ナタリー PowerPush - 宮崎薫

“今までの私”から卒業 輝く22歳の挑戦

この春大学を卒業したばかりの新人アーティスト・宮崎薫がタワーレコード限定でインディーズデビュー盤「Graduation from me」をリリースした。デビュー前から「マツダデミオ」のCMイメージソングに「君と空」が起用されたことで、既に彼女の歌声を耳にしている人も多いだろう。デビュー盤にはこの曲をはじめ、松岡モトキがプロデュース、矢野まきが作詞作曲を手がけたオリジナル曲3曲、さらにandymori「革命」、サカナクション「ネイティブダンサー」、[Champagne]「サテライト」というカバー3曲が収録されている。

ナタリー初登場となる今回は、そんな彼女の経歴やアーティストになるまでの思いを中心に、デビュー盤にまつわるエピソードや、自分を含む“ゆとり世代”について話してもらった。

取材・文 / 高橋美穂 インタビュー撮影 / 井出眞諭

※宮崎薫の「崎」は立つさきが正式表記になります。携帯端末にて非対応の旧字体のため、本特集では「宮崎」と表記しています。

歌う以外にやりたいことはなかった

──宮崎さんが、歌ったり、曲を作るようになったのはいつ頃ですか?

インタビュー写真

エスカレーター式の学校で、何不自由なくのんきに育ってきちゃったんですけど、そんな中でも高校の終わりくらいには、周りの子たちも就職のことだったり、どんな大人になっていくかを考え出すようになって。「ああ、もうそんなタイミングなんだな」と思って、私なりにじっくりと考えて、私は本格的に歌をやってみようと思ったんですよね。ちっちゃい頃から漠然と、歌を歌っていくんだろうなとは思っていたんですけど、改めて考えてみたときに、自分でも驚くほどその気持ちが強いのが確かめられたというか。

──ほかにやってみたい仕事はなかったんですか?

そうなんです。びっくりするくらいほかにやりたいことがなくて。小学校1年の作文にも、将来の夢を汚い字で(笑)「歌手」って書いていたんです。

──影響を受けたアーティストっていますか?

子供の頃は、Mr.Childrenとか東京事変が大好きでした。自分が歌うってことを意識するようになってからは、やっぱり女性のシンガーソングライターを漁って聴くようになって、シェリル・クロウ、リサ・ローブ、ジョニ・ミッチェルとどんどん古いほうにさかのぼっていきました。

──ピアノはいつ頃からやっていたんですか?

幼稚園の頃から10年間くらいやっていて……って言っても、ほんとに好きでやってる感じで。先生もスパルタじゃなかったんで、ダラダラと楽しみながら弾いてた感じですね。

──で、コピーから徐々にオリジナル曲も作り始めた、と。

そうですね。思春期丸出しの、ほんとにヘナチョコな曲ばっかりなんですけど(笑)。「こりゃダメだ」と思いつつも、飽きずに作り続けてましたね。

好きなアーティストはギターを弾く人ばかり

──作曲は全てギターで行ってるんですか?

インタビュー写真

最初はピアノで作ってたんです。ピアノしかできなかったんで、自然にピアノでポロポロと。でも、なんかいい曲ができなくて「なんだかな」って思ってて。ま、改めて考えてみると、自分の好きなアーティストは、ギターを弾く人ばっかだなあって思って、「これはやっぱギターでしょう」と。それで、近所の知り合いの家の使われてないギターを拝借しまして、まずGのコードから(笑)。相変わらず大した曲はできなかったんですけど、なんかしっくり来て、それ以来、基本はギターを相棒にして作曲してます。

──バンドは組んだりしていなかったんですか?

高校のときとかに頼まれて、友達のバンドでピアノやキーボードを弾いたことはありますけど、これもなんだかはまらなかった。多分、メンバーの本気度が低かったからですかね。私は自分で歌いたいなって気持ちが強かったし、ちょっとぬるま湯に感じちゃったんだと思います。自分のぬるま湯人生に少なからずコンプレックスがあるから、自分のやりたい「歌」に関してだけは、ぬるま湯を避けようと思ったのかな、と思います。友達も少ないし(笑)、1人でやるようになりました。

タワーレコード限定ミニアルバム「Graduation from me」2012年6月6日発売 1500円(税込)TOWER RECORDS TRJC-1005

  • 「Graduation from me」 / TOWER RECORDS ONLINEへ
収録曲
  1. 君と空
  2. Graduation from me
  3. さよなら
  4. 革命(andymori)
  5. ネイティブダンサー(サカナクション)
  6. サテライト([Champagne])

※カッコ内はオリジナルアーティスト

宮崎薫(みやざきかおる)

1989年生まれ。東京出身。幼少の頃をロンドンで過ごし、親の影響で常に音楽が身近にある環境で育ち、自然と人前で歌うようになる。学生時代はクラシックバレエとピアノ、トランペットを学びつつ、手伝いで友人のバンドに参加。都内のライブハウスで活動するも「自分で歌いたい」という気持ちが強くなり、ボーカリストとしての自分を再認識する。19歳のとき、音楽の仕事をすることを改めて決意。楽曲制作と同時にデモテープの作成を始める。2011年には地道に送り続けたデモテープが業界関係者の耳に止まり、イベント出演をきっかけに出会ったスタッフとともに楽曲制作を開始する。2012年、大学卒業と同時に音楽活動を本格的にスタートさせた。同年6月、タワーレコード限定にてインディーズデビュー盤「Graduation from me」をリリース。