miwa|メジャーデビュー10年目、ここからが“第2章”

miwaが約1年半ぶりとなるニューシングル「リブート」をリリースした。

「リブート」は、現在放送中のTBS系金曜ドラマ「凪のお暇」の主題歌として書き下ろされたロックチューン。日常の中で感じるモヤモヤとしたさまざまな感情を捨て去り、自分らしく生きることを肯定してくれるような痛快なメッセージは、働く女性たちの背中を力強く押してくれることとなるはずだ。カップリングには同様のテーマをシリアスな視点で描いた「すべて捨てても」を収録。“miwaバンド”のメンバーと同時録音したというサウンドに乗せ、miwaのエモーショナルな歌声が堪能できる仕上がりとなっている。

3月3日でメジャーデビュー10年目に突入し、“第2章”の始まりを実感しているというmiwa。その感情にマッチする「リブート」(=再起動)と題された本作にはどんな思いが込められているのか? 彼女へのインタビューから、未来に向けた今の思いを紐解いていく。

取材・文 / もりひでゆき 撮影 / 塚原孝顕

9年間の歴史を感じたツアー

──昨年7月にリリースされた初のベストアルバム「miwa THE BEST」を携えて、9月から今年3月までmiwa concert tour 2018-2019 "miwa THE BEST"」が開催されました。そのツアーの終盤、3月3日にはデビュー丸9年を迎えて記念すべき10周年イヤーへと突入しましたね。

はい。「miwa THE BEST」のツアーでは、9年間一緒に年月を重ねてきたファンの方はもちろん、新しくファンになってくれた方もいて。若い方から私よりも年上の方まで幅広い層のお客さんが観に来てくださっていたんです。それがすごくうれしかったし、改めて9年間歩んできた歴史を強く感じました。9年間の歴史を皆さんと分かち合いながら10年目を迎えられたことは本当によかったと思います。

──ツアーで全国を回りながら、これまでを振り返る瞬間も多かったですか?

セットリスト的には今まで歌い継いできた曲たちばかりだったので、もちろん振り返ることはいろいろありました。ただ、昔の楽曲であってもどこか新鮮に聞こえたり、新しい気持ちで歌えたりした部分もあったんです。そういう意味では、振り返るだけではなく、ここから先をしっかり見据えたツアーにもなった気がしますね。ツアー前に髪の毛をバッサリ切ったことでフレッシュな気持ちになれていたところもありました。

──この6月で29歳になられたので、20代最後という節目の年でもありますよね。

そうですね。ただ、気持ち的にはもう30歳って感じなんですよ(笑)。あと1年間は20代ではあるけど、この先も歌っていくことを考えるともう30代の目線で物事を見ていくことが大事なのかなって。そうすることで今までとは違った曲が生まれて、表現の幅も広がっていくような気がするから、それが楽しみなんです。

心機一転のmiwaとリセットした凪

──miwaさんは今、10周年に向けて新たなフェーズをスタートさせた感じなのかもしれないですね。そう考えると、このタイミングに「リブート」(=再起動)というタイトルのニューシングルが届けられたのも必然のように思えてきます。

今回「凪のお暇」のドラマ主題歌というお話をいただけたことが、タイミング的にはピッタリだったなと感じていて。これまでのことを全部リセットして新たな生活を始める主人公の(大島)凪ほどではないにしても、今の私には心機一転のような気持ちがあるんです。ベストアルバムを出し、それを持ってツアーを回ったことでひと区切りがついて、ここから“第2章”が始まるというか。なので楽曲に関しては凪の気持ちに共感をしながら、楽しく書いていくことができましたね。

──具体的には、「凪のお暇」から受け取ったものをどう楽曲に落とし込んでいきましたか?

「凪のお暇」は、「自分も変わりたいな」とか「何か新しいことを始めたいな」とか、一歩踏み出す勇気をもらえる作品だと思うので、そのメッセージを後押しできるような、より勢いをつけられるような曲にしたいなとは思いました。「今のままでいいのかな」ってモヤモヤ悩んでいる人たちが、この曲を聴くことでスカッとして、今までの自分に踏ん切りをつけてくれたらいいなって。

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──サウンドも感情を鼓舞してくれる力強いロックですよね。

この楽曲はakkinさんにアレンジをお願いしたんですけど、すごく疾走感のあるサウンドに仕上げていただけて。私の弾いたアコギのカッティングが映えるアレンジになっていると思いますね。ひさしぶりのシングルでこういったロックな表情を出せたのは自分としてはうれしかったし、聴いてくださる方にも新鮮に響くんじゃないかな。ただ、「凪のお暇」という作品にはロハスとかスローライフみたいな印象もあったので、主題歌としてこれだけロックな曲を選んでもらえたのはちょっと意外でもあったんですけどね(笑)。

──ドラマサイドには「リブート」以外にも候補曲を提出されたんですか?

