ナタリー PowerPush - miwa
新境地「Delight」で切り開く“2010年代の音楽”
miwaが、自身3枚目となるフルアルバム「Delight」をリリースした。このアルバムはドラマ主題歌および挿入歌として話題を集めた「ヒカリヘ」「Delight」や、CMソング「ミラクル」など多くのヒット曲を詰め込んだカラフルな作品。そしてそのサウンドの深さと豊かさにおいて、彼女の新たな一面を提示する1枚に仕上がっている。
どこまでもポジティブに見える彼女の創作の源泉はどこにあるのか。そしてこの春大学を卒業し、初の日本武道館ライブを成功させた彼女が次に見据える目標はなんなのか。じっくりと話を聞いた。
取材・文 / 宇野維正 インタビュー撮影 / 佐藤類
「2010年代の音楽」を作りたい
──いきなりですけど、miwaさんの音楽を聴いてると自分は死にたくなるんですよ。
ええー!? どうしてですか!?
──ご本人も、歌の世界もあまりにもまぶしくて。そこには若さならではのまぶしさもあると思うんですけど、たぶん自分がmiwaさんと同じ年代だったとしても、同じことを感じたと思うんです。この人の表現はまぶしすぎて、ちょっと直視できないなって。
そんな! でも聴いてくださっているんですよね?
──大好きですよ。
それでも聴いてると死にたくなるんですか?
──はい。
生きてください!(笑)
──音楽の喜びって、自分とすごく近い場所で鳴っていることに安堵する気持ちと、自分からあまりにも遠いところで鳴っているものに感嘆する気持ち、両方あると思うんですけど、それでいうと完全に後者の感動ですね。
そうなんですか(笑)。
──今回のアルバムは「Delight」(=喜び)というタイトルで。とてもmiwaさんらしいタイトルだなと思うのと同時に、デビューアルバム(「guitarissimo」)、2ndアルバム(「guitarium」)にあった「guitar」というワードが使われていないことにまず気付くわけですが、その理由から教えてください。
アルバムの1曲目の「Delight」という曲が先にあって、そこからアルバムのタイトルをつけたんです。もちろん自分にとってギターは今でも大切なパートナーですけど、今回はギターつながりでアルバムのタイトルをつけていく作品ではないなとちょっと前から感じていて。自分にとって去年出したシングルの「ヒカリへ」が大きかったんですけど、あの曲でエレクトロのサウンドに挑戦して。自分の中ではそれまでもシングルごとにいろんな挑戦をしてきたつもりだったんですけど、やっぱり「ヒカリへ」で大きく変わった気がしたんです。
──あの曲がターニングポイントだったと。
そうですね。よくみんな「80年代の音楽」とか「90年代の音楽」とか言うじゃないですか。そういうとき、そこにはみんなの共通するイメージがあって。私は2010年にデビューしたんですけど「『2010年代の音楽』ってなんなんだろう?」って考えたとき、まだそのイメージってみんなの中に定まってないと思ったんです。だとしたら、今の自分には「2010年代の音楽」を作っていける楽しみがあるんだってことに気付いたというか、そこへの挑戦をしていきたいと思ったんですね。新しいことをどんどんやっていって、これが「2010年代の音楽」だと胸を張って言えるようなものを作りたいなって。
──それはすごく力強い宣言ですね。
だから、前のアルバムの続きというよりは、ここからもう一回新しいスタートを切ったようなイメージです。私生活でも、大学を卒業してこの春から完全に音楽一本になったので、そういう新たな気持ちが込められたアルバムになったかなって。そう思ったとき、「Delight」っていう言葉がこの作品にはふさわしいんじゃないかって思ったんです。聴いてくれた人たちに喜びが広がっていくような作品になったらいいなって。
卒業後も音楽をやっていくという決意表明
──大学を卒業して、音楽一本になったときの心境の変化は大きかったですか?
そうですね。デビューしたときから大学生だったから、現役大学生シンガーソングライターなんて言われたりもしてきて、それがなくなるのは自分の肩書きがひとつなくなる感じではあります。周りの友達も学生ばかりで、人生の選択肢がたくさんある人に囲まれていることが、自分の中で心の中のバランスをとってくれたり、心に余裕をもたらしてくれたりっていうのがあったんですけど。それがなくなって、友達も普通に就職していってってなったときに、不安もあったし覚悟も必要だったので。決意表明というか、もう一回ここで音楽をやっていくんだって覚悟をしなくちゃと思って書いたのが「Delight」という曲だったんです。
──アルバムタイトルから「guitar」というワードがなくなっただけじゃなく、今回ギターを弾いてない曲もけっこうありますよね。学生という身分から自由になっただけでなく、これまでのmiwaさんのシンボルの1つだったギターのサウンドから自由になったっていうのも、大きな変化だと思ったんですけど。
ギターを弾かなくなったわけじゃないので、ギターから自由になったというよりも、音楽の幅が広がったという感じですね。デビューしてからバンドでライブをやる機会が増えて、バンドサウンドをだんだん身に付けていくのがすごく面白かったんですけど、同時にストリングスだけのレコーディングや、ミックスやマスタリングの現場にもずっと立ち会ってきて、その中でサウンドへのこだわりとかアレンジに興味が出てきたんです。より自分の理想に近付いていくためにどういう曲作りをすればいいかを考えるようになって。ギターを弾き語りしながら曲を作るだけじゃなくて、トータルのアレンジを考えて曲作りをするようになったというのは、自分の成長として実感できる部分です。
- ニューアルバム「Delight」/ 2013年5月22日発売 / Sony Music Records
- 初回限定盤 [CD+DVD] / 3800円 / SRCL-8297~8
- 通常盤 [CD] / 3059円 / SRCL-8299
CD収録曲
- Delight
- ヒカリへ
- 321
- サヨナラ
- Sparrow
- ホイッスル~君と過ごした日々~
- ミラクル
- My Best Friend
- LOUD!~憂鬱をぶっとばせ~
- Napa
- ぬくもり
初回限定盤DVD収録内容
- 2012年12月22日に行われたZepp Tokyoライブのダイジェスト
- 2013年3月30日に行われた下北沢LOFTライブのダイジェスト
- 「スマイル」ビデオクリップ
miwa(みわ)
1990年生まれ、神奈川県出身の女性シンガーソングライター。高校時代から音楽活動を開始し、下北沢、渋谷を中心に弾き語りライブを行う。2010年3月にシングル「don't cry anymore」でメジャーデビュー。伸びやかで透明感のある歌声と等身大の歌詞で注目を集める。その後も大学生活と並行しながら音楽活動を継続し、2011年4月には1stフルアルバム「guitarissimo」、2012年3月には2ndフルアルバム「guitarium」を発表した。2012年8月にリリースしたシングル「ヒカリヘ」はダンスエレクトロサウンドを導入した曲調とドラマ「リッチマン、プアウーマン」主題歌に採用されたことで話題に。2013年3月には大学を卒業すると同時に、初の日本武道館ライブを成功に収めた。同年5月、3rdアルバム「Delight」をリリース。