔のよさがある。

DICK MONKEY MAJIKのベストアルバムには50曲が入ってて。それだけあると普段ライブでやらない曲や、僕ら自身すごくひさしぶりに聴いた曲もやっぱりあるんです。3、4年前の曲でもライブで全然やったことがないと、「わあ懐かしい」って感じました。

MONKEY MAJIK ベストアルバム「MONKEY MAJIK BEST -A.RI.GA.TO-」 / 2015年10月21日発売 / binyl records
3CD+Blu-ray / 7020円 / AVCH-78082~4/B
3CD+DVD / 5940円 / AVCH-78079~81/B
3CD / 3780円 / AVCH-78085~7
MONKEY MAJIK(モンキーマジック)
MONKEY MAJIK

カナダ人の兄弟Maynard(Vo, G)、Blaise(Vo, G)と日本人のTAX(Dr)、DICK(B)からなる仙台在住のロックバンド。 2000年に結成され、2006年1月にbinyl recordsより1stシングル 「fly」 をリリース。ネイティブな英語と日本語が交互に飛び出す歌詞と、洋楽と邦楽の双方の魅力を取り入れたメロディで好評を博す。2ndシングルの 「Around The World」 はフジテレビ系ドラマ 「西遊記」 の主題歌としてヒットを記録する。2011年1月には 「東北観光親善大使」 に任命され、同年から東日本大震災復興支援プロジェクト 「SEND愛」 を主催。その後も東北復興支援に向けた活動を継続している。結成15周年のアニバーサリーイヤーとなる2015年には2月にオリジナルアルバム「Colour by Number」を発表し、東京・日本武道館公演を開催。10月にベストアルバム「MONKEY MAJIK BEST -A.RI.GA.TO-」をリリースした。

Every Little Thing(エブリリトルシング)
Every Little Thing

1996年8月にシングル「Feel My Heart」でデビューしたユニット。オリジナルメンバーとしてサウンドプロデュースを担当していた五十嵐充(Key)が脱退し、現在は持田香織(Vo)、伊藤一朗(G)のデュオ編成で活動している。2001年1月に発表したフジテレビ系「あいのり」の主題歌「fragile / JIRENMA」がヒットを記録。以降コンスタントにアルバムを発表し、2015年9月にオリジナルアルバム「Tabitabi」とベストアルバムをセットにした作品「Tabitabi + Every Best Single 2 ~MORE COMPLETE~」をリリース。11月にシングル「KIRA KIRA / AKARI」を発売する。現在2016年4月まで続くアニバーサリーツアーを展開中。