ももいろクローバーZ結成15周年特集 百田夏菜子×松岡茉優|高校の同級生が語り合う青春時代と“今” (2/2)

8年前に「ずっと」と答えた意味

松岡 ほかにも絶対に聞きたかったことがあって。

百田 すごい用意してくるじゃん(笑)。

松岡 ずっと思ってたことなんだけど、こういう機会がないと聞けないじゃない。だから、この対談に呼んでくれて改めてありがとうと思ってます。で、私が伝えたいのは、やっぱりももいろクローバーZって超カッコいいなと思ってるということで。

百田 えー、本当?

松岡 今でも忘れられないのは、「ボクらの時代」(※フジテレビ系のトーク番組。2015年5月3日放送回に当時20歳だった百田、松岡、家入レオの同級生3人が出演した)に出させてもらったとき。確か、「いつまで“アイドル”を続けるの?」って私が夏菜子に聞いたのかな。今思えば失礼な質問なんだけど、そのときに夏菜子が「ずっと」みたいに答えたのね。でも8年前の当時、女の子のアイドルは長く続けていくものっていう感覚、認識を持ってる人はそれほどいなかったと思うの。今でこそいろいろな形のアイドルさんがいるけれど、女の子のアイドルはだいたい20代半ばぐらいで卒業とか解散をするイメージが世間も強かったんじゃないかなって。あれから8年間続けてきた“今”が本当にすごいんだけど、あのときの20歳のあなたが先を見通せてたというか、覚悟できていたのもすごいと思う。

左から百田夏菜子、松岡茉優。

左から百田夏菜子、松岡茉優。

百田 うーん、でもそれは先のことは特に考えずに言ってたと思う。ももクロは今年で結成15周年だけど、15年続けようって思ってやってきてないの。

松岡 そうなんだ。

百田 10年続けよう、15年を目指そうとか、そういう目標を掲げてきたわけじゃなくて。例えば嵐さんみたいに、1人ひとりが個人でも活躍して、全員が集まったらまた違う輝き持つグループになりたいねとか、結婚しても続けられたら新しいよねって口に出して言ってはきたけど、それが実現できるかはわからずに活動してきたのね。絶対に達成しないといけないという感覚は正直ないし、計画性もなかったかもしれない。気付いたら15年が経ってた感覚。計画性がないまま、そのときそのときで対応してきたからこそ長く続けられたのかなと今は感じてる。

松岡 今日があるのは、もちろん4人の覚悟と絆、そしてファンの方との絆があってこそだけど、あのときの夏菜子が、女の子のアイドルは25、6歳で辞めるものという既成概念にとらわれずにいられたのはなぜなんだろう。

百田 ちょっとね、アホだからだと思う(笑)。

松岡 もう、そう言って逃げるんだから(笑)。でも、これが夏菜子の素晴らしさで。さっき私のことを自然体って言ってくれたけど、夏菜子って何か物事が起きたときに、私が見てる方向と違うところを見てるんだよ。

百田 え、そう?

松岡 私が大好きなマンガを引用してもいい? 「スキップとローファー」というマンガがあって、この前そのアニメ版を観てたんだけど、(江頭)ミカちゃんっていうすごく私が共感できる女の子が出てくるのね。で、その子が主人公の(岩倉)美津未ちゃんと体育館でバレーボールの練習をしていたら、上級生の男の人がドン!ってぶつかってきたの。でも謝ってくれなくて、ミカちゃんは「心にしかと刻んだからな……!」と根に持つんだけど、美津未ちゃんは上級生2人のことを注意してくれた別の先輩の名前を心に刻んでた。たぶん私はミカちゃんと同じで、ぶつかってきた人のほうを「忘れないからな」って思うタイプなんだけど、あなたは美津未ちゃんのほうで、助けてくれた人のことだけを覚えてるんだろうなって。嫌なことしてきた人のことはわざわざ記憶に入れてないと思うの。

百田 うーん、そうかもしれない……。

松岡 だから、あなたの太陽のような心も、お目々も、歌声も……ちょっと気持ち悪い?(笑)

百田 ちょっとアイドルファンの一面が出ちゃってますよ(笑)。

松岡 もっと言っていいなら、まだまだ言えるけどね!

