ももいろクローバーZ結成15周年特集 玉井詩織×伊藤沙莉|アイドル活動15年と俳優活動20年、仲良しな2人が語り合う仕事観

今年5月17日に結成15周年を迎えたももいろクローバーZ。これを記念し、音楽ナタリーではももクロのメンバーがそれぞれ異なる相手とトークする対談企画を連載形式でお届けする。そのトップバッターを飾るのは、玉井詩織と今年で俳優活動20周年を迎える伊藤沙莉。プライベートで親交がある彼女たちだが、今までお互いの活動の印象や、仕事に関する真面目な話を交わす機会はほとんどなかったという。12カ月連続でソロ曲を配信リリースするプロジェクト「SHIORI TAMAI 12 Colors」を今年1月に始動させたほか、ドラマや舞台への出演などマルチな活動を展開している玉井と、俳優業に軸足を置きつつ、その中でシリアスな役からコミカルな役まで多彩な顔を見せている伊藤。出会いの瞬間から仲よくなるまでを振り返ってもらいつつ、2人にそれぞれの仕事観について語り合ってもらった。

取材・文 / 近藤隼人撮影 / 入江達也

2人が仲よくなるまで

──お二人はプライベートで遊びに行く仲だそうですが、出会いのきっかけは2015年公開のももクロの主演映画「幕が上がる」での共演ですか?

玉井詩織 はい。たぶん、最初は撮影に向けてのワークショップだよね。沙莉は子役時代から活躍してたので、会う前から知っていたんですよ。ハスキーボイスの子だっていうイメージがすごく強かったけど、第一印象は……。

伊藤沙莉 特にないんだね(笑)。

玉井 そんなことない、そんなことない(笑)。このキャラクターだから、めちゃくちゃフレンドリーだし、場を盛り上げてくれるタイプのように思ってたんですけど、のちにそれが人見知りゆえの性格だってことに気付くんです。当時はムードメーカーだなと思ってましたね。もう、6年くらい前のことだから忘れちゃった(笑)。

左から玉井詩織、伊藤沙莉。

左から玉井詩織、伊藤沙莉。

伊藤 いや、出会ったのは2014年だから9年前だよ。今29歳の私が20歳だった。

玉井 え、ウソ! こわっ!

伊藤 だってあなた19歳だったでしょ。

玉井 うん。高校を卒業した年だった。そっかー、長い付き合いだね……。当時の私の印象、ある?

伊藤 顔がなくなっちゃいそうって思うくらい、顔が小さかった。いまだにひさびさに会うと、顔が小さすぎて転がってっちゃいそうって思うもん。当時、ももクロのことは知っていたけど、メインキャストのももクロ以外の出演者だけでワークショップをやると思ってたの。しかも、最初はワークショップじゃなくて、私たち出演者はオーディションという形で。だから「あ、ももクロだ……!」くらいの感想だった。「このオーディションをアイドルに見られるの恥ずっ」みたいな。

玉井 あ、思い出した。最初の最初は、廊下に椅子があって、そこに出演者のみんなが並んでた気がする。

伊藤 そうかも。ももクロのみんなの目をあまり見れない状態だった。

玉井 私たちも内弁慶だから、同世代の女の子たちの中に入ると、どうしてもグループで固まっちゃうんだよね。ワークショップとかでほかの出演者の人たちと別々になっちゃうのはよくないとわかってるんだけど、ももクロは意外とみんな人見知りで。沙莉とちゃんと仲よくなったのはもっとあとだよね。映画のときも正直、まだちょっと人見知りを発揮してたし。

玉井詩織

玉井詩織

伊藤 舞台だよね(2015年5月1日から24日かけて東京・Zeppブルーシアター六本木で「幕が上がる」の舞台版が上演された)。毎日会うし、ずっと同じ空間にいたらよくしゃべるようになるし。

玉井 でも、プライベートで会うようになったのは舞台よりさらにあとだよね。しかも、1、2年後。当時あーりんはまだ学生だったし、年齢的な面でも共演者の方とお友達になるってことがそもそもなくて。でも同世代の子が何人も集まって、映画も舞台も一緒にやるとやっぱり仲は深まるし、そこだけで関係性を終わらせるのが寂しいなという思いもあった。それで、お仕事で共演した人と初めて連絡先を交換して、「プライベートで遊びに行ってもいいのかな……?」という気持ちもありつつも、まずキョンちゃん(「幕が上がる」の映画と舞台に出演した芳根京子)とプライベートで会い始めて。沙莉とも「会おうね」って連絡は取ってたんだけど、なぜか実現したのがしばらく経ってからだった(笑)。お互い、少し面倒くさがりなところがあるんだよね。

