ナタリー PowerPush - 雅-MIYAVI-×BOBO×笑い飯

異種格闘技座談会

これからはエクスポートしていく

雅-MIYAVI- 音楽でいうと、海外からの影響も大きいので、とにかく洋楽が最高というか、同じようなことをやっていても「洋楽はカッコいい」っていう風潮はある。メディアを含めて、扱いがぜんぜん違う。

西田 そうなんですか?

雅-MIYAVI- うん、まあ変わっては来てる部分もあるけど。でも、これからは「俺らのやり方はこうだ」って提示しなくちゃいけないと思うんだよね。今まではインポート(輸入)するばっかりだったし、俺らもすごい影響を受けてきたけど、次はどんどんエクスポート(輸出)していかないと。そうやって返していくことが礼儀というか。(BOBOに向かって)……ねえ?

BOBO

BOBO うん。でも、お笑いのほうがシビアだと思うんだよね。音楽の場合はジャンルによって分割されていて、住み分けがあるんですよ。それぞれのジャンルにファンがいて、そこで成り立っているというか。でも漫才の場合は、もっと多くの人に共通する笑いをやらなくちゃいけないじゃないですか。例えば「お客さんが○人笑ったらクリア」みたいな番組があるでしょ? あれを観てると、芸人さんがすごい面白いことをやってるのに、お客さんがぜんぜん笑ってないことがあって。怒りを覚えるよね、ホント。「これは芸人さんの責任じゃない!」って。

雅-MIYAVI- なるほどね。てか、日本一忙しいドラマーがよくテレビ観てるな(笑)。

BOBO (笑)。でも、ホントに腹立つからね。「タライが頭の上に落ちてくる」みたいな単純な笑いなら誰にでもわかるかもしれないけど、笑い飯は違うじゃないですか。ちょっとヒネってるというか……。

雅-MIYAVI- 頭、使うよね。

BOBO そう。そこで「何が面白いの?」っていう反応が返ってくるとつらいよね。

哲夫 「面白さがわからない」って言われたら、ちょっとは上に見てくれてるのかなって思うんですよ。でも、単に「おもろない」って言われるとねえ。

雅-MIYAVI- そう言えば54-71も難しいよね。

左から哲夫、西田幸治、BOBO、雅-MIYAVI-

BOBO 54-71って僕が所属してるバンドなんですけど、ぜんぜん売れなくて。

西田 え、そうなんですか?

雅-MIYAVI- 本当に素晴らしいバンドなんですよ。すごくコアで、ストイックで。

BOBO だから、今の話もよくわかりますよ。「わからない」ならいいけど「つまんない」って言われるとね……。

西田 そうですよね。僕ら、年金をちゃんと払ってる人を対象にしたイベントに呼ばれることがあるんですけど、田舎の文化会館みたいなところにお年寄りがたくさんいらしゃるんですよね。そこで僕らが漫才やっても、ぜんぜんウケないんです。

哲夫 まあ「いろんな層の人たちを笑わせなあかん」っていう仕事なんですけどね。

西田 「そういう人たち向けのネタを作らねば」っていうことですよ。そこでエッジの効いたボケをやってもキョトンとされるだけなんで。

雅-MIYAVI- そこでどういう姿勢で臨むか、ですよね。これが俺のやり方なんだって提示することも大事だし──それがその人の生き方であり、芸術だと思うから──それを踏まえつつ、さらにたくさんの人たちに伝えたいかどうかだと思うんです。伝えたいんだったら、少し敷居を下げることも必要かもしれないし。俺らはお年寄りの前で演奏することはあんまりないけど(笑)、例えばブルーノートやビルボードでやるときは、アコギを使ったりとか場面で変える事はある。

BOBO 俺もジャケット着るし(笑)。

哲夫 ちゃんと衣装も変えて。

写真左奥から西田幸治、BOBO。手前左から哲夫、雅-MIYAVI-。

雅-MIYAVI- ちょっとフォーマルな感じなジャケットに、やっぱり短パン(笑)。でも、やってることはいつも通りのプレイなんですよ。そこで響いてくれた人は、次のライブにも来てくれるかもしれない。そういう可能性は絶対にあるだろうなって。

哲夫 そうですね。僕らもお年寄りの前でやるときは、ちょっと演歌っぽいしゃべり方になるんですよ。間の取り方も変えるし、「どっかで聞いたことあるな」っていう感じも出すようにして。

雅-MIYAVI- その中に自分だけのイディオムが入ってると最高ですよね。漫才も音楽も創作だし、人をハッピーにさせるということも共通してる。それをいかに伝えていくかっていうことだよね。俺らも模索してます、そこは。

今すごくキャーキャー言われたい

──そういう意味でも「Ahead Of The Light」は重要な曲ですよね。すごく高いポピュラリティを備えた楽曲じゃないですか?