百田 大丈夫、もうけっこう言ってくれたから(笑)。

左から百田夏菜子、松岡茉優。

左から百田夏菜子、松岡茉優。

松岡 あと、ももクロの素晴らしさはメンバーカラーを大事にしてるところ! アイドルはメンカラのものだけ着ててほしいとまで思っちゃうくらいだから私。

百田 えー! そうなの?

松岡 そうだよ! ももクロはライブでもこれでもかっていうくらい、ふんだんにメンカラを盛り込んだ衣装を着てくれるじゃない。ファンの方もペンライトの振り甲斐があると思うなー。

百田 あははは。

自分に関するすべての選択肢は自分で選ぶ

松岡 あとももクロが素晴らしいなと思うのは、以前はラジオのときも衣装を着て来てくれたり、それ込みでアイドルとしてのパフォーマンスを常に見せてくれていたと思うんだけど、今は新しいももクロ像としてナチュラルな姿を見せてくれているところ。今日の服装もそうでしょ。これが新しいももクロ像だと思うし、5年後、10年後の姿も想像させてくれる、常に変化してるのはファンにとってすごくうれしいことだと思う。

百田 やっぱり、自然と変わっていくことってあるじゃない。私は年齢についても、周りの環境に対しても変わっていくことにまったく逆らわないできたのよ。その一方で、アイドルに対して変わらないでいてほしいと思っちゃう感覚もわかるの。自分が好きになったタイミングのその子が一生好き、みたいな。

松岡 うん。そういう考え方もあるよね。

百田 だから変化なんて必要ないのかもしれないという感覚も自分にはあるし、キャラクターとか髪型とか、いろんなことに対して、変わらない美しさも世の中にはあると思うのね。それでも生身の人間だから当然変化はあって。私は岐路に立ったときに、変わっていくことのほうを自然と選んできたの。自然の流れに逆らわないできたからこそ、苦しく感じることもなかったんだよね。いろんな考え方があると思うけど、私はそういうタイプだから長く続けられているんだろうし、ホントにありがたいことに、私たちのファンの方もその変化を楽しんでくれていると思う。

百田夏菜子

百田夏菜子

松岡 それは絶対にそうだね。髪の毛をバッサリ切ったことがあったじゃない。あれはどういう気持ちだったの?

百田 それは、今までちゃんと話したことがないんだけど……。

松岡 やだ、いいのかな、ここで話してもらって。嫌だったら話さなくていいのよ。

百田 大丈夫(笑)。それまではポニーテールが固定の髪型だったのね。昔は見た目のイメージや、キャラクター像をわりとはっきりと守っていて。メンバーカラーについても同じで、赤い衣装だけを着ていた。

松岡 そうだったんだ。

百田 ネイルとか、髪色とかも決まりを守ってたし、髪の長さもポニーテールができるように保っていた。そんな中、私は一生、1つの自分でしかいられないのかなって心のどこかで思っていて。何かのタイミングでそれを断ち切るというか、もっといろんな選択肢を持って、いろんな自分を見てほしいという気持ちが出てきたの。あと、毎日ポニーテールにしてると頭が痛くなるんだよね(笑)。髪が後ろに引っ張られて。

松岡 わかるー。

百田 そういう理由もあって、一度ポニーテールが物理的にできない長さに切ろうと勝手に思ったのね。そしてそのことについてマネージャーさんに納得してもらうにはどうしたらいいんだろうと考えたときに、何かのタイミングを合わせないとダメだなと思って。それが20歳という節目だった。