伊藤 そうそう。「遊ぼう!」「いつかねー」みたいな感じ(笑)。

玉井 “いつ”を決めるのが苦手(笑)。

伊藤 いまだにそう。毎回、会うまでに時間がかかる。最初は蔵前にノートを作りに行ったんだよね。

玉井 あー! あれが最初か。日時さえ決まれば、私も沙莉もやりたいことはいっぱいあって。そのときは遊ぶ日がやっと決まったあとに、ノートを作りたいという話になったんだよね。表紙とかも選んで手作りのノートを作れるところが清澄白河にあるらしいということで、清澄白河に集合したんだけど、そのお店の場所をよくよく調べたら、蔵前だったっていう(笑)。

伊藤 清澄白河でちょっとお茶してから、「いよいよ向かおうか」「でも、蔵前までどうやって行こう」という話になり、「近くに人気のカフェがあったよ」とか、何かしら楽しみを見出しながらノートのお店に向かって。しおりんは好奇心旺盛で、どんなときも否定的にならずにポジティブなんだよね。「でも、これが食べられてよかったじゃん」みたいなことを言ってくれるし、結局、歩いて移動したのかな。

玉井 なんであのとき、電車に乗るっていう選択肢を取らなかったんだろう(笑)。

伊藤 駅で待ち合わせしたのに、なぜか「歩こう」という話になった(笑)。コーヒーを買って、ブリオッシュのアイスも買って。「これも歩いてなかったら見つからなかったよね!」って楽しみながら。

玉井 そうそう。1時間は歩いたよね。

伊藤 で、ようやくノート屋さんにたどり着いたけど人気すぎて「予約して、時間になったら来てください」と言われ、また歩き始めて謎の駄菓子屋に行って……。

玉井 そうだっけ(笑)。

伊藤 「最近、誰かと連絡取り合ってる?」って「幕が上がる」の話とかをしながら歩いてたら、駄菓子屋? 文房具屋?みたいな老舗のお店を見つけて、「こういう風船ガムとか売ってるんだ!」とテンションが上りつつも、結局何も買わずに出て(笑)。

伊藤沙莉

伊藤沙莉

玉井 その最初に遊んだ日がすごく印象的だった。歩きながらたくさんしゃべったから。

伊藤 しかも「カラオケ行きたい」「でも、ここらへんにはカラオケ店がない」という話になり、最終的に浅草まで行ったし。変な1日だったね(笑)。

玉井 で、その日から次に会うまで半年近く空いて(笑)。連絡はそれなりに取るんだけど。

伊藤 「お兄ちゃん(オズワルドの伊藤俊介)に会ったよ」と言ってくれたり、私も「あーりん(佐々木彩夏)とロケやったよ」と伝えたり。で、ふた言目に「いい加減会おう」って言い合う(笑)。

玉井 けど、日時は決めない(笑)。

カッコよくて尊敬してます

伊藤 ももクロに対する第一印象は、かわいいのはもちろんなんだけど、なんかカッコいいなと思ってた。あまり見たことないアイドルというか、こんなに幅広い愛され方をしている人たちはほかにいないなって。アイドルなんだけど、アイドルというカテゴライズをしていいのかなと思うくらい、カッコいい人たちっていう印象を当時から持ってた。髪を振り乱して踊ったりしてすごく全力だし、その一方でみんな楽しそうに活動しているし。実際のところは裏でたくさん苦労もしていて、一生懸命努力をしてるんだろうなと思いつつも、それを感じさせないのは、同じ表現者として昔からすごくリスペクトしてました。

