ネーネーズ|沖縄から全国に届けたい、夏を告げる“真南風”

1990年のデビュー以来、沖縄を拠点に活動を続け、現在5代目となるネーネーズがニューアルバム「MAPAI」をリリースした。沖縄・八重山地方の言葉で夏を知らせる暖かい季節風を意味する言葉・真南風(マパイ)を冠した本作には、宮沢和史、島袋優(BEGIN)、前川真悟(かりゆし58)の提供曲、プロデューサーであり沖縄音楽の重鎮である知名定男の楽曲に加え、メンバ—自身が作詞・作曲した楽曲も収録。幅広い層のリスナーが楽しめるポップアルバムに仕上がっている。

音楽ナタリーでは、今年1月にメンバーが脱退し、グループ史上初めて3人体制となったネーネーズにインタビューを実施。「3人になったことで、それぞれの個性が出るようになった」というグループの現状と、新しいチャレンジが詰まった本作「MAPAI」の制作について語ってもらった。

取材・文 / 森朋之

初代にはできなかったことをやってやるぞ!

──ネーネーズは今年の夏で結成28年を迎えます。皆さんは5代目として活動されていますが、加入する前はネーネーズに対してどんなイメージを持っていたんですか?

沖山美鈴 私は小学校1年のときから沖縄民謡を習っていて、ネーネーズの曲を歌わせてもらっていたんです。だから曲と名前は知っていたんですが、実際に見たことがなかったせいか、自分の中で空想上のグループみたいな気がしていて。神様や仏様みたいに見たことない感じと言うか。そんなグループに自分がいるのは不思議ですね。

沖山美鈴

本村理恵 私がネーネーズを知ったのは中学生のときです。「黄金の花」という曲を聴いて、子供ながらに歌詞から温かさ、強さをすごく感じて。そのあと、動画サイトで観たんですけど、美鈴と同じで実際に目にしたことがないから「もう実存していないんだろうな」と思い込んでいたんです。ずっと昔にこんなにすごいグループがいたんだなって。だから、ネーネーズとして活動しているのはやっぱり不思議ですね。自分でも面白いなと思うんですけど、加入してからネーネーズの価値がわかってきて、憧れる気持ちも強くなっているんですよ。

──ネーネーズの伝統を受け継ぐ責任感もあるのでは?

上原渚 それもあるし、私たちのカラーをしっかり出したいというプライドもあります。受け継がなくちゃいけないプレッシャーと、「初代にはできなかったことをやってやるぞ!」という気持ちが両方あると言うか。

──2018年1月にメンバーが脱退して4人から3人体制となりましたが、今のネーネーズの強みはどこにあると思いますか?

沖山 メンバーが1人脱退したときに、プロデューサーの知名定男さんが「これからはこの3人がいいんじゃないか」とおっしゃっていたんです。その言葉が自分たちの強みなのかなと思いますね。3人になったことで、それぞれが持っている個性みたいなものが見えてきたと言うか。定男さんにも「アラが出てきた」と言われたんですよ。

上原 “アラ”って普通はマイナスの意味ですけど、私たちはそれがうれしかったんです。ネーネーズとしてひとつにまとまっているのも大事だけど、個性が見えないのはイヤだなと思っていて。3人それぞれの個性が前に出たうえで、まとまっていたいんですよね。

沖山 個性を磨いていけば、それがネーネーズの強みになって、もっと大きなものが生まれるかもしれないし。今のところは“かも”ですけど(笑)。

本村 (笑)。3人になったことで、向上心が高まったと思います。歌はもちろんですけど、メンバーが1人抜けたことで、彼女が担当していた楽器を3人で代わる代わる演奏したり、ソロ曲が増えたり。ステージの見せ方も変わってきましたから。

沖山 最初は必死でしたけどね。「4人が3人になったんだから、その分しっかり声を出さないといけない」「お客さんに3人になって、寂しくなったと思わせちゃいけない」と思っていたので。でも、やってみると「3人になってそれぞれの特徴がわかりやすくなったし、逆にパワーアップしたよね」と言ってもらえることが多かったんです。「そんなに力まないでも大丈夫なんだな」とお客さんからヒントをもらっています。

上原渚

上原 ネーネーズのベースの部分はずっと変わっていないんだけど、半年くらい経って、3人で舞台に立つことに慣れてきて。「パワーアップしたね」と言ってもらえるのはうれしいですね。

──「ライブハウス島唄」(ネーネーズの本拠地である、沖縄・那覇の国際通りにあるライブハウス)の存在も大きいですよね。ホームと呼べる場所があることで、自分たちの状態を常に把握できると言うか。今も毎日のように舞台に立ってるんですよね?

沖山 週5日、立ってます。……すごいですよね。

上原 自分で言う?(笑)

沖山 先に言おうと思って(笑)。

上原 (笑)。確かにライブハウス島唄があるのは大きいです。でも代が変わったり、メンバーが抜けたりするとライブハウスに来なくなるお客さんもいらっしゃるので、そうさせないためにプレッシャーもあります。

知名定男の采配「メンバーが作詞・作曲した曲も入れる」

──ではニューアルバム「MAPAI」について聞かせてください。知名定男さんの楽曲のほか、島袋優さん、宮沢和史さん、前川真悟さんの提供曲、そしてメンバーの皆さんのオリジナル曲で構成された作品ですね。

沖山 まず「沖縄の人だけではなく、内地の皆さんも聴きやすい、誰もが口ずさめるような曲をたくさん入れよう」というコンセプトがあって。その流れで島袋さん、宮沢さん、前川さんに曲を書いていただくことになったんですが、「メンバーが作詞・作曲した曲も入れるからね」と言われたときは「ウソでしょ!」って。

