水樹奈々「THE MUSEUM IV」インタビュー|攻めの姿勢を貫いた8年間の軌跡を眺める博物館 (3/3)

水樹奈々が考える、デジタル配信とパッケージ

──この8年で、音楽シーンにおけるシングルのあり方も大きく変わりました。それと同時に、アーティストにとってもシングルが持つ意味合いであったり、少ない曲数で何を表現するのかを新たに考えたりするフェーズに入ってきたのかなと思います。水樹さんにとっては、フィジカルのCDシングルと1曲単位でスピーディに発表できるデジタルシングル、それぞれをどう捉えていますか?

自分はアナログ人間なので、2018年に初めてデジタルシングルを出すことになったとき、最初は「パッケージにならないシングル曲がこれから出てくるんだ」と正直戸惑いました。これまではカップリング曲も含めて「表題曲に引けを取らないものを」という熱量で制作に取り組んできましたが、デジタルシングルはカップリングなしの1曲のみ、しかもモノとして手には取れないという不思議な感覚があって。もちろん、パソコンやスマホがあれば手軽に入手できる便利さもあります。なので、アルバムを制作する際にはデジタルシングル曲も絶対に収録するようにしたり、曲を世に出す手段の幅はより広がったのかなとポジティブに捉えられるようになりました。

──最初は不安だったんですね。

はい。形として残らないと、どうしても寂しく感じてしまう世代というのもあるのかもしれません。あと、配信サイトは次から次へと新しいものが生まれてくるから、どんどん右から左へと流れていって、最終的には残らないものになってしまうんじゃないかという不安もありました。音楽だけじゃなく、読書をするにも電子書籍はすごく便利ですけど、私は電子で読んだものって頭に残りにくくて。だから私、台本も資料も紙でいただいてます。

──アフレコ現場にデジタル版の台本をダウンロードしたタブレットを持ち込む声優さんも増えていると聞きますし、デジタルだと紙をめくる音も生じないので便利ではありますよね。

確かにそうなんですけど、スタジオで分厚い台本を片手にして文字を追う、あの感覚を含めて言葉が体に入ってくるような気がして。私、ライブ前に歌詞を確認するときも全部プリントアウトして、それをファイルに入れてリハーサルに持ち込んでいるんです(笑)。確かにタブレットのほうが楽ですし、かさばらないんですけどね。

水樹奈々

──形として手に取れる形態だからこそ、手触りなどから受ける印象も加わって、より記憶に残るのかもしれませんね。「THE MUSEUM IV」の初回限定盤には特典Blu-rayが付属しますが、これもフィジカルだからこその特典ですよね。

そうなんです。これもパッケージという形態だからこそできることなので、ぜひCDと合わせて楽しんでいただきたくて。Blu-rayは「NANA CLIPS 9」と題して、この8年間に制作したミュージックビデオが収録されています。「NANA CLIPS」シリーズはこれまで単体の映像作品としてリリースしていましたが、今回からベストアルバムに同梱することで、音と映像の両方で楽しんでもらいたかったんです。

「THE MUSEUM」の一貫したアートワークに込められた意図

──本作はさらに、「水樹奈々 スマイルギャング 1200回突破記念イベント『集まれ! 1!2!3!4! スマギャン祭り!!』」の模様も収録されるというカオスぶりです(笑)。

そうなんです! 「スマイルギャング」のイベント自体が10年ぶりで。本当は1000回のときにやりたかったんですけど、ちょうどコロナ禍で開催できず。1234回を迎えるタイミングで満を持しての開催になり、かなり弾けています(笑)。歌のイメージから入った方には、ラジオを聴いたときにびっくりされることが多いんですけど、この感じも含めて水樹奈々なので(笑)、Blu-rayを通してもいろんな水樹を味わっていただきたいです。

──印象的なアートワークについても聞かせてください。博物館を思わせる背景にクラシカルなジャケットを着た水樹さんという構図は4作とも共通していますが、4枚並べると歴史が感じられますよね。

これは私が発案したデザインなんですけど、最初の「THE MUSEUM」を出すとき、未来につながるものにしたいなと思ったんです。奈々(=7)にちなんで7枚出すことを目標にがんばろうと。最初は白いジャケットを着ていて、以降は同じポージングでジャケットの色が7色に変わっていき、顔も年齢の分だけ変わっていく。それを並べられたら面白いんじゃないかと話したら、チームのみんなも同意してくれて。今回で4枚目ですけど、1枚目の頃と比べると顔つきもこんなに変わるんだと、笑っちゃいました。

──「THE MUSEUM II」を作るときに浮かんだアイデアではなく、1枚目の時点でそこまで考えていたんですね。

そうなんです。ジャケットを見るたびに、自分の中で「ここまでの数年間、いろいろあったよね」と振り返ることができますし、それが数枚並ぶとさらに歴史が感じられて感慨深くて。今回のジャケットは、すごく大人になったなって感じてます(笑)。1枚目はちょっとおぼこい雰囲気で、2枚目3枚目になると私の中では「尖ってるなあ」って感じがして。今見返すと、「そんなに肩の力を入れなくていいんだよ」って思ったり(笑)。

──人に歴史あり、まさにミュージアムを体現しているわけですね。

なので、あと3枚……7枚コンプリートできるまでがんばります!