玉井 そうなんだ。うれしい。こういう話、普段しないもんね(笑)。

伊藤 しないね。会ったときに、「リスペクトしてるよ」ってわざわざ言わないもん(笑)。

玉井 反応しにくいったらありゃしない(笑)。「あ、どうも……」ってなる。

玉井詩織

玉井詩織

伊藤 でも、やっぱりももクロはプロフェッショナルなんだなと思ってるよ。お仕事に対する意識とか、これからやりたいこととか、漠然とだけどしおりんから聞いたりすることもあって。考えてることがフラフラしてないっていうか、ももクロを守ろうという気持ち、続けていくにはどうしていったらいいだろうと考える探求心をずっと持っているなと感じる。アイドルグループとしてこの位置まで来ていて、それが決して揺がないくらいのレベルなのに、「今の感じでいいや」で満足しないのがすごいなって。だからこそ15年も続いてるんだと思うし、とにかくカッコいいんですよ。……すいませんね、なんかいきなり語り始めて(笑)。

玉井 あははは、なんだか照れるね。私もそっくりそのまま同じことを沙莉に対して思ってるよ。カッコいいなって。今日みたいに仕事で沙莉に会うほうがレアだから、たまに仕事をしてる沙莉の姿を見るとちょっと恥ずかしさもある。家族の仕事場を覗いてるような感覚。普段、俳優の伊藤沙莉という存在をテレビのフィルターを通してしか見ることがないけど、幅広くいろんな役に挑戦してるし、いろんなタイプの作品に出てるし、「これだけいろんなことをできるなんてすごい!」っていつも感動します。こうやってしゃべっていても思うけど、頭がすごくよくて。それは言葉の選び方からも感じるし、たまに悩み相談とかをすると、本当に核心を突いたことを話してくれる。だから、いろんな仕事ができるのは当然で、この位置にいるべくしているんだなと思う。本当にカッコよくて尊敬してます。第一線で活躍してる俳優さんが身近にいることに刺激を受けるし、誇らしい気持ちになりますね。

伊藤 ありがとう。記事に「(照)」って書いといてください(笑)。

左から玉井詩織、伊藤沙莉。

左から玉井詩織、伊藤沙莉。

玉井 私はそんなに友達の数が多いほうじゃなくて。交友関係が狭く深くってタイプだけど、そんな中で沙莉は、私が本音をちゃんと話せる数少ない友達の1人だなって感じるし、悩み相談をするとしっかり受け止めてくれる。でも、演技についての話をすることとかはあまりないよね。なんだか恥ずかしい(笑)。

伊藤 「いつ台本覚えてるの?」って聞かれたくらいだよね。

玉井 そうそう! いつ覚えてるんだろうっていう単純な疑問。本当に不思議で、今どういう作品を撮ってるのか具体的に話を聞くことがないから、知らない間に重めの作品を撮っていて「え、あのときにこの役やってたんだ」って驚く。その切り替え方がすごいなって。だから、本当にプロフェッショナルですよね。努力してる姿を見せない。

伊藤 演技の技術面とかの話をすることもないからね。

玉井 私は自分のキャラクターとかけ離れている役を演じることがほとんどなくて。例えば、すごい壮絶な人生を送ったキャラクターを演じることになったら、たぶん迷わず沙莉に相談すると思うんですけど。実際のところ、台本はいつ読んでるの?

伊藤 本を頭に入れる時間がそんなにたくさん必要ないタイプなんだけど、その持続力があまり備わってないから前日の寝る前とかに確認するかな。それで頭に入っていなかったら寝ないし。

伊藤沙莉

伊藤沙莉

玉井 でも、私びっくりしたの。沙莉が出てる舞台を観て。ドラマや映画とは違って、舞台は一気に通して演じなきゃいけないし、動きも激しい演技を、毎公演すごいエネルギーでやってるのは本当に尊敬します。

伊藤 でも、舞台も最初から通しで稽古するわけではないし、なんというか、器用に乗り越えられるタイプなんだと思う。

玉井 それは自分もわかるかも。根拠はないんだけど、「いけるかも」って思っちゃうんだよね。

伊藤 そう。自分でもよくわからない自信がある。それはかなり自分自身の支えになってるかな。

玉井 根拠のない自信を持つのは、本当はよくないことかもしれないけどね(笑)。学校のテストで例えると、私はそんなにがむしゃらになって勉強しなくても、まあまあの点数を取れればいいやっていうタイプだったんです。

伊藤 私は勉学に関してはてんでダメだったよ(笑)。

2023年6月5日更新