ナタリー PowerPush - 宮崎薫
“今までの私”から卒業 輝く22歳の挑戦
私の「革命」は心の叫び
──ミニアルバムには、andymoriの「革命」、サカナクションの「ネイティブダンサー」、[Champagne]の「サテライト」というカバー曲も収録されています。この選曲も、宮崎さんの世代感を感じたんですけど。
んー、それは世代っていうよりは、自分個人が偏愛的に好きになった曲なんですよね。ドーンと落ち込んでるときの自分を助けてくれた曲たちで、自分のために存在してくれた曲、って勝手に思っているくらい(笑)。当時、歌をやろうと決心したはいいんですけど、全く誰にも届かなくて、私はダメなのかもしれないって思っていたときに、グサッて刺さった曲。聴いてたっていうか、部屋で1人で歌ってたんですよね。この3曲は、少しずつ時期はずれてるんですけど、その時々で私を支えてくれた曲たちなんです。
──私は特に、「革命」をカバーするところに意思を強く感じました。
私、andymoriの「1984」が大好きで。で、「革命」が出たときに普通にリスナーの1人として楽しみにしてて、CD買って聴いたんですけど、激しくグサーッと来てしまった。私の落ちてる心にフッと風が吹きました。この曲を聴いている間だけは、ちょっとだけ気持ちが軽くなれる気がして、しばらくはこの1曲だけをリピートで聴いてて、さらにしばらくしてからはこの曲をずっと歌ってました。
──原曲と自分のカバーを聴き比べてみて、どんな違いがあると思いますか?
andymoriのオリジナルの「革命」は勢いもあるし力強いじゃないですか。でも私の「革命」は、心の中の叫び、自問自答みたいな感じで(笑)。自分がダメでダメで、歌も誰も聴いてくれないし、良いとも言ってくれないし、もうあきらめちゃおっかなー、みたいになっていたときにこの曲と出会って、「きっといつか届くはずだ」って部屋でポロポロとギターを弾きながら口ずさむように歌って、「大丈夫、大丈夫、大丈夫」って、自分に言い聞かせてました。CDでもそのときの感じで歌いたかったんで、エンジニアさんにお願いして、部屋で歌ってたのと同じ感じでポロポロと弾き語ったのを録ってもらいました。「ネイティブダンサー」も「サテライト」も、歌うとそのときの気持ちが思い出されて、ちょっとうるっと来ちゃいますね。
答えを出すより、一緒に落ち込こんだりできる曲を書きたい
──それから世代ってところでいうと、いわゆる“ゆとり世代”ですよね。自分がゆとり世代の人だということを意識しますか?
めちゃめちゃしますよ! ただ、ずっと全く気にしてなかったんですけどね。ゆとりだかなんだか知らない、っていうくらいゆとりだったんだと思うんです(笑)。ただ、音楽やっていこうって決めて、壁にぶち当たって、自分を見直したときに気付きました。「ああ、ゆとりなんだ私」って。私、平成元年生まれなんですけど、今や平成生まれって言うことがすごく恥ずかしくなるときもあるんです。昭和が良かったな、とか(笑)。
──あはは(笑)。
同級生が、会社で上司に「出た! ゆとり」みたいに言われたって話をしてて。そういうことを話しながら、「だから何? 私たちのせいなの!?」ってぷんぷんしたりしていますよ(笑)。ゆとり教育にしてくださいって私たちが言ったわけじゃないんだけど、そういうふうに育っちゃった私がここにいるのも事実っていうか。結局、私がどうするかですもんね……。
──なるほど。そういう思いが、宮崎さんの言葉とメロディで世に出ていく日も楽しみですね。
うん、ゆとりを醸し出した曲もこれから出てくるかもしれない(笑)。怒ったり悩んだりしたことも、そのまま赤裸々に出ていくと思います。私、落ち込んでいるときは落ち込んでいる曲を聴きたいんですよ。だから、自分がまだまだなのもありますけど、答えを出してあげるより、一緒に落ち込んだりできる曲を書きたいなって思っています。あと、そういう気持ちを肌で目で感じられると思うのでライブも楽しみです。
収録曲
- 君と空
- Graduation from me
- さよなら
- 革命(andymori)
- ネイティブダンサー(サカナクション)
- サテライト([Champagne])
※カッコ内はオリジナルアーティスト
宮崎薫(みやざきかおる)
1989年生まれ。東京出身。幼少の頃をロンドンで過ごし、親の影響で常に音楽が身近にある環境で育ち、自然と人前で歌うようになる。学生時代はクラシックバレエとピアノ、トランペットを学びつつ、手伝いで友人のバンドに参加。都内のライブハウスで活動するも「自分で歌いたい」という気持ちが強くなり、ボーカリストとしての自分を再認識する。19歳のとき、音楽の仕事をすることを改めて決意。楽曲制作と同時にデモテープの作成を始める。2011年には地道に送り続けたデモテープが業界関係者の耳に止まり、イベント出演をきっかけに出会ったスタッフとともに楽曲制作を開始する。2012年、大学卒業と同時に音楽活動を本格的にスタートさせた。同年6月、タワーレコード限定にてインディーズデビュー盤「Graduation from me」をリリース。