はい。たくさん書いて提出したうえで、この曲を選んでいただけたんです。今回は「リブート」を含め、歌詞やメロディを何度も書き直しながら、じっくり時間をかけて試行錯誤して作った感じでしたね。実はカップリングに入っている「すべて捨てても」も「凪のお暇」の原作を読んで書かせていただいたものなんですよ。

──あーなるほど。確かに「リブート」に近いテーマを描いた曲になっていますもんね。

そうなんです。1つの作品から違ったタイプの曲がいくつも生まれていく面白さはありますね。歌詞に関しても、根底のテーマが同じであったとしても違った言葉が引き出されることもありますし。そこがタイアップの楽しさかなとは思います。

──「リブート」の歌詞にはカタカナのワードが印象的に散りばめられていて。それによって楽曲にいいリズムが生まれていますね。

言葉遊びのようにカタカナを織り交ぜていくのがこの曲の面白い点だなとは自分でも感じていますね。グサッと刺さってくるメッセージが込められていたりもするんですけど、言葉ノリがいいから案外サラッと聴けてしまうし、思わず口ずさんでしまうっていう。いい意味での軽さが出せた気がしますね。そういう部分も含めて、今のmiwaが届けるにふさわしいロックな曲になったと思います。

本音が言えないときに

──「リブート」のボーカルレコーディングはいかがでしたか?

今回いろいろなマイクを試してみて、レコーディングでは初めて“ヨンナナ”(NEUMAN U-47)を使うことにしたんです。声の中域をがっつり生かして録ることで、自分としてはいつもとちょっと違った聞こえ方のボーカルになったような気がしていて。それが新鮮で面白かったですね。マイクを変えるとやっぱり全然違うなーって。

──レコーディングのたびにマイクはいろいろ試してみるんですか?

いえ、普段はほとんど試さないです。長く活動していると、自分に合ったマイクに固定されていくものなので。ただ今回は曲調によるものなのか、「ちょっと試してみようか」という流れになって。そういう部分でも、それこそ“リブート”じゃないですけど、新しい一歩を踏み出したい気持ちがあったのかもしれないですね。

──歌の表現、ニュアンスに関して意識したところはありましたか?

自分で思っている以上に、大げさに歌うようにしたかな。強く歌うところは、いつにも増して強く激しく歌うことを心がけました。そういうニュアンスを求められている曲だと思ったので。ただ、AメロやBメロに関しては、強さというよりもちょっと投げやりなニュアンスで歌った感じでしたね。そこがいい意味での軽さにもつながっていると思います。

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──平メロには言葉がギュっと詰め込まれているから、ちょっとラップのような雰囲気で畳みかけるボーカルになっていますよね。

そうですね。カタカナのワードをたくさん盛り込んでいるパートでもあるので、ひと言ひと言を重くしすぎないようにリズミカルに歌っていきました。サビとの歌い方のギャップみたいな部分でも今までにない新鮮さを感じてもらえるところがあるかもしれないですね。

──この曲は「凪のお暇」の世界観に寄り添いつつも、多くの人に響く応援ソングになったんじゃないでしょうか。

そうなったらうれしいですね。これまでの自分をリセットして人生をやり直すってすごく孤独なことのような気がしちゃうけど、案外そういうことを考えている人ってたくさんいるものなんだよっていう肯定感のある曲にしたかったんです。だから「共に笑うアミーゴ」というフレーズを使ったりもして。

──なるほど。実際にリセットすることができなかったとしても、同じ思いを抱いている同士がいるんだとわかれば気持ちが軽くなりますよね。

この曲は、例えば女友達と一緒に叫んだり、歌ったりしてほしいなって思います。大人になると、周りの空気を読んで本音を言えなくなっちゃうものじゃないですか(笑)。だからせめてこの曲を歌うことで本音を吐き出してスッキリしてほしいなって。

──miwaさん自身も本音が言えなくてモヤモヤすることもある?

ありますよー(笑)。比較的、自分のやりたいことをやらせてもらえる環境にはいますけど、なんでもかんでも思ったことを吐き出しちゃう子供のままではいられないですからね。だから私自身も気持ちを発散させたいときは、この曲を歌えばきっとスッキリするんだと思います(笑)。