ももいろクローバーZ結成15周年特集 百田夏菜子×松岡茉優|高校の同級生が語り合う青春時代と“今”

今年5月17日に結成15周年を迎えたももいろクローバーZ。これを記念し、音楽ナタリーではももクロのメンバーがそれぞれ異なる相手と対談する連載企画を展開してきた。この連載のラストを締めくくるのは、ももクロのリーダー百田夏菜子と、彼女の高校の同級生である松岡茉優。過去にもテレビやラジオ番組での共演経験はあるものの、今回のように対談という形で2人が語り合うのは初めてだという。学生時代からの親友だからこそ、写真撮影では少し気恥ずかしそうな様子を見せていた彼女たちだが、対談の席に着くなり、松岡が百田に12年越しに聞きたかったこと、新しいももクロ像の話など会話がとめどなく続き、取材時間が足りないほどに盛り上がった。大人になった高校の同級生2人が和気あいあいと、しかしまっすぐに本音で語り合う姿を思い浮かべながら記事を楽しんでほしい。

取材・文 / 近藤隼人撮影 / 入江達也

対談相手に同級生を選んだのは

百田夏菜子 今日はありがとうございます。対談を受けてもらえてうれしかった。

松岡茉優 いえ、こちらこそです。じゃあ、まず私から質問ね。

百田 ん? そういうガチな対談モードなの?(笑)

松岡 特集の1本目の玉井詩織さんと伊藤沙莉の対談を読んで、「あ、これ本人が希望した人と対談してるんだ」って思ったの。でも、夏菜子は今までの人生でお世話になった人がいっぱいいると思うし……なんで私としゃべりたいと思ってくれたの?

百田 確かにいろんな人を考えたよ。芸能界の先輩とか事務所の後輩とか、いろんな方が浮かんだけど、同世代の人と“今”のことを話したいと思って。そしたら、茉優のことが思い浮かんだの。同じ同級生でも奈央(朝日奈央。百田、松岡と高校の同級生)は仕事でよく会うけど、茉優とは仕事で一緒になることがなかなかないし、たまにバラエティで共演してもあっという間に終わっちゃうし、こんなふうに2人でちゃんと話すってことを意外としてこなかったなって。それに、プライベートで茉優が私に話してくれることがいつも温かくて、私はすごく好きなの。ファンの方も普段の私と茉優の関係性をもっと知りたいだろうし、今回はその空気感を伝えられたらなという思いもあってダメ元で声をかけました。忙しいのはわかってたけど。

松岡 いや、ダメ元って(笑)。

左から百田夏菜子、松岡茉優。

左から百田夏菜子、松岡茉優。

百田 スケジュールをこじ開けてくれたみたいでうれしいです(笑)。茉優もさ、普段メディアでしゃべるときって女優さんとしての話が多いと思うのね。作品についての話とか。だから、こうやって友達との2人きりの話を届けるっていうのは新鮮なのかなって。

松岡 そうだね。なんでも聞いてほしいし、夏菜子のことをずっと見てくれているファンの方も、最近夏菜子のことを好きになったファンの方にも「夏菜子ちゃんってこんなにいい子なんだ」と思ってもらえる対談にしたいです。

百田 あははは。なんなの? 私の親なの?(笑) 今日はこんな感じで勝手にどんどん対談を進めちゃいますけど(笑)、茉優は友達や芸能界の知り合いの方も含めて、私が連絡先を知ってる人の中で一番私の体調を気にかけてくれる人なんですよ。別に頻繁に連絡を取ってるわけじゃないけど、すごく気にかけてくれます。きっと小さい頃から芸能界にいるからだよね。

松岡 でも、それは夏菜子も同じでしょ。

百田 私は、事務所に入ったのは小学5年生だけど、仕事をし始めたのは中学生になってからだから。茉優はそれよりも前に仕事を始めてたでしょ?

