音楽ナタリー Power Push - 宮沢和史

「音楽」を経て見つめる未来

未来を信じて活動していく

──すでに事務所も離れられて、完全にお一人での活動ですよね。デビューから26年を経て、初めて経験することばかりなのではないでしょうか?

宮沢和史(撮影:喜瀬守昭)

今年の10月には、沖縄で「世界のウチナーンチュ大会」が開催されます。これは僕にとっては大きなイベントなので、それにあわせてこれまで記録してきた沖縄民謡の14枚組CDを作り、県内の学校や図書館に配ろうとしているんですが、その制作作業もすべて自分だけです。歌詞カード作りなんて、なかなか他人に頼めないですからね。ルビを振るのも大変ですから。昨日も歌詞にどうしてもわからない部分があったので、それを歌っている沖縄の多良間島の民謡歌手に電話して正しい歌詞をメールで送ってもらおうとしたら「ネットをしたことがない」と言われて。口頭だと正確にわからないのでどうしようと思っていたら、その方の知り合いが写メで歌詞を撮って送ってくださって。そんな毎日ですよ(笑)。気が遠くなりそうですけど、10月までには形にしないと。

──齢50にして、なんだかインディーズバンドが自主制作盤を作ってるみたいですね。

デビューアルバムが14枚組のね(笑)。なにせ240曲もあるから。すべて自分の足で島々を回って集めたものですし、これを世の中に旅立たせるのはすごくやりがいがありますよ。あとは、僕が沖縄でプロデュースしている「みやんち」というお店があるんですが、そこでもいろいろな試みを考えています。大きいことも、小さいことも。実現できなかったら恥ずかしいのでまだ具体的には言いませんが、若い人にも、そして大先輩たちにも僕という存在を使って光を浴びてもらいたいと思っています。

──そうした試みが沖縄の若い人や子供たちの耳に触れて、未来を少し広げていく。

そうなるといいですね。その成果はすぐには目に見えないかもしれないし、生きている間に実感できないかもしれないけれど、それを信じて。今、沖縄でくるちの木を植えているわけですけど、最初に「この成長を見ながら毎年飲みたいね」なんて言っていたものの、成長がスローすぎて、3年経ってもそれほど見た目が変わらないんですよ(笑)。これが三線の棹に使えるようになるまでには100年かかりますから、あと97年。その頃には、僕はほぼ確実にこの世にいないですね。だけど、ある人が「これが100年後に三線になったとしたら、その間、沖縄には戦争がなかったってことだよね。僕らが見られないとしても、それだけでいいんじゃない?」と言ってて、本当にそうだと思ったんです。100年後の平和、それを信じる人たちがいること、いたことの象徴に、この木がなればいいなと。

ロックは「信じる音楽」

──信じられる未来があることって、とてつもなく大事ですよね。

僕は、ロックというのは「信じる音楽」だと思っているんです。人によってその定義は違うでしょうけど。嘘は絶対に言わず、自分の言ったこと、自分との約束を守りきる。それを聴くものにも信じてもらうというのが、僕のロックの定義。それをTHE BOOMでもソロでもやってきたつもりだし、後悔は1つもありません。

──そうしたこれまでの活動の軌跡や、ステージを降りる決断に込められた思いのすべてが、今回の映像の中には結晶のように詰まっているわけですね。

そうですね。長年やってきたけれど似たような曲は1つもないし、それでいて、やっぱり一貫性もある。とっ散らかった中に一貫性を求めるには、それなりに長いことやらなければダメなんだ、ということなんだと思います。「極東サンバ」の頃でやめてたら、芯がないままで終わってたかもしれませんね。「いろいろ寄り道をしてきたけど、宮沢はこういうことがしたかったんだな」ということが自分で納得できたので、満足しています。アルバムのほうの「MUSICK」もそうで、すべての曲は入れられないというジレンマはありましたけど、かわいい作品ですね。こうしてまとめられたことで、「長いこと音楽をやってきてよかった」と、心から思っています。

ライブBlu-ray / DVD「Miyazawa Kazufumi Concert Tour 2016 MUSICK」 / 2016年6月1日発売 / よしもとアール・アンド・シー
[Blu-ray Disc] 5400円 / YRXN-80006
[DVD2枚組] 4860円 / YRBN-80157~8
本編(DVD DISC1)
  1. シンカヌチャー
  2. E TUDO TAO MENOR(矮小な惑星)
  3. BRASILEIRO EM TOQUIO
  4. I LUSAO DE ETICA
  5. あの海へ帰りたい
  6. SPIRITEK
  7. 世界でいちばん美しい島
  8. さがり花
  9. Perfect Love
  10. Primeira Saudade
  11. ハリクヤマク
  12. ちむぐり唄者
  13. The Drumming
  14. 楽園
  15. Bridge
  16. SAMBA CAOS
  17. Mambolero
  18. WONDERFUL WORLD

<アンコール>

  1. 抜殻
  2. HABATAKE!
  3. DISCOTIQUE
  4. 遠い町で
特典映像(DVD DISC2)
  • リハーサル~ツアー初日ドキュメンタリー
  • 沖縄みやんちSTUDIO&COFFEEスペシャルライブ
宮沢和史(ミヤザワカズフミ)

宮沢和史

1966年山梨県甲府市生まれのシンガーソングライター。THE BOOMのボーカリストとして1989年にデビューし、2014年に解散するまでに14枚のオリジナルアルバムをリリース。一方でソロ名義で5枚、GANGA ZUMBAとしてアルバムを2枚発表している。2015年12月には過去のナンバーや新曲、新録のセルフカバー曲などをパッケージしたベストアルバム「MUSICK」を発売し、2016年1月に歌手活動の休止を発表。同月に休止前最後となる全国ツアー「宮沢和史 コンサートツアー 2016『MUSICK』」を開催した。6月には同ツアーのファイナル公演の模様を収めた映像作品「Miyazawa Kazufumi Concert Tour 2016 MUSICK」をリリースしている。