2026年の水樹奈々は「ゆとりを持つ」

──アーティストデビュー26年目を歩み始めた水樹さんですが、これから目指すもの、守りたいもの、新たに挑戦したいことなどありますか?

2026年は「ゆとりを持つ」を目標に掲げているんです。というのも私、スケジュールもそうだし物理的にも、何事も詰め込んじゃうタイプなんですよ。去年の初詣でおみくじを引いたときも、「一升袋には一升しか入らない。無理をすると破ける」と書いてあって、「ああ、神様には見抜かれている」と思ってしまって(笑)。生活スタイル自体も出産を経てガラリと変わったので、いかにゆとりを持ってインプットしていくかは自分の中でも大きな課題だったんです。ただ、2025年はそれをうまく達成できなかったので、今年こそ大人としてゆとりのある生活を送りたい。そして、大人になればなるほど、キャリアが長くなればなるほど、初めてのことが少なくなっていくじゃないですか。そこに関しても、例えば新しいお店を開拓してみるとか、今まで食べたことのない料理を選んでみるとか、初めてに触れることを積極的にしてみたくて。それによって、「これとこれを組み合わせると、こんなことになるんだ」という発見も生まれると思うので、そういう時間を少しでも増やして、自分の中にいろいろなストックを作っていきたいなと思っています。

──それが、結果的に音楽にもつながっていくと。

そうですね。人との出会いもまさに一緒で、以前はどの現場に行っても先輩方から教えてもらうことのほうが多かったけど、今は周りがほぼ自分よりも年下ばかりで。そこで「今、こういうのが流行ってるんですよ」と情報をもらうことも多いので、常にオープンでいて、いろんなものを吸収できるゆとりを持ちたいです。

公演情報

水樹奈々「NANA MIZUKI LIVE VISION 2025-2026」

  • 2025年12月6日(土)北海道 真駒内セキスイハイムアイスアリーナ
  • 2025年12月13日(土)愛媛県 松山市民会館
  • 2025年12月14日(日)愛媛県 松山市民会館
  • 2025年12月20日(土)兵庫県 GLION ARENA KOBE
  • 2025年12月21日(日)兵庫県 GLION ARENA KOBE
  • 2025年12月27日(土)広島県 上野学園ホール
  • 2025年12月28日(日)広島県 上野学園ホール
  • 2026年1月10日(土)愛知県 Niterra日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
  • 2026年1月11日(日)愛知県 Niterra日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
  • 2026年1月17日(土)福岡県 福岡サンパレス ホテル&ホール
  • 2026年1月18日(日)福岡県 福岡サンパレス ホテル&ホール
  • 2026年1月23日(金)東京都 TOYOTA ARENA TOKYO
  • 2026年1月24日(土)東京都 TOYOTA ARENA TOKYO
  • 2026年1月25日(日)東京都 TOYOTA ARENA TOKYO

水樹奈々 アジアツアー「NANA MIZUKI LIVE VISION 2025-2026+」

  • 香港公演
    2026年2月15日(日)マクファーソン・スタジアム(MacPherson Stadium)
  • 上海公演
    2026年3月7日(土)回响之地Music Park(※公演中止)
    2026年3月8日(日)回响之地Music Park(※公演中止)
  • ソウル公演
    2026年3月21日(土)世宗大学校 デヤンホール
    2026年3月22日(日)世宗大学校 デヤンホール
  • 台北公演
    2026年4月11日(土)台北国際会議センター(TICC)
    2026年4月12日(日)台北国際会議センター(TICC)

プロフィール

水樹奈々(ミズキナナ)

愛媛県出身の声優アーティスト。1997年に声優としてデビューし、「魔法少女リリカルなのは」「ハートキャッチプリキュア!」「NARUTO -ナルト-」といったアニメ作品で人気を集める。2000年にはシングル「想い」で歌手デビュー。2009年6月にリリースされたアルバム「ULTIMATE DIAMOND」で、声優アーティストとして初のオリコン週間ランキング1位を獲得した。同年12月には「NHK紅白歌合戦」に初出場。2011年12月には声優アーティスト初の東京ドームコンサートを2日間にわたって開催し、大成功に収めた。声優として第一線で活躍しながらコンスタントに作品を制作し続けており、2025年12月にアーティストデビュー25周年を迎える。2026年1月にベストアルバム「THE MUSEUM」シリーズの第4弾となる「THE MUSEUM IV」をリリースした。