松岡 マネージャーさんのOKをしっかりもらおうとするところが夏菜子の誠実さだよね。たぶん、許可を取らずにいきなりやっちゃうという手段もあったはずだから。

百田 私は単にビビりな部分もあるけど、しっかり筋を通して、物事を嘘なくやりたいっていう気持ちは確かにあるかも。

松岡 もう、ファンの皆さん泣いちゃうよ。この話を聞いたら。なんてカッコいいのあなたは。

百田 いやいや(笑)。自分の中に隠すことが何もないのよ。

松岡 コンセプトをしっかり守ることも、芸能界に昔からあるやり方のひとつだと思うの。例えばももクロを初めて見た人に、色でメンバーを覚えて「このポニーテールの子が好き!」と思ってもらえたり。事務所の方たちも思春期の女の子の気持ちをないがしろにしているわけじゃなくて、グループの展望を考えてコンセプトを大事にしていたんだよね。

百田 実際、そうすることでももクロを多くの方に覚えてもらってきたし、それが今に全部つながってると思う。その中でも、どこかのタイミングで何か変化が欲しかったり、新しい姿を見てほしいと思ったりするんだよね。歯の矯正についても同じで、八重歯があるのはアイドルとしてはかわいいことだと思うけど、30歳になるまでには絶対にきれいにしたかったの。

松岡 矯正のことも事務所との話し合いはあったと思うけど、マネージャーさんも変革のタイミングを考えていたのかもしれないね。

百田 そうかも。矯正することに関しても、ファンの方には正直にお伝えして。私の思いを受け入れてくれたことにはホントに感謝しかないです。

松岡 夏菜子が髪を切ったとき、ファンの方はどう捉えてるのかが気になって「夏菜子」でエゴサしたの。そしたら、「これで夏菜子ちゃんのボブが見れる」と言ってる方がいて。ベリーショートにしたから、髪が伸びていけばそのうちボブの夏菜子を見れるっていう。その言葉に愛を感じたの。今日に至るまでももクロを応援してきた人たちって、そういうふうに変化し続けるメンバーが大好きなんじゃないかなあ。今で言うと、私たちはアラサーと呼ばれる年齢だから、身を固めるのかどうなのかという圧力みたいなものがいまだにあるじゃない。そんな中、自分に関するすべての選択を自分で選ぶ姿を4人が見せてくれているのは、とてもカッコいいし、救われている人が多いと思う。

松岡茉優

松岡茉優

百田 茉優もイメージとのギャップで葛藤を感じたりはするの?

松岡 うーん、少し話がずれるかもしれないけど、別の考え方や価値観を手軽に受け取ってもらえるのがエンタメだと思っていて。例えば、そういうことについて書いてある新書もあるけど、みんながみんな手に取るわけじゃないし、必要な人みんなに届くわけじゃない。そんな中、夏菜子たちはももクロとして新しい30代を見せてくれる。私も私で作品を通して「あ、こういう考え方でもいいんだ」と思ってもらえたらうれしいし、そうやって1つひとつ鎧を下ろしてもらえるのがエンタメの力かなって思ってる。

百田 自分自身についてはどうなの? 例えば、普段仕事をするときは、鎧をどれくらい着てる? ガッツリ着てるときもあれば、心臓の鎧以外は外しちゃうみたいなときもあるでしょ?

松岡 あるよ。でも、頭の鎧は外せないかな。頭だけはガチガチに守ってる。

百田 自分の考え方を守ってるっていうこと?

松岡 それもそうだし、頭に関しては休まることがあんまりないかもなって。

百田 オフの日も?

松岡 うん。でも、オフに休むことがどれだけ大事かは身に染みてわかっているから、頭をオフにするための、ありとあらゆる方法を得てきたよ。もう対談が終わる時間が迫ってきたから、この話はまた後日(笑)。

百田 ナタリーさん、この対談もう1回やりましょう。2時間は欲しいです(笑)。

松岡 じゃあ最後、もう1問だけ。逆に夏菜子は仕事のとき、どれくらい鎧で身を固めてるのかだけ聞かせて。

百田 私の鎧? 自分から聞いたことだけど、この質問難しいなあ(笑)。私、どこに鎧を着けてるんだろう。どこにも着けてない……? いや、さっき変化を受け入れてきたと言ったけど、自分の“何か”は守って生きてきたと思う。自分のハート、気持ちの周りには鎧を着けてきたかな。

