音楽ナタリー Power Push - MIYAVI
変化を恐れない男の15年間とこれから
15年前の自分に言いたいのは「そのままでいいぞ」
──15年の歩みの中で、MIYAVIは確かにルックスも音楽性も変わりました。日本語がメインだったリリックも、今では英語の割合が8、9割を占めているし、ギターも最近はテレキャスターを持って、代名詞となったスラップ奏法に加えてストレートプレイもたくさん混ざって、EDMのエッセンスも入ってきた。MIYAVI自身、こうした変化についてはどう捉えていますか?
荷物は持たないけど、武器が増えてきたという感じですかね。同じデブでも踊れるデブは尊敬に値するだろうというか(笑)。
──つまり軽やかな重戦車でありたい、みたいな?
そうそれ!(笑) あくまでも持ち物は闘うためのツールであって、自分を制約するものではないという考え方ですね。それに縛られたらいつでも捨てる勇気はある。こだわりがないんだろうね。
──過去のインタビューでも「自分のことをリセットしてきた回数は人には負けない」と語っていましたね。10代の時に没頭していたサッカーを辞めたとき、上京したとき、デビューしたとき、独立したとき、スタイルを変えたとき、そして海外に渡ったときと、たしかにMIYAVIの歴史はリセットと断捨離の積み重ねとも言えるわけで。
ただ、俺はそれが必ずしも正解だとは思っていなくて。捨てる勇気もあれば捨てない勇気もあると思うから。たぶんこれは一種の役割分担みたいなもので、例えばコミュニティに根付いた活動をしているバンドやアーティストだっているし、その中には俺自身すごく尊敬している存在もたくさんいます。ただ、たまたま「俺は違う」っていうだけで。荷物を背負ったまま旅に出られないだけなんですよ。それにみんながみんな旅に出ちゃってもダメなはずだから、それぞれの役割分担の中で、得意不得意も見据えながら、互いのやるべきことをやればいいんだと思うんです。
──だからBOBOのような相棒はいつつも、演奏形態ではなく活動形態として、やっぱりMIYAVIはバンドじゃなくてソロアーティストじゃなきゃダメなんでしょうね。
うん。バンドじゃ無理っす。絶対に無理(笑)。
──もし15年前の自分に声を掛けてやれるとしたら?
「そのまま行け。そのままでいいぞ」って言ってやりたい。不安だったし、たくさん迷ったけど間違ってはなかったと思うし。
間違いはあったけどすべて正解にしてきた
──今振り返って「あのときだけはああしておけばよかったなあ」と思えるタイミングはありましたか?
面白い質問だね(笑)。んー……でも、ないかな。
──まったく?
間違いはたくさんあったんだよ? でもその都度、軌道修正したり、ひっくり返したりしてすべて正解にしてきた気がするから。例えば渡米したタイミングも、たぶん本当はちょっと早かったんだよね。次女が学校に入るタイミングとか、向こうでのマネジメントを見つけるタイミングとかを振り返っても、あの4度目のワールドツアーを終えたばかりのタイミングはちょっと時期尚早だった。だから最初の2年は苦しんだ。でも、今はそこを乗り越えたから、むしろ早く行ってつらかったから俺は強くなったという自信につながっている。もっと言えば、実はもっと前に渡米ないし渡英を考えた時期があったんです。
──ほう。
「EMI ROCKS」(所属レーベルのライブイベント)を観に来た当時のEMIのトップと話す機会があって、そのタイミングで渡米なり渡英なりしようと思っていたんだけど、震災が起こったでしょ。ここで行っても根無し草になるだけだなと思ったから止めたんです。でも、あのタイミングで行っていたらどうなっていたかな?とか、今はまったく思わないし。もっと昔にさかのぼれば、17、8歳でDué le quartzというバンドをやっていた。あれで上京じゃなくて渡米していたら、俺はどうなっていたかな?とか、考えようと思えばいくらでも分岐点はあるだろうね……ああ、独立したタイミングはわりとよかったと思うので、そこは逆に自分を褒めてやりたいね(笑)。
──なるほど。
日本でやってきたことの大切さや、日本というルーツを持っていることの強さを感じているから後悔はまったくない。もちろんアメリカで勝負するうえで、日本で吸収したことが重いと感じるときだってある。J-POP感とかね。今はそれを捨てて勝負をしているわけで。でもいきなり渡米していたら、今の奥さんと出会っていないし娘とも会っていないわけでしょ? だから全部自分で正解にしてきたんだと思うよ。オセロみたいなもんで、端っこの四隅さえ取っておけば、あとで塗り替えられるんだよ。たぶんその端っこは、信念とか、自分の確固たるものであって。そう言う意味では昔の自分に「端っこだけは取っておけよ」とは言えるかもね(笑)。正直こうしたベスト盤みたいな機会でもないと、普段は振り返っている暇がまったくないんですよ。前しか見ていないから。だからこんなメニューのない寿司屋みたいな感じのヤツを好きでいてくれている人たちに「ありがとう」という場がこのベスト盤であって。
──メニューのない寿司屋は言い得て妙ですね。
寿司屋なのに「今日はいい粉が入ったからカレー作るよ!」みたいな感じだもんね(笑)。でもね、ビーツもピアジェも難民キャンプも、自分がやれることとやりたいことをやるっていうだけで、結果も意義も自分じゃ正直よく分からないんだ。ただ1つだけ自負できるのは「毎日燃え尽きてます」ってこと。それだけは胸を張って言えます。
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- ベストアルバム「ALL TIME BEST "DAY 2"」 / 2017年4月5日発売 / Virgin Music
- 初回限定盤 [CD2枚組+DVD] 8424円 / TYCT-69114
- 通常盤 [CD] 2700円 / TYCT-60097
DISC 1 -DAY 1-
- What's My Name? -Day2 mix(新録)
- Universe -Day2 mix (新録)
- Ahead Of The Light -Day2 mix(新録)
- 素晴らしきかな、この世界 -What A Wonderful World -Day2 mix(新録)
- Guard You -Day2 mix(新録)
- Live to Die Another Day -存在証明-
- What's My Name?