雅-MIYAVI- そうですね。自分のスタイルを追求するだけじゃなくて、もっともっとたくさんの人たちに広げたいので。ステージも自分だけ気持ちよくなるんじゃなくて、お客さんと共有したいですからね、やっぱり。その中で自分のメッセージ、プレイスタイルを伝えることが大事であって……。英語で歌ってるのも、そういうことなんだよね。ぶっちゃけ、日本語のほうがラクなんです。レコーディングのときも発音に気を遣わなくちゃいけないし。だけど世界中には日本語だけでは伝わらない人たちもたくさんいるじゃないですか。まずは英語で「俺はこうだよ」って伝える。それが届けば、もっとこっちに近付いてくれるんじゃないかなって。逆に海外でライブをやっても、コアなファンの子は日本語で歌ってくれますからね。

──笑い飯も数多くのライブを経験してると思うんですが、さっきのお年寄りの場合とは逆というか、どんなネタでも簡単に笑ってくれるお客さんも大変じゃないですか? 芸人をタレントみたいに思ってる女の子とか……。

西田幸治

西田 確かに“お客さんが若い女の子ばっかり”みたいなライブもあったんですけど、そこではぜんぜん人気がなかったんですよ(笑)。こっちも「できれば面白さだけで売れたい」って思ってたし。だから髪の毛も切らなかったし、ヒゲも伸ばしてたんですよ。「見た目が汚くても、おもろかったら売れるはずや」って。

BOBO うん、それはすごくわかる。

哲夫 芸人がアイドル化してた時期があって、“つまらんな”と思ってたんですよね。お笑いのライブは男女半々でしかるべきなのに、その頃は女の子ばっかりやったし。俺らはそこでも女子が嫌がるようなネタも平気でやって……。

雅-MIYAVI- 例えば?

哲夫 その中でできたのが「チンポジ」なんですけどね(笑)。でも、続けていくうちにお客さんを男女半々に持っていけたんですよ。それは達成感がありましたね。ただねえ、若いときにキャーキャー言われなかった分、今すごくキャーキャー言われたくて(笑)。

西田 女子中高生限定のライブをやったこともありますからね。「媚びに媚びようぜ」って、歌ったり踊ったり……。

雅-MIYAVI- 言ってること全然違うやん(笑)。

西田 客席、ガラガラでしたけどね。

哲夫 普段は300枚くらいチケットが売れるのに、そのときは108枚だったんです。やっぱり、煩悩がありすぎたっていう。

雅-MIYAVI- ははははは!(笑) 最後にいいオチ、さすがです(笑)。

左から雅-MIYAVI-、西田幸治、BOBO、哲夫
雅-MIYAVI- ニューシングル「Ahead Of The Light」 / 2013年2月20日発売 / EMI Music Japan
「Ahead Of The Light」
初回限定盤 [CD+DVD] / 2100円 / TOCT-40465
通常盤 [CD+DVD] / 120円 / TOCT-40466
CD収録曲
  1. Ahead Of The Light
  2. Ahead Of The Light(Instrumental)
初回限定盤 DVD収録内容
  1. GANRYU
  2. STRONG
  3. DAY 1
  4. SILENT ANGER
  5. PLEASURE!(w/H ZETT M)
  6. HA NA BI(w/JIN OKI)
  7. 祈りを(w/SEIJI KAMEDA & MIU SAKAMOTO)
通常盤 DVD収録内容
  • Ahead Of The Light(Music Video)
雅-MIYAVI- (みやう゛ぃ)

1981年大阪府出身のソロアーティスト / ギタリスト。エレクトリックギターをピックを使わずにすべて指で弾くという、独自のスラップ奏法でギタリストとして世界中から注目を集めている。これまでに北米、南米、ヨーロッパ、アジア、オーストラリアなど約30カ国で200公演以上のライブを行い、3度のワールドツアーを成功させている。2010年10月リリースの最新アルバム「WHAT'S MY NAME?」では、ギターとドラムのみの編成でロック、ファンク、ヒップホップ、ダンスなどジャンルを超越したオリジナルなサウンドを確立。2012年11月にさまざまなジャンルの“サムライアーティスト”とのコラボレーションアルバム「SAMURAI SESSIONS vol.1」を発表した。アーティストやクリエイターからも高い評価を受けており、UNIQLO、東芝、日産自動車、ロッテ、大塚製薬のCMへの楽曲提供や、布袋寅泰、野宮真貴、GOOD CHARLOTTEらの作品への参加など、精力的な活動を続けている。

BOBO (ぼぼ)

1974年生まれのドラマー。1997年に54-71に加入し、同バンドで活躍。現在は雅-MIYAVI-、くるり、フジファブリックらのサポートを務める。コンパクトなドラムセットと、競泳用水着とTシャツという出で立ちでパフォーマンスを行っている。

笑い飯 (わらいめし)

西田幸治と哲夫の2人からなる漫才コンビ。2000年に結成され、ボケとツッコミが入れ替わる独自のスタイルの漫才で注目を集める。2010年に「M-1グランプリ」でグランプリを獲り、一般層にもその名を広めた。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。