自分の人生を変えていく強さ

──カップリングにはもう1つの新曲「すべて捨てても」が収録されています。先ほどお話があったように、この曲も「凪のお暇」にインスパイアされて生まれたものなんですね。

はい。周りに気を使っていたとしても、他人は言いたいことをズカズカ言ってくるものだよねっていう、「凪のお暇」という作品から受け取ったちょっとダークな要素を盛り込みつつ、結局は自分が変わらないと何事も変わらない、だから戦っていくんだよという部分に焦点を当てて書いていきました。きっと社会に出て働いている人だったらみんな感じることじゃないかな。わりと歌詞はスムーズに書けましたね。

──「誰かをバカにしながら生きることに何の価値があるの？」とか、けっこうシリアスで鋭いフレーズが出てきますよね。

そういったフレーズもわりと躊躇せずに書いちゃったんですけど、結果として今の時代感が如実に現れた感じになりました。今は批判も多い世の中じゃないですか。実際のところその批判には大した重さもないんですけど、なんとなくみんなそこに同調して広がっていく。だから何か行動を起こそうとしても、うまく動けなくなってしまうっていう。

──でもこの曲では、「すべて捨てても私はかまわない」というこれまた強力なフレーズで、自分らしく生きることをしっかり肯定してくれている。「リブート」とタイプは違っても、聴き手の背中をグッと押してくれる曲だと思います。

飛んでくる批判に対して反論する時間があるなら自分を変えて、自分の人生を変えていくことを考えたほうがいいんじゃないかなと思います。そういう強さみたいなものを感じ取ってもらえたらうれしいです。

──「すべて捨てても」はドラマチックに展開していくバンドサウンドが印象的です。

この曲はツアーを一緒に回っていた“miwaバンド”でレコーディングしたんですよ。やまっしー（B）とオバタ（G）さんは別録りだったんですけど、eji（key）さんとよっち（Dr）と私はせーので一緒に録音しました。ライブのような和気あいあいとした雰囲気の中、意見も言い合いながらのレコーディングは楽しかったですね（笑）。みんな息がピッタリなので、サクッと録り終えました。

──サウンドと相まって、miwaさんの歌声も非常にエモーショナルなものになっていますよね。

そうですね。歌詞的にはちょっと投げやりに受け取れる感じもあるとは思うんですけど、実際は自分自身とまっすぐ向き合っている曲なんです。だからボーカルに関しても、しっかり芯のある声を出すことを意識して臨みましたね。楽器のレコーディングと同じ日に歌も録ったので、その勢いがいい形で出たんじゃないかな。あと、ひさしぶりにデビュー当時によく使っていたスタジオでのレコーディングだったので、懐かしさもありつつ、歌いやすい部分もありましたね。

新しい雰囲気の楽曲も

──このシングルのリリースがmiwaさんの“第2章”の始まりだとすると、ここから先、どんな活動を見せてくれるのかが非常に楽しみになってきます。すでに考えていることはあるんですか？

昨年ベストアルバムを出したので、今度はオリジナルアルバムだよねという気持ちにはなっています。すでに曲はたくさん書いているので、どんなアルバム像にするかを考えながら、それに合わせた楽曲をセレクトしながら仕上げていく感じになるかな。自分としてもどんなアルバムになるのか楽しみですね。

──曲作りはコンスタントに続けていたんですか？

そうですね。今年に入ってからはロサンゼルスで曲作りをしたり、日本でも海外のクリエイターの方とコライトしていました。ご一緒している皆さんはものすごく才能があるから、面白いです。曲を作るのも早いし、クオリティもとても高い。なので新しい雰囲気の楽曲も楽しみにしていただけたらなと思います。

──これまではシンガーソングライターとして基本はお一人、もしくはNAOKI-Tさんと一緒に曲を作られてきたわけですけど、なぜほかのクリエイターとコライトをしようと思ったんですか？

NAOKI-Tさんとは安心して楽曲制作ができるし、いい作品が生まれる自信もあったので、これまではほかの人とやる意味を見出すことができなかったんです。でも、今このタイミングであえて違う人と組んでみたら、さらにバリエーション豊かな曲たちを作ることができるんじゃないかなという気持ちが芽生え始めてきて、新しい方とのコライトにも挑戦してみようと思ったんです。

──新章のmiwaさんは音楽に対してより柔軟に、より貪欲になってきているのかもしれないですね。

そうですね。私の根本にあるのは、皆さんに楽しんでもらえるいい曲を歌っていきたいという気持ちなんです。私はシンガーソングライターだから、そういう曲が自分から生まれることが自然ではあります。でも世界的に見てもコライトは主流になっているので、1人で楽曲を作ることに固執する必要もないのかなって。

──NHK総合アニメ「機動戦士ガンダム THE ORIGIN 前夜 赤い彗星」のエンディングテーマとしてSUGIZO（LUNA SEA、X JAPAN）さんが書き下ろした「A Red Ray」でのコラボ経験がそういった気持ちの後押しになったところもあったんでしょうね。

SUGIZOさんが作ってくださった楽曲は、当然なんですけど自分が作る曲とはまったくタイプが違っていて。それはもう本当に素晴らしいものなんですよ。今回は私が詞をつけさせていただくことができて。そのコラボレーションによって、ファンの方々も私自身も「すごく素敵な曲だな」と思えれば、それは純粋に幸せな形だと思うんですよね。

──デビュー当初はそこをきっちり守ることを大事にしていた感じでしたか？

守るというよりは、シンガーソングライターだったら自分自身で曲を作ることが当たり前だと思っていたんだと思います。もちろん今も自分で作るという軸は大事にしていますけど、選択肢が増えたという感覚かな。それによってワクワクした気持ちになっていますね。

──ここからどんな新しいmiwaさんの音楽が届けられるのか、期待していますね。

はい。楽しみにしていてください！