上原 「一体、何を言ってるんだ?」と思いました(笑)。

沖山 以前から「メンバーも曲を作れるようにならないといけないよ」とは言われていたんですけど、「はーい」と返事だけして、何もやってなかったんです(笑)。でも、いよいよ本当にそうなって「どうしよう」と。

本村 これまでのネーネーズの曲はほとんど知名定男先生が作ってましたからね。

本村理恵

沖山 「曲を作れるのはすごい人」というイメージがあったし、とても自分にはできないなと。今回は私の作った曲は入っていないんですが、2人(上原、本村)の曲が収録されていて。アルバムを聴くと「やってみてよかったな」と思います。やってみないとできるかどうかはわからないし、自分たちで「できない」と決めてしまうのはよくないなって。

本村 そうだね。ネーネーズには“知名定男先生の代弁者”という役割があると思っていて。それは今も変わらないんだけど、自分たちが作った曲が入ることで、ネーネーズに対する自覚がさらに強くなったと言うか。いろんな変化がありました。

──上原さんは「島季節」の作詞を担当なさってます。歌詞を書くのはやはり大変でしたか?

上原 最後までどうしたらいいかわからなかったです。「島季節」の歌詞は、私の母(上原里子氏)との共作なんですよ。母がカレンダーの裏紙にいろいろ書いていて、その中から沖縄らしさが感じられる言葉を選んで。曲はもともとあったもので、メロディと組み合わせて言い回しを変えながら作っていきました。うまくハマっていないところもあるし、歌うのも一番苦労しましたね。

──沖縄の四季が詩情豊かに描かれた素敵な歌だと思います。お母さんも歌を作る方なんですか?

上原 学生時代に合唱団に入ってたみたいですね。

沖山 歌がすごく好きですよね?

上原 そうだね。小さい頃によく歌を歌ってくれたんだけど、その中に母が自分で作った歌もあったみたいだから(笑)。

ネーネーズ「MAPAI」
2018年6月22日発売 / KING RECORDS
ネーネーズ「MAPAI」

[CD]
3240円 / KICS-3716

Amazon.co.jp

収録曲
  1. FaiFai[作詞・作曲:本村理恵 / 編曲:前濱YOSHIRO]
  2. 千惚り万惚り[作詞・作曲:前川真悟 / 編曲:YANAGIMAN / 沖縄訳詞:知名定男]
  3. 美童歌心[作詞:吉田康子 / 作曲・編曲:知名定男]
  4. 若夏ジントーヨー[作詞・作曲:島袋優 / 編曲:島袋優、迎里中]
  5. 人生半分・酒半分[作詞:ビセ・カツ / 作曲:知名定男 / 編曲:前濱YOSHIRO]
  6. 梅の香り[作詞・作曲:新川嘉徳 / 編曲:知名定男]
  7. 島季節[作詞:上原渚、上原里子 / 作曲:知名定徳 / 編曲:嘉手苅聡]
  8. 海の声[作詞:篠原誠 / 作曲:島袋優]
  9. 乾杯[作詞・作曲:本村理恵 / 編曲:前濱YOSHIRO]
  10. あなたの声[作詞・作曲:本村理恵 / 編曲:嘉手苅聡]
  11. 亜壇の心[作詞・作曲:宮沢和史 / 編曲:前濱YOSHIRO]
  12. ハーモニー[作詞・作曲・編曲:知名定男]
  13. ハリクヤマク ※ボーナストラック

ゲストミュージシャン:
前川真悟(Cho)、吉田康子(Vo)、知名定男(Vo)、山城和正(三板)

イベント情報
ネーネーズ「MAPAI」レコ発ライブ 2018
(※終了分は割愛)
  • 2018年7月9日(月)東京都 沖縄料理 居酒や こだま
  • 2018年7月10日(火)宮城県 enn 2nd
  • 2018年7月11日(水)北海道 札幌KRAPS HALL
  • 2018年8月27日(月)大阪府 BananaHall
  • 2018年8月28日(火)愛知県 オキナワAサインバーKOZA
  • 2018年8月29日(水)愛知県 オキナワAサインバーKOZA
ネーネーズ
1990年夏に沖縄民謡の重鎮である知名定男のプロデュースによって結成された沖縄音楽グループ。これまでに数回のメンバー入れ替えがあり、現在は5代目にあたる沖山美鈴、上原渚、本村理恵の3人で活動している。1991年4月発表の1stアルバム「IKAWU」で話題を集め、1997年まで年1回のペースでアルバムを発表。沖縄を拠点にしつつ各地でもライブを行っており、これまでに2度のヨーロッパツアーを成功させた。1999年にメンバーを一新し、2000年の「第26回主要国首脳会議」(九州・沖縄サミット)開催時には沖縄芸能派遣団の一員としてロシア、フランス、イタリアでパフォーマンスを行った。2015年にアルバム「reborn」をKING RECORDSからリリースし、メジャーへと復帰。2016年にアルバム「DIKKA」を発表し、収録曲の「ヤガマヤ」は沖縄音楽の配信サイト「ちゅらサウンズ」の週間チャートで1位を獲得した。2018年1月にメンバー1名が卒業。これによりネーネーズ結成以来初めての3人体制になり、同年6月にニューアルバム「MAPAI」をリリース。沖縄・ライブハウス島唄を拠点にライブを行っているほか、新作を携えて全国各地を回っている。