音楽ナタリー Power Push - MONGOL800

今の日本に鳴り響く警鐘「People People」(ピーポーピーポー)

「himeyuri ~ひめゆりの詩~」の真意

──収録曲「People People」には「What's going on」という歌詞も入っていますが、キヨサクさんは近年The BK Soundとのコラボレーションでジャマイカ文化およびレゲエとの接点が強くなっていますよね。そういう中で、レベルミュージックの力を改めて感じているのでしょうか?

レベルミュージックかどうかっていうのはそんなに意識してなくて、「この人本気でやってんな」ってわかれば、それがレベルミュージックだと思う。ロンドンだから、ジャマイカだから、沖縄だから、ハワイだからとかは関係なく、政治的なことを言わなくても、何かを守ろうとする表現だったらそれはレベルミュージックで、皮膚感覚で感じたことを自分なりに歌ってるっていう意味では、1st(アルバム)から変わってないと思います。

──では、アルバムの1曲目「himeyuri ~ひめゆりの詩~」で「ひめゆり」を題材にしたのは、やはり戦後70年というタイミングを意識してのことなのでしょうか?

もともとはウクレレで作ったゆるいテンポのデモがあって、この曲は速くしようってことだけ決めてたんですけど、3人で鳴らして、いざ歌詞を書こうと思ったら、吸い込まれる感じで出てきたというか。作りたくて作ったというよりは、「この歌はここに落ち着くでしょ」ってところにスッと行った感じなんですよね。

──慰霊の日に先行で公開された映像も含め、非常に印象的でした。

いつも映像を任せてる人間がいて、そいつも沖縄の人なんで「この曲の映像を作るなら、この曲と心中する覚悟で作らないと」みたいなやりとりをしつつ、この曲はプロモーションとかを抜きにして早く届けたほうがいいんじゃないかって話になって、それで映像はドキュメントタッチにしたんです。賛成か反対かではなくて、こういう事実がありましたっていう。県民がこれだけ死んで、日本人が、アメリカ人が、いろんな国の人々がこれだけ死んだ。ホントにあったことだから、脚色もできない。ただドキュメントにしようっていうことを意識しました。

──ひめゆり学徒隊の話って、若い子でもなんとなくは知っていると思うけど、詳細は知らなかったりするかもしれない。なので今改めて歌にする意味は大きいと思いました。

何かしらのメッセージというよりは、掘り起こす作業というか、風化させないって意味もあるから。それは東日本大震災以降のミュージシャンの動きともつながると思うんですよね。それぞれのフィールドで、それぞれのタイミングで、やるべきことをやればいいと思うし、それが同じ方向を向いたときは、みんなで力を合わせることもできる。「東北ライブハウス大作戦」なんかは、それが顕著に表れたアクションだったと思うんです。言うても俺らただのインディーバンドなんで、フットワーク軽くてなんぼじゃないですか? やれる人がやって、そのアクションに賛同した人が続けばいい。ライブハウスを作る人がいれば、光のエネルギーだけでイベントをする人もいるし、Mステに出る人もいる(笑)。

──Mステ出演は横山健さんなりの明確なアクションでしたよね。(参照:次週「Mステ」にKen Yokoyama、生パフォーマンスを地上波初披露

「次はBRAHMANだね」ってこの間TOSHI-LOWさんと話してました(笑)。「20周年なんだから出ればいいじゃん。それでカメラの1台くらいぶっ壊せば?」って(笑)。

──モンパチがMステに出たのは15周年だった一昨年ですよね? また出たいと思いますか?(参照:Mステに初モンパチ、Rabbit、きゃりー、NEWS、ブルーノ

MONGOL800として、今歌うべき、歌いたい曲を演奏させてくれるのなら……出演もありかな?(その後8月21日放送回に出演が決定。取材は8月初旬で番組サイドと出演交渉の真っ最中だった / 参照: 次回Mステに福山雅治、モンパチ、キンプリ、SKE48ら7組登場)。でも、この流れでバンドマンがウジャウジャ地上波に出始めたら面白いだろうなって。1個アクションを起こしてくれた人がいたから、少し風穴が開いて転換期になっていくのかもしれないですよね。

