桃井はるこがソロとして初となるオリジナルアルバム「Sunday early morning」とビデオクリップDVD「桃井はるこ BEST CLIP」を同時リリース。これまで秋葉原オタクカルチャーの代表選手としてアニメファン、ゲームファンから圧倒的な支持を受けてきた彼女だが、今回の新作はちょっと雰囲気が異なる。アニメ主題歌などのタイアップ曲を収録しつつも、アレンジにMISSILE CHEWBACCAを起用するなど新機軸も開拓。アルバム全体を通し、実に良質で真っ当な、メジャー感あふれるポップチューンが並んでいるのだ。
いったいいまの彼女に何が起こっているのか? アーティストとしての成長か? それとも方向性の転換か? ナタリーでは満を持してのインタビュー取材で、その本音を聞いてみた。
取材・文/大山卓也 撮影/中西求
「アキバ系」は下の世代に託してもいい
「去年まで私が作ってきたのはブルース。虐げられたオタクのためのブルースだったのかもしれない(笑)。私自身がオタクなので。これまでは曲を作るときに、この曲のテーマはこれで、こういうことをテーマにして作ったのです、みたいな、説明できるほうがいい曲だと思っていて、自分の曲はそうじゃないと許せないようなところがあったんです。
そうやって作った曲はもちろん大切で、ライブでやってもみんな共感してくれるし、すごく意味があったんだけど、今回はそれにプラスして、もっと遊び心を入れたいと思ったんです。もっと単純に、明るくてかっこいい、ポップなものをやりたいなと思って」
これまで代名詞のように語られてきた「萌えソング」「アキバ系」というキーワードを消化しなおした2008年の桃井はるこ。コンセプト志向から離れ、自然体のまま、音楽を自由に楽しんでいるように見える。
「うん、そうかも。なんかね、こうでなければならないっていうのがなくなったんですよ。以前はやっぱり『モモーイといえば萌えだよね』みたいなところがあったし。自分もそこの地盤を固めたい、萌えのシーンにこういう曲があったらいいよねって思ってやってたんだけど。いまはもうそこも成熟してきたから、私もいろんなことやりたいっていうのもありますし。
そういう気持ちの中で書いた『Sunday early morning』は、こんなにカラッとした曲ははじめてっていうくらい、良い曲になったと思う。もちろんオタクの人たちの期待に応えたいって気持ちもあるし、やっぱり秋葉原がすごく好きだから、そういうものがどうしてもどこかに出ちゃってるところはあると思うんですけどね」
彼女が音楽活動をはじめた頃は、まだ「アキバ系」という言葉もなく、秋葉原はまだ無骨な匂いのコンピュータとハードの街だった。だがいまや状況は一変し、「アキバ系アイドル」が普通に受け入れられる時代。いまのアキバのシーンを彼女はどう見ているのだろうか。
「私、2000年に出したCDのオビに『アキバ系』ってキャッチコピーを自分で書いてたんですけど、その頃そんな言葉はまだなくて、私の中ではいわゆる『渋谷系』に対しての『アキバ系』だったんですよ。あと当時はなにより1人だったんです。普通に秋葉原のゲーム屋さんに遊びに行っても「なんで女の子が一人でこんな店に来てるの?」って店の人に心配されるような感じだった(笑)。
例えば1997年に撮ったビデオクリップがあるんですけど。秋葉原で。それは、ビルとかが建つ前の秋葉原の広場で、私がセーラー服を着て歌ってるんですけど。そういう感じだったわけですよ。『なんでこの子コスプレして歩いてんの?』みたいな。ネットにも秋葉原にも女がいない時代だったんですよね。
ところがこのごろは『秋葉原でがんばっていきます』とか、秋葉原が本拠地みたいな女の子がいっぱいいて。自分で曲作ったり、がんばって自分の伝えたいことを歌詞にして歌ったり。アキバやアニメをテーマにした萌えソングみたいな歌を自分で作って歌ってる人がいっぱいいるんですよ。私は感動してしまって。私と同じようなことを目指してる人がこんなに増えたっていうことにむちゃくちゃ感激して、そこでちょっと肩の荷が下りたところもあるかもしれない。
しかも彼女たちも私のことをリスペクトしてくれてて。『ほんとに申し訳ないんですけどサインしてもらってもいいですか?』みたいなことを言ってくれたりするから、かわいくてしょうがなくてですね(笑)。だからなんか、やってきてよかったなって思って。それと同時に、やっぱりこの子たちに託す部分があってもいいなっていうのは感じましたね」
2008年3月5日発売 / 3,360円
AVCA-26638 / avex trax
初回盤特典
・ボーナストラック「Get Wild」収録
・3方背ケース仕様
・特製モモーイ!着せ替えシールセット
収録曲
- Sunday early morning
- Romantic summer -momo-i version- (瀬戸の花嫁OP)
- 21世紀
- RADIO DAYS RADIO NIGHTS
- Enter!
- いまあなたが好き
- Party!
- ハイ・エナジー -momo-i version- (Kawaii! JeNny ED)
- ルミカ(Kawaii! JeNny OP)
- ナイト・で・ないと (プリズム・アーク らぶらぶマキシマム! OP)
- Thunder Shot!
- Good morning!
- Get Wild ※初回盤のみ収録
(カバー曲:TM NETWORK)