松岡 うん。きっとそうだよね。

百田 常に自分を忘れないように、自分の気持ちを大切にしながら生きてきた。だからこそ、自由に動けるんだと思います。

左から百田夏菜子、松岡茉優。

左から百田夏菜子、松岡茉優。

ツアー情報

ももいろクローバーZ 結成15周年ツアー

  • 2023年7月16日(日)兵庫県 神戸国際会館 こくさいホール
  • 2023年7月17日(月・祝)愛知県 日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
  • 2023年8月5日(土)東京都 武蔵野の森総合スポーツプラザ メインアリーナ
  • 2023年8月6日(日)東京都 武蔵野の森総合スポーツプラザ メインアリーナ
  • 2023年9月9日(土)福岡県 北九州ソレイユホール
  • 2023年9月10日(日)広島県 ふくやま芸術文化ホール・リーデンローズ
  • 2023年9月14日(木)大阪府 大阪府立国際会議場(グランキューブ大阪)メインホール
  • 2023年9月15日(金)大阪府 大阪府立国際会議場(グランキューブ大阪)メインホール
  • 2023年9月18日(月・祝)宮城県 名取市文化会館 大ホール
  • 2023年9月23日(土・祝)新潟県 新潟テルサ
  • 2023年10月14日(土)東京都 武蔵野の森総合スポーツプラザ メインアリーナ
  • 2023年10月15日(日)東京都 武蔵野の森総合スポーツプラザ メインアリーナ

プロフィール

百田夏菜子(モモタカナコ)

1994年7月12日生まれ、静岡県出身。2008年結成のアイドルグループ・ももいろクローバーZのリーダーで、担当カラーは赤、キャッチフレーズは「茶畑のシンデレラ」。女優としても精力的に活動し、2016年10月より放送されたNHK連続テレビ小説「べっぴんさん」にメインキャストの1人として出演。映画「かいけつゾロリ ZZのひみつ」「ブラックパンサー」などで声優も務め、2020年11月公開の「魔女見習いをさがして」ではメインキャラクターの1人を演じた。2021年3月公開の映画「すくってごらん」にヒロイン・生駒吉乃役で出演し、同年10月には埼玉・さいたまスーパーアリーナで初のソロコンサート「百田夏菜子ソロコンサート Talk With Me ~シンデレラタイム~」を開催。2022年6月より東海テレビ・フジテレビ系で放送の「僕の大好きな妻!」で連続ドラマ初主演を果たした。ももクロとしては4月に結成15周年記念ソング「いちごいちえ」を配信リリースし、5月に東京・国立代々木競技場第一体育館で結成15周年ライブ「代々木無限大記念日 ももいろクローバーZ 15th Anniversary」を開催。7月から15周年記念ツアー「QUEEN OF STAGE」を行う。

衣装協力
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TEL:03-5829-5206

松岡茉優(マツオカマユ)

1995年2月16日生まれ、東京都出身。幼い頃から子役として活動し、2008年から2010年まで子供向けバラエティ番組「おはスタ」で“おはガール”を務めた。2013年にNHK連続テレビ小説「あまちゃん」に出演。2015年に「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2015」にて「第2回 ニューウェーブアワード」女優部門を受賞し、同年放送の「She」で連続ドラマ初主演、2017年公開の「勝手にふるえてろ」で映画初主演を果たした。2018年度の「第42回 日本アカデミー賞」において、「勝手にふるえてろ」で優秀主演女優賞、映画「万引き家族」で優秀助演女優賞を受賞。2019年公開の「蜜蜂と遠雷」、2021年公開の「騙し絵の牙」で「日本アカデミー賞」優秀主演女優賞に輝いている。2023年7月放送開始の日本テレビ系ドラマ「最高の教師 1年後、私は生徒に■された」で主演を務め、10月公開の映画「愛にイナズマ」に窪田正孝とダブル主演する。

衣装協力
リング(左人差し指) / 33000円(ブランイリス / ブランイリス トーキョー)
リング(右中指) / 12100円(ジュエッテ)
イヤリング / 14300円(ジュエッテ)
パールイヤリング(左耳) / 3960円(アンドクラウド)