今の日本人がぼんやりしてるように思えてきた

──タイトルトラックの「People People」は、現代の日本人に対する強烈な風刺になっていますね。「絶滅危惧種 日本人」なんていうワードも出てきたり。

キヨサク

今の日本人がぼんやりしてるように思えてきたんですよね。これまでよしとしてきた、謙遜する感じとか一歩引く感じが裏目に出てるんじゃないかって気がして、今はそうじゃないんじゃないかなって。

──どこか他人事のように眺めているムードがありますよね。そこに対して警鐘を鳴らしたのが、この曲であり、このアルバムなのかなと。

ちょっと言い方きついかもしれないですけど、当てはまる人がいたら、「これ俺かな?」って思ってほしいですね。やっぱり、みんな慣れちゃうんですよ。フォーマットがあったほうが楽じゃないですか?「朝起きて、ここまで仕事して、1日お疲れさまでした、今週も月から金までがんばりましょう」っていう。でも、いざ振り返ってみると、そこには何も残っていなかったりする。日本と欧米諸国を比べると、欧米は自分の意思をはっきり言わないと置いていかれるというか、意見の言い切り方の力強さが違うじゃないですか? あれが必要だと思うんですよね。日本語には含みがあって、「この言葉を使うけど本当はこう解釈してほしい」みたいなのがあるけど、それだと伝わらない。

──もちろん相手の気持ちを推し量るといういい部分でもあるけど、今の時代にはマイナスに働いているのではないかと。

自分で考える癖をつけないとダメだと思うんですよね。そこで大事なのが、皮膚感覚というか、人間が本来持ってるインスピレーションというか、第六感なのかもしれない。「これおかしいと思うけど……一旦保留にしておきます」じゃなくて、違和感を感じたら1回止めてみるとか、もっとわかりやすくていいと思うんですよ。まあ、あんまり強要したくはないから、「People People」みたいな曲ばっかりなのもどうかと思うんですけど。

──でも、その分「STAND BY ME」のようなラブソングが引き立ってますよね。

今回はその効果が顕著に表れたと思ってて。「STAND BY ME」は「OKINAWA CALLING」と両A面で出したけど、もっと届いてほしいなって思ってたので、アルバムに入れたら聞こえ方がまた全然違って、入れてよかったと思いました。こういうのは毎回作ってみないとわからない部分で、面白いですね。「himeyuri ~ひめゆりの詩~」も作ってるときは1曲目になる感覚って全然なかったんですよ。でも曲がそろったときに、あの歌い出しと勢いのある感じ、「OKINAWA CALLING」に続いていく感じがあって、ちゃんと収まるところに収まるんだなって思いましたね。

ニューアルバム「People People」 / 2015年8月19日発売 / 3024円 / TISSUE FREAK RECORDS / HIGH WAVE / HICC-4001
「People People」
収録曲
  1. himeyuri ~ひめゆりの詩~
  2. OKINAWA CALLING(Seasir Mix)
  3. Love is guilty
  4. D・I・Y
  5. NANKURU
  6. Window
  7. STAND BY ME
  8. People People
  9. MONSTER GOVERNMENT
  10. いったーあんまーまーかいが
  11. Beach
  12. to be continued
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キヨサク(Vo, B)、儀間崇(G)、高里悟(Dr)による沖縄在住のスリーピースバンド。高校在学中の1998年に沖縄で結成。1999年に沖縄限定で「GO ON AS YOU ARE」をリリースするが、あまりの反響の大きさから2000年に全国発売となる。2001年に発売したアルバム「MESSAGE」は収録曲がCMソングに使用され、インディーズレーベルからの発売としては異例のメガヒットを記録。幅広い世代に響くキャッチーなメロディとストレートな歌詞でリスナーを魅了している。2015年8月に通算7枚目となるオリジナルアルバム「People People」をリリース。9月末より新作を携えてのリリースツアーを開催する。