mol-74|メジャーデビューを夢見ていた10代の自分へ

デスキャブ大好きなんで

──3曲目の「Playback」はアッパーな仕上がりです。

武市 スタートはデスキャブ(Death Cab for Cutie)だったよね。「どんな感じの曲作りたい?」ってメンバーに聞いたら、髙橋くんが挙げてくれたんです。

髙橋 デスキャブ大好きなんで(笑)。これまでのmol-74の雰囲気を生かしつつ、新たなテイストを探したときに合うんじゃないかなと。

武市 クールな曲ってなかったからね。ビートは立っているのにサラッとやってるみたいな。あと僕だけで作るとコード進行がけっこう似てきちゃうんですけど、髙橋くんが入ってコードの構築をいろいろ考えてくれるようになって、もう監督っすね(笑)。彼はすごく耳がいいから「そこ?」みたいなところにも気付くんですよ。もちろん譲れないときは言うんですけど、「もっとこうしたほうが」と言ってくれるんで、「Playback」は髙橋くんがいなかったら絶対できてないです。

──ビートに関してはいかがですか?

坂東 僕の理想に近い音にできました。曲調はクールだけどリズムはガツンといきたくて。この曲を録った木造のけっこう広いスタジオの鳴りがすごくよかったんですよ。あと「Cメロに鈴みたいな音が欲しい」ということで最初はタンバリンを用意したんですけど、ドラムのテックの方がスレイベルを持ってきてくれて「これだ!」って。

武市 これ、すごく面白い録り方をしているんです。坂東がスレイベルを振って、僕がバイノーラルマイクを持ってその周りを動きながら録るという(笑)。

髙橋涼馬(B, Cho)

──人力でパンを振ってるんですね(笑)。歌詞に関しては、やはり“回想”がテーマになっていますよね。

武市 この曲は10代の自分に会いに行くという設定なんです。メジャーデビューさせていただいていくつも曲を作ってると、さっき言ったみたいにちょっと作業っぽくなっちゃって。それがストレスに感じることもあるんですけど、いや待てよと。毎日好きなだけ音楽を作れるこの状況は、10代の自分だったら絶対喜んでるはずだよなと思ったんです。人間って面白くて、何か1つ手に入れちゃうと、持ってなかった頃が懐かしくなったり、逆にうらやましくなる瞬間がありますよね。そういった感情を歌った曲です。「初心忘るべからず」じゃないですけど、そういう曲を「Teenager」という作品の中に入れられたのはよかったなって思います。

トム・ヨークも使っているマイクで

──4曲目の「約束」もかなり新鮮ですね。

武市 「約束」は去年の8月にソニーに「これはひどいね」って言われたデモの中にもうあったんですけど、ひどいっていうのは音質の話で曲自体は気に入っていたので、この曲を1stアルバムに入れようかって話もあったんです。ただ「約束が叶えられなかった」みたいな歌詞の曲が1stアルバムの最後に入ってたらリスナーの人が困ると思って(笑)、そこから1週間くらいもらって新しく書いたのが「Morning is Coming」だったんです。今回の作品は4曲それぞれまったく違う雰囲気にしたくて、1曲目から順番に決めていったときに最後は「約束」だなって。

──曲調はR&Bと言ってもいいのかなと。

武市 実際去年くらいからR&Bをずっと聴いていました。これまでのmol-74が影響を受けてこなかったところに一度手を出して、そこで自分たちの色や雰囲気をどれだけ出せるか試してみたかったんです。

坂東 この曲は単音を貼り付けてビートを作りました。バスの音も曲に合うようにミュートの具合をテックと相談して。一発踏んで、聴いて、変えて……を何度か繰り返して作っていきました。あとはフィンガースナップを4人で録ったり。

武市 ビートはループ感を強くして人間味を消したかったんです。歌の符割りもこれまでのmol-74には絶対なかった感じですけど、「こういう符割りにしよう」と狙ったわけではなくて、あのビートに歌を乗せていったら自然とこうなりました。今回すごく相性のいいボーカルマイクとも出会えて……ELECTRO-VOICEのRE20という、バスドラとかで使うことが多いマイクらしいんですけど、それで歌を録ってみたら「これだ!」と。あとで聞いたらトム・ヨークもボーカルマイクでこれを使ってるらしいです。いつかライブでも使えたらなって思っています。

坂東志洋(Dr)

──「Teenager」の収録曲はホントに4曲4様で、インディーズベスト的な1stアルバムを経て、本当の意味での新たなスタートを飾る作品になったと言えそうですね。

武市 もっともっとできることはあると思うんですけど、「何をやってもmol-74」と言える作品にはなったと思います。僕、最近改めてサザンオールスターズがすごいなと思っていて。サザンは何をやってもサザンじゃないですか? ああいうバンドは稀有だと思うから、僕らもあんなふうになれたらなって。昔は全然違う考え方で、同じような曲ばっかりやりたかったんですよ。でもそれだと表現の幅が狭くなっちゃうから、これからまた全然違うタイプの曲を作っても「mol-74っぽいね」と言わせたい。その一歩を今回踏み出せたんじゃないかと思っています。

ツアー情報

mol-74「Teenager」release tour
  • 2019年12月3日(火) 大阪府 BananaHall <出演者> mol-74 / マカロニえんぴつ
  • 2019年12月10日(火) 愛知県 名古屋CLUB QUATTRO <出演者> mol-74 / SHE'S
  • 2019年12月15日(日) 東京都 ヒューリックホール東京 <出演者> mol-74