- Survive
- Torture
- Strong
- Day 1
- Ahead Of The Light
- Horizon
- Secret
- Real?
- Let Go
- The Others
- Afraid To Be Cool
- Fire Bird
- Long Nights
DISC 2 -DAY 0-(初回限定盤のみ)
- ロックの逆襲 -スーパースターの条件-
- Freedom Fighters -アイスクリーム持った裸足の女神と、機関銃持った裸の王様-
- 結婚式の唄-with BAND ver.-
- セニョール セニョーラ セニョリータ
- 愛しい人(ベタですまん。)-2006 ver.-
- Dear my friend -手紙を書くよ-
- 君に願いを
- Selfish love -愛してくれ、愛してるから-
- 咲き誇る華の様に -Neo Visualizm-
- 素晴らしきかな、この世界 -What A Wonderful World-
- 陽の光さえ届かないこの場所で feat. SUGIZO
- Girls, be ambitious.(インディーズ盤音源)
DVD(初回限定盤のみ)
- MIYAVI Japan Tour 2016“NEW BEAT, NEW FUTURE”Tour Final 幕張メッセLIVE映像(約87分予定)
NTT Docomo presents MIYAVI 15th Anniversary Live "NEO TOKYO 15"
- 2017年5月21日(日)東京都 赤坂BLITZ
- <出演者> MIYAVI / THE ORAL CIGARETTES
- 2017年5月25日(木)東京都 UNIT
- <出演者> MIYAVI / GLIM SPANKY
- 2017年5月26日(金)東京都 Zepp DiverCity TOKYO
- <出演者> MIYAVI / ゆるめるモ!
- 2017年5月28日(日)東京都 下北沢GARDEN
- <出演者> MIYAVI / LOCAL CONNECT
- 2017年6月6日(火)東京都 赤坂BLITZ
- <出演者> MIYAVI / 金子ノブアキ
- 2017年6月10日(土)東京都 渋谷duo MUSIC EXCHANGE
- <出演者> MIYAVI / coldrain
- 2017年6月11日(日)東京都 LIQUIDROOM
- <出演者> MIYAVI / 04 Limited Sazabys / 魔法少女になり隊
- 2017年6月12日(月)東京都 LIQUIDROOM
- <出演者> MIYAVI / SiM
- 2017年6月15日(木)東京都 TSUTAYA O-EAST
- <出演者> MIYAVI / Crossfaith
- 2017年6月21日(水)東京都 clubasia
- <出演者> MIYAVI / Crystal Lake
- 2017年6月22日(木)東京都 TSUTAYA O-WEST
- <出演者> MIYAVI / OKAMOTO'S
- 2017年6月24日(土)東京都 WWW
- <出演者> MIYAVI / Charisma.com
- 2017年6月25日(日)東京都 WWW X
- <出演者> MIYAVI / ちゃんみな
- 2017年6月27日(火)東京都 渋谷CLUB QUATTRO
- <出演者> MIYAVI / ACIDMAN
- 2017年6月29日(木)東京都 新木場STUDIO COAST
- <出演者> MIYAVI / 三浦大知
MIYAVI(ミヤヴィ)
1981年大阪府出身のソロアーティスト / ギタリスト。2002年10月にアルバム「雅楽 -gagaku」を発表し、ソロ活動を開始する。2010年10月リリースのアルバム「WHAT'S MY NAME?」では、ギターとドラムのみの編成でオリジナルのサウンドを確立。2012年11月にさまざまなジャンルの“サムライアーティスト”とのコラボレーションアルバム「SAMURAI SESSIONS vol.1」を発表し話題を呼んだ。ほかにも布袋寅泰、野宮真貴、Good Charlotteらの作品への参加など精力的な活動を続け、2013年6月には自身の名を冠した海外デビューアルバム「MIYAVI」をリリース。さらに2014年にはSMAPのシングル「Top Of The World」を作曲し話題を集めた。また同年の12月には俳優として出演したアンジェリーナ・ジョリー監督によるハリウッド映画「UNBROKEN」が全米で公開された。2016年8月にはニューアルバム「Fire Bird」を発表。2017年4月にデビュー15周年を飾るベストアルバム「ALL TIME BEST "DAY 2"」をリリースし、5月からは東京都内で15公演にわたる対バンライブ「NTT Docomo presents MIYAVI 15th Anniversary Live "NEO TOKYO 15"」を行う。
2017年3月31日更新