松岡 ちょっと前かな。小学2年生のときだった。沙莉と同期。

百田 その2年の差ってやっぱり大きくて、この世界の大変さをすごくわかってると思うのね。

松岡 何言ってんのよ。それはあなたのほうが感じてきたと思うよ。

百田 いやいやいや。読者の皆さんもよくご存知の通り、茉優はハロー!プロジェクトさんが好きで。アイドルというものに対して、私とは別の視点や考え方を持っていると思うんですよ。ファン目線と友達目線、両方でアイドルを見ているから、茉優と話しているとすごく勉強になります。たぶんこうやって2人だけで仕事で会うのは初めてだから、さっきの写真撮影はちょっと変な感じだったけど(笑)。

百田夏菜子

百田夏菜子

松岡 オンの状態の夏菜子に会うのが珍しいからね。前に私のラジオ番組にゲストで来てくれたときも印象的だったけど。フリフリの真っ赤な衣装を着て来てくれて。

百田 私も、今目の前にいる茉優のことをテレビで観てるわけで。

松岡 プライベートで会うときはあんまりメイクしないからね(笑)。朝日と里菜(日高里菜。百田、松岡と高校の同級生)はちゃんとしてるけど。

百田 4人で集まるといつもそうだよね。私と茉優に関してはホントにオフ(笑)。お互いこうしてきちんとメイクをして会うのは「夜会」(※TBS系「櫻井・有吉THE夜会」。2022年9月15日放送回に百田、松岡、朝日、日高の4人が出演した)以来。あのときもちょっと緊張感があったもん。

松岡 番組内で朝日の結婚をお祝いできるのはすごくうれしかったけど、ゴールデンの1時間を私たちで持たせることができるのかちょっと不安だった(笑)。

百田 不安だったんだ(笑)。でも、茉優は普段4人で集まるときもいろいろとまとめてくれるよね。お店をセッティングしたり、共通の友達の結婚を祝う動画を撮るためにスタジオを押さえてくれたり。そのスタジオが学校の近くだったから、あのときひさしぶりにみんなで通学路を歩いたよね。でもそのとき、茉優だけ自転車で来て(笑)。女優さんだし、タクシーとか自分の車で来るのかなって思ったのに。もうそのギャップが私は大好き。

松岡 みんなが電車で帰っていくのが楽しそうだったから、「私も電車で来ればよかったー」って思った。

百田 (笑)。

体育祭の日に百田が松岡に声をかけた理由

松岡 それより、今日は10年越しで聞きたいことがあって。

百田 10年越し!? 何?

松岡 高校のときの話だからもう12年くらい前になっちゃうんだけど。私と夏菜子が仲よくなった時期は、朝日や里菜も一緒だった高3の文化祭の準備期間だったのは間違いないと思うのね。でも高2の体育祭で、みんなで1列に並んでたときだったかな。同じクラスだった夏菜子が、突然ダダダダ!って勢いよく近付いて私の肩をつっついてきて。

百田 それはもう恐怖だね。そんなやつ(笑)。

松岡 それで、「ホントは面白い子なんでしょ!? 知ってるよ!」って言ってきて。私からしたら「え、どこでそれを!?」と思ったのね。実際に私が面白いかどうかは置いておいて、「私が本性を隠しながらクラスの端っこにいることをなぜ知ってるんだ!? どこでバレたんだ?」って疑問だったの。

百田 (笑)。それはね、ある日、遅れて教室に入ってきた茉優が、なんだか焦った様子でボディクリームを塗って、さらにそのあとベビーパウダーを体に叩いてたことがあったのよ。

松岡 あははは! こわっ(笑)。

左から百田夏菜子、松岡茉優。

左から百田夏菜子、松岡茉優。

百田 それを見て「この人めちゃくちゃ面白い!」って思ったの。でも、そのときは声をかけなくてただ様子を見てた。

松岡 もう記憶にないけど、なんだったんだろう。汗かいてたのが恥ずかしかったのかな。

百田 わからないけど、そのナチュラルで自然体な感じがめっちゃ魅力的で。

松岡 そうだったんだ……でも、なんで体育祭の日に声をかけてきたの?

百田 なんかタイミングがその日だったんだろうね。

松岡 学校には中学時代からの知り合いもいたから、その子から「本当はああいうキャラクターじゃないんだよ」みたいな話を聞いたのかと思ってた。というか、勝手にそう確信してた。ただ、教室でベビーパウダーを叩くのもどうかと思うけど、「ホントは面白い子なんでしょ!?」って話しかけようと思うのが夏菜子ならではの思考回路だよね。普通は「え、何ここでベビーパウダー叩いてんの……?」って引くじゃない。

百田 でも、バンバン!って思いっ切り叩いてたわけじゃなくて、ポンポンって上品にやってたよ。たぶん、ボディクリームを塗ったあとにベタつくのが嫌だったんだと思う(笑)。教室でそんなことをやってる人を見たことがなかったけど、ホントに自然なんですよ、茉優って。生きてることに対して(笑)。

松岡 あははは!

