「魔法少女リリカルなのは」20周年で生まれ変わった「innocent starter」
──にしても、シングル曲を集めた内容なので、終始フルテン状態で突き進みますよね(笑)。
オリジナルアルバムみたいに緩急を付けるんじゃなくて、リリース順に並べているから、ずっとフォルテッシモ。途中で息切れしそうになりますよね(笑)。
──だからなのか、終盤に収録された新録曲「innocent starter -MUSEUM STYLE-」を聴くとすごくホッとするんです。今回、2004年の楽曲「innocent starter」をストリングスのみでリアレンジした形で収録しようと思った理由は?
2026年に「魔法少女リリカルなのは」の新作アニメーションがついに放送開始するのですが、それが「リリカルなのは」の20周年記念プロジェクトの一環でもあって。自分にとってもたくさんの新しい扉を開けさせてもらえた、大きなターニングポイントになった作品なので、その1stシーズンのオープニングテーマを節目のタイミングでもう一度レコーディングしたいなと思ったんです。「THE MUSEUM」シリーズにはこれまでもいろんなリアレンジバージョンを収録してきましたが、わりとテンポ感のあるものをアコースティックアレンジで、バラードのようにリアレンジしたこともあって。「innocent starter」はアップテンポな曲ではないけれどギターサウンドが印象的な曲でもあるから、せっかくなのでギター以外の楽器で表現してみたいなと思ったんです。
──なるほど。
それで、過去に「NANA MIZUKI LIVE THEATER 2015 -ACOUSTIC-」というアコースティックライブで、門脇大輔さん率いるカルテット編成で「Crystal Letter」をお届けしたことを思い出して。あのときに感じた音に抱き締められるような感覚や、ストリングスだからこその軽やかさと切なさが「innocent starter」にフィットすると思い、門脇さんにご相談してみました。門脇さんもどういうアレンジにしようかと頭を悩ませたそうなんですけど、テンポを落としてよりシンプルな構成にして、カルテットだからこその歌とのタイマン……4対1ではあるんですが、一緒にハーモニーを奏でるようなアレンジにできたらいいなということで、こういう温かみのあるものになりました。
──今「歌とのタイマン」とおっしゃいましたけど、水樹さんはこういうアレンジでも戦うわけですね(笑)。
過去に私の歌と1つの楽器だけでパフォーマンスするタイマン企画というのがあったので、その名残でつい言ってしまいました(笑)。
──バックトラックの音数や質感、聴かせ方がオリジナルバージョンとはまったく異なるから、歌の表現の仕方もずいぶん意識することが多かったんじゃないでしょうか。
テンポも少し落としてますし、音数も少ないからこそ、より繊細な表現が求められるので、1音1音、歌詞の一言一句がどのように余韻を持って響くのかというところまで意識して歌いました。例えば、目の前にいる大切な人に語りかけるように歌い始め、最後は自分自身で一歩踏み出すという大きな決意を持って、新たな章へと歩みを進める……。またここから次のスタートなんだというその思いは「リリカルなのは」におけるフェイトだけではなく、自分自身にも重なるところがすごくありました。約20年にわたって歌ってきた大切な曲なので自分の体にしっかり染み込んでいて、レコーディングは3テイクくらいで終わりました。いつまでもこの始まりの気持ちを忘れず、これからも歌い続けたいという自分自身の決意表明のような曲でもあります。
──オリジナルバージョンは、20代の水樹さんが渦中にいる身として、キャラクターたちのそばに寄り添って歌うようなピュアさが強かったけど、今回のバージョンではいろんな経験を積み重ねてきたからこその深みと同時に、渦中にいるキャラクターたちを遠くから見守るような、そういう温かみが伝わってきました。
ありがとうございます。次の新作アニメでは、なのはとフェイトがまたちょっと違う立ち位置で登場するので、新しいキャラクターたちとの関わり合い方がまさにそうかもしれません。
ふるさと新居浜の祭りのテーマソング「ちょおうさじゃ」を“完全版”でアップデート
──アルバム終盤、ようやくホッとしたのも束の間、最後の最後に用意された「ちょおうさじゃ 2026」で情緒が大変なことになります(笑)。
笑っちゃいますよね(笑)。でも、「ちょおうさじゃ」は間違いなく自分のルーツですから。昨年の万博(「EXPO 2025 大阪・関西万博」。水樹は5月21日に開催された愛媛県新居浜市PRイベントに新居浜ふるさと観光大使として出演した)でこの曲をカバーさせていただいた経緯もあって、新居浜市の皆さんから「ぜひ水樹さんバージョンでレコーディングしてほしい。都はるみさんバージョンもすごく素敵ですけど、やっぱり地元の人に歌ってもらいたいんですよ」という熱烈オファーをいただいて。
──そうだったんですね。
私自身も物心ついたときからずっと親しんできた曲ですし、都はるみさん以外の方の声になることが本当にいいのか、それが私で大丈夫なのか、最初は戸惑いもあったんです。でも今回の「THE MUSEUM IV」が自分の誕生日にリリースされることもあり、自分の生まれ育った愛媛県への思いを込めた楽曲が収録されるのはすごく素敵なんじゃないかなと思って、ぜひベストアルバムに入れさせてくださいと私からお願いしました。「ちょおうさじゃ」にはまだレコーディングされていない幻の7番8番の歌詞が存在していたので、せっかくレコーディングするなら、8番までしっかり歌った完全版として収録するのはどうでしょう?と提案をさせていただいたんです。原曲のよさを忠実に再現しようと、演奏するミュージシャンの皆さんもすごく細かいところにまでこだわって録ってくださったので、最初に音源を聴いたとき「これ、オリジナルバージョンの音ですよね?」と錯覚してしまったくらいなんです。地元の皆さんも、これなら違和感なく楽しんでいただけるんじゃないかと思います。
──僕もこの曲について調べたとき、真っ先に出てきたのが都はるみさんのバージョンで。実際に聴き比べてみましたが、まったく違和感はありませんでしたよ。正直、このアルバムの流れでカバーバージョンを収録するとなると、アレンジに関してもほかの曲と差異のないよう、いろいろ考えることもできたと思うんです。だけど、何を大切にしているかという軸がブレないからこそ、オリジナルに忠実なアレンジになったわけですよね。
そうなんです。自分の細胞に染み込んでいる曲なので、オリジナルへのリスペクトを第一に、故郷への愛を込めて歌えばきっと皆さんに伝わるはずだと。私が「ちょおうさじゃ」と歌ったあとに「ちょおうせじゃ」という男性のコーラスが続くんですけど、そこも新居浜市の方に入っていただいて、地元のリアルな掛け声をレクチャーしてもらいました。地元の方には「今年のお祭りからぜひ使わせていただきます!」と言っていただいて、すごく楽しみにしています。
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