「Get Wild」は2008年のアキバの歌だと思うんです
そんなアキバへの思いは、アルバムにボーナストラックとして収録されているカバー曲「Get Wild」にも込められている。
「この曲がずっと大好きで、中学生のときには『Get Wild』のいろんなバージョンを入れた46分テープを自分で作って聴いてたくらいで。それで今回どう歌おうか悩みながら、何回かブースに入って歌ってたら、もう秋葉原のことを歌ってるようにしか思えなくなってきちゃったんですね。
だって『誰かのために生きられるなら 何も こわくはない』とか、まさにアイドルのファン、例えばAKB48さんのイベントに並んでる人のことじゃないですか。『この街でやさしさに甘えていたくはない』っていうのは、メイド喫茶にはまっちゃった人とか。あと『ひとりでも 傷ついた夢をとりもどすよ』っていう部分、1人っていうのがすごいオタクっぽいと思うんですよ。2番の『クルマのライトにkissを投げては 車道で踊るあの娘 冷たい夜空をステージにして 哀しくおどけていたね』とか、もうこんなの、夜にメイド服着た女の子が歌ってたりとか、ファンがオタ芸してたりとか、そういう場面でしょ? 哀しくおどけてオタ芸してるじゃないですか(笑)だからこれを私が歌うと、オタクの、2008年のアキバの歌に聞こえてくるって、そう思ったんですよ。『この街で自由をもてあましたくはない』ってもしかしてニートか!この人!みたいな(笑)。拡大解釈ですが…。
なんかそういうアキバの風景が思い出されてきて、改めて『Get Wild』は名曲だってことに気づいたんです。たぶんその頃の若者の焦燥感みたいなものとかを抽象的な歌詞で綴ってるんだと思うんですけど、それがぜんぜん現代に通用する、拡大解釈できる余地がある。やっぱり名曲とよばれる曲はすごいと思った。って、勝手に拡大解釈してるだけで怒られるかもしれないんですけど(笑)」
「Get Wild」さえも自分流に消化し、2007年はL.A.やドイツでのライブも成功させるなど、アーティストとしてさらに進化を続けるモモーイ。その才能と真摯な姿勢は音楽的な側面からもっと評価されてもよいはずだ。
「今回のアルバムでも曲の半分は自分でアレンジしてるんです。やっぱりそれは自分にとっては大きいかな。曲を作るときにもアレンジから考えたりするようになったし。おかげで曲作りにも広がりが出るようになったと思う。
たぶんこれはくだらない悩みっていうか、どうでもいいことなのかもしれないけど、曲を作って歌詞をノートに書いて、パソコンの前で、私はCubaseを使ってるんですけど、それで打ち込みをして、「パソコンが止まったー」と言いながらサンプリングCDを探したりして、とかやってるときって、それがいちばんアーティストっぽいはずなのに、みんなそれをあんまりわかってくれない気がするかなあ。
音楽に執着がない人にとっては、PVとか撮影してるときのほうがアーティストっぽいんですよね。ほんとは0から1にするのがものすごいたいへんなわけですよ。テーマを考えて、それを詞や曲にしたり、シンセサイザーのなかで表現するっていうのがすごくたいへんなのに、なんかそこじゃなくて、やっぱり華々しく歌ってたりとか、PVの撮影とかで口をパクパクさせてたりするほうがアーティストっぽく見えるってのが私にとってはすごく不思議」
楽曲のアレンジやトラック制作に心を砕く姿は、確かに通常はファンには見えにくい部分かもしれない。だが、それと同時に、彼女の楽曲のトーンを決めている大きな要素がそのボーカルであることも事実だろう。パソコンの前で打ち込みに没頭する地味な姿とは裏腹に、彼女の持つ天性のアニメ声はキラキラと輝き、リスナーの耳に飛び込んでくる。
「以前はね、裏方志向というか、人に曲を提供したいとかそういう気持ちのほうが強かったんですよ。実際、Perfumeさんに曲を書かせてもらったりとか。あの曲(「アキハバラブ」)を歌うのは、あの夏休みだけの期間限定と言われていたので、敢えて歌いだしを「二度とない~」っていう歌詞にしたんです(笑)。だけど、いまは自分で歌うのも楽しいなって思えるんです。前回カバーアルバムを作ったり、『瀬戸の花嫁』のキャラクターソングをいっぱいレコーディングしたりして、やっぱり自分は歌うのが好きなんじゃないかと思いはじめたところ。『あれ?なんか実は楽しい』っていう感じですね」
2008年3月5日発売 / 5,080円
AVBA-26639 / avex trax
初回盤特典
豪華ブックレット収納(16ページ予定)
収録曲
- 「Sunday early morning」(アルバム新曲)
- 「さいごのろっく」(シングル)
- 「ゆめのばとん」(シングル)
- 「21世紀」(シングル)
- 「ルミカ」(シングル)
- 「Chuo Line」(アニメ天国ED)
- 「Romantic summer」(LIVE CLIP)
- 「LOVE.EXE」(初収録)
映像特典
- 「ルミカ」店頭プロモ
- 「ハイ・エナジー」店頭プロモ
- 「COVER BESTカバー電車」メイキング
- 「Chuo Line」メイキング
- 「Sunday early morning」メイキング (「Sunday early morning」TV SPOT入り)
- 「momo-i quality」TV SPOT
- 「COVER BESTカバー電車」TV SPOT
- 「21世紀」TV SPOT
- 「ルミカ」TV SPOT
- ドイツ「Connichi2007」オフショット映像