百田 自然体でいられる人ってすごくカッコいいなと思うから、あのときのことが忘れられないの。

松岡 でも、このエピソードを聞いて、私、やっぱりあんたのこと大好きって思い直してる。誰かから聞いた話があったんじゃなくて、自分の感覚で、あのとき話しかけてくれたんだなって。

百田 あと、髪の毛半乾きで学校に来たことも覚えてるよ。たぶん、朝シャンして来たんでしょうね。

松岡 あるあるだね(笑)。髪の毛が長かったから。

百田 髪が乾ききってない状態で急いで教室に入ってくるのも、なんだかカッコよくて(笑)。芸能コースだったから、生徒1人ひとりが全然違う、個性的な人たちが集まっていたクラスだったじゃない。でも、今みたいに多様性という言葉が浸透していなかった中、そのことに対して誰も疑問を持ってなかったんだよね。協調性がないというわけでもなくて、本当に1人ひとりの魅力をお互いが認め合ってた。

松岡 うんうん。そうだったね。

松岡茉優

松岡茉優

百田 例えば私の場合は、忙しいときは静岡に帰らず、東京に泊まることもあったから、キャリーケースをガラガラ引きながら登校したりしていて。最初はクラスのみんなから変な目で見られちゃうのかなって思ってたんだけど、「あ、今日泊まりなの? キャリーケース後ろ置きなよ。あそこ空いてるよ」という感じで自然に接してくれたのを覚えてる。誰のことも変に思わない友達とクラスで、すごく楽しかった。だから、髪の毛が半乾きでも……(笑)。

松岡 あなたこそ、毎日ぶら下げてた小さいポーチ! ポーチっていうか、もはやポシェットなのかな? 携帯、ミント、くしが入ってて。1回、「ごめん、それ何入ってるの?」って実際に聞いたよね(笑)。

百田 覚えてる(笑)。

松岡 もし「ほかのアイドルもいる中で、学校生活どうだったのかな?」って心配している夏菜子のファンの方がいるとしたら、ちゃんと伝えたいです。夏菜子みたいに当時からメディアに出てたりして、学校に来れないときがあったくらい忙しい子もいれば、これからがんばるぞ、という子もいたけど、そういう人たちが夏菜子に対して、ひがんだりやっかんだりしたことはなかったって。

百田 うん。確かになかった。でも、そうやって私のことを見てくれてるのが、ホントに“親”って感じだよね(笑)。

松岡 心配だったの(笑)。仲よくなってからは特に。あの当時、私はまだお芝居だけで食べていけるほどじゃなかったけど、夏菜子はクラスの中で一番忙しかったと思うのね。この世界で仕事をしている同世代の子でそんなに忙しくしてる人を初めて実際に目にして。まだ17、8の高校生だったし、同業者の子は気になったりするのかなと思って見てたけど、ホントにクラスメイトの百田夏菜子ちゃんとしてみんなが接していたから、それはファンの方たちに安心してほしいなって。

百田 ホントに恵まれたと思う。友達にも、学校の先生にも。

松岡 もうあのときの担任の先生の年齢を超えてるんだよ、今の私たち。

百田 そっか……! その先生もホントによくしてくれて。こういうお仕事をしてる人の中には、忙しくて学校生活を全然満喫できなかった人もいると思うけど、私の場合はもう思いっ切り満喫して、学校は学校で楽しんでたから、青春時代がしっかりとある。

松岡 文化祭の出し物として作ったスムージーに、ももクロをモチーフにした名前を付けたよね。

百田 あったあった。

松岡 クラスのみんなの仕事内容をモチーフにした名前をスムージーに付けたんだけど、夏菜子の場合はなんだったっけ……。

百田 「もも」か「ピーチ」を名前に入れたと思う。

文化祭の出し物のドリンクメニュー。(提供:松岡茉優)

文化祭の出し物のドリンクメニュー。(提供:松岡茉優)

高校時代の松岡茉優、百田夏菜子。(提供:松岡茉優)

高校時代の松岡茉優、百田夏菜子。(提供:松岡茉優)

松岡 夏菜子は文化祭にずっとはいられなかったけど、一瞬だけ来れたんだよね。

百田 ホントにみんなと楽しい